『G-7』と『G-9』
私たちには名前がない。
だから牢番号と個別番号を
合わせて呼ばれる
私は『G-7』
あくる日、
少年が声を掛けてきた。
“人”の気配が無い時には、
饒舌になる者達もいる。
明日、消えるかもしれない
恐怖や焦燥を
言葉で吐き出そうとする。
“外に出れたなら―――。”
“自由ができたなら―――。”
“ずっと生きれたなら―――。”
“人”にとって普通で、
“彼”にとって夢を語る。
おとぎ話を紡ぐ口を塞ぎ、
私は耳元で呟く
「誰に聞かれているか分からない。
告げ口でもされたら只じゃ済まない