第16話 『迫りゆく』刃
日付変わっても仕事終わらず更新できなかった作者おる?(震)
『神化』の大罪。
その『神化』の奥義でもあるのが、9体いる神へと自身を進化させる力。
神ならぬ者が神に為るという大罪。
そしてアルバスの放った『巻き起これ、水龍よ』を見て、シャンカラは躱してばかりでは運動にならないので、力を解放して動くことにしてみたのだ。
シャンカラの顔からにじみ出ている余裕感を普段の俺に寄こしてほしいとソウイチは感心しながら観戦している。
――ゴゴゴゴウゥゥゥゥッ!!
シャンカラに迫っていた6体の『巻き起これ、水龍よ』はシャンカラから巻き起こる暴風によって掻き消される。
シャンカラを中心に勢いを増していく巨大な竜巻は『大いなる伝説は深海に』の水も巻き込んで、巨大な渦になっている。
その中心に影が見えるが、先ほどのシャンカラとはシルエットがまったく違う形へと変化していた。
そして勢いよく渦は解除されて、その反動で周囲に大粒の雨を降らす。
――ザァァァァッ!
「……こんな化け物がいるだなんてな」
「さぁ! 一撃耐えたら貴様の勝ちでいいだろう!」
神へと為ることで内面も変わっていくのがシャンカラの力の特徴である。
渦の中から現れたのは、身長が倍ほどに伸び、4本の腕に巨大な弓と三又に分かれている槍のような矢を持っている。
いつものシャンカラのキャラでなく、今のシャンカラは『災害ト暴嵐ノ神』という神に変化しているのだ。
『災害ト暴嵐ノ神』はアルバスへと弓を構える。
周囲には凄まじい暴風が巻き起こっており、『災害ト暴嵐ノ神』が浮いている下の方では巨大な渦潮が何個も発生しており、アルバスも立っているのが難しいほどに荒れ狂っている。
『災害ト暴嵐ノ神』の持つ槍矢には、考えられないほどの風魔力のようなものが纏われており、ヒュンヒュンと凄まじい風切り音を発している。
アルバスは全力で守るために周囲の水を頭上に集める。
魔力を集中させて、おそらく放たれるであろう矢にぶつけるための技を構える。
アルバス頭上の水も、『災害ト暴嵐ノ神』が持つ槍矢と同じように三又の槍のような形状になる。
「『三叉矛よ、天海を穿てッ!』」
「消し飛べ! 『叫べ、暴虐の風神槍』」
全てを圧し潰す水の三叉矛とあらゆる者を斬り刻みながら穿つ三叉槍は放たれる。
その瞬間、『大いなる伝説は深海に』により出た水は全て、宙へと巻き上がった。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
今、目の前でシャンカラが蓮の花上で正座して反省している。
配合後初実戦だったということで、テンション上がって攻撃してしまった結果、とんでもないことになってしまったため反省中だ。
アルバスの『三叉矛よ、天海を穿てッ!』と『災害ト暴嵐ノ神』の『叫べ、暴虐の風神槍』のぶつかり合いは、とんでもない暴風と水嵐を巻き起こして、俺たちはびしょびしょになる前にメルの『捻じれ逆巻く母なる海』で守ってもらったんだが、闘技場はボロボロになってしまった。
そして巨大なクレーターの中央には何だか分からない右手だけが落ちていたので、急いで回収してイデア・ウロボロス・シンラ・デザイアの力でなんとか元通りに戻ったと言うことだ。
まぁ簡単に言うと『叫べ、暴虐の風神槍』の威力が絶大すぎて、アルバスごと木端微塵にしてしまったということだ。
力の制御は難しいし、テンション上がってしまったのも仕方がないので怒ったわけでもないが、やらかしたと思ったのか、シャンカラは特にしゃべらず正座して瞑想しているので良しとする。
復活させる段階で俺たちに便利なように少々改造させてもらうことにした。バレることもないだろうから役立ってもらおう。
「それにしても、あれでも本気じゃないんだから凄いよな」
互いに持てる全ての力を出し切ったわけじゃないのが驚きだ。
アルバスはけっこう全力だっただろうが、シャンカラは準備運動レベルだったのがさすがにハクに対抗できそうな強さを持っているだけはある。
とりあえずカノンとアルバスにはゆっくりしてもらって、俺は俺のやることをしていかないとな。
2人に本格的に働いてもらうのは、カノンが治ってからだ。
「アイシャからメッセージが来ているな」
コアにアイシャからメッセージが来ている。
内容を見てみると、短い文だけど、とても分かりやすい内容だった。
『勇者がダンジョン到着まで残り3日、予定よりハイペースです』
アイシャの心配する気持ちが全面に出ているのと同時に、何かしらの移動方法を使ったんだろう、勇者が一気にラムザさんのところに近づいた。
さすがに道中であんなことやられては困ると思ったのか、一気に時空間魔法で転移でもしたんだろうか?
もしそうだった場合は俺が襲撃したことが裏目に出てしまったってことになってしまう。ラムザさんは勇者の動向から目を離してはいないだろうけど、大丈夫だろうか?
暁蓮も相当な使い手だったけど、個人的には坂神雫のほうが嫌な感じがするし、漂うボス臭が凄いんだよな。俺たちが魔王なんだけども…。
「一応もう一度、勇者が街に入ると、コア転移出来なくなる結界を張られるってアイシャに伝えておくか」
勇者がダンジョンに入ると、転移では行くことが出来なくなるので、わざわざ街まで行かなければいけないからな。
アイシャは見守ると言っていたが、もしラムザさんがやられてしまった場合は動く可能性が出てくる。
『水』の魔王が動くだろうと予測しているがどうだろうか? ラムザさんともミルドレッドとも仲が良かった魔王だから、さすがに動いてくるんじゃないかと思ってるんだけど、わざわざ勇者相手に無茶はしないかもしれないな。
「そろそろ大丈夫だぞ、シャンカラ」
「以後気をつけるよ」
「まぁ本当の敵だったら全力でやってくれていいんだけどな」
「後先考えるのは大事だね」
俺の許可が出たからか、シャンカラはゆったりと自分のエリアへと戻っていった。
「紅蓮の蝶々」と『夢幻の星』が帝国がアルカナ騎士団の幹部2名を失ったことがあったので、勇者が帰還次第、王国と公国から手痛い攻撃を受けるだろうという噂を聞いたと報告が来ている。
王国騎士団と公国騎士団ってのも調べてもいいのかもしれない。
さすがにミネルヴァやアルバスなら知っているだろうから、また時間を作って勉強会を開いてもらわないといけないな。
それと『七人の探究者』以外のEX認定された冒険者も気になる話だ。
もしダンジョン攻略に来られた場合面倒だからな。
でもSSランク冒険者のほうが有名だし、活躍してるって話だから、みんな活躍後で隠居してる可能性もあるのか、それだったら嬉しい話だな。
「ハク、ご飯食べるか?」
「食べるっ♪」
「起きてたのかよ」
「考え事してるときは声かけないよ」
「さすが出来る子」
「僕出来る子だからねっ」
とりあえずドヤ顔のハクを連れて晩御飯を食べることにする。
アルバスは眠っているし、カノンはレーラズが診ていてくれるので安心していいだろう。
そういえば次にこれを絶対にやりたいっていうことを定めてないな。
幅広く手を出してしまっているから、逆に混乱しちゃってるかもしれない。
勇者の魔王討伐旅の結果を見守ってから、次に何をしようか考えてみる。
「帝都に行くか、四大学園に手を出してみるか、帝国全土の魔王について調べ出すか悩ましいところだな」
1番面白そうなのはフォルカを使用して、帝都か四大学園に潜入することだと思うんだけど、帝国全土の魔王について調べて警戒するのが1番安全な気がするんだよな。
『枢要悪の祭典』も万全なほどいるし、フォルカにそろそろ夢中になってもいいんだろうか? 四大学園の若い人材が欲しくなってしょうがないんだ! ルジストルとリーナが過労で倒れてしまうからな!
俺は無理やり、自分のやりたいことを正当化して、ハクを連れて食堂へと向かった。
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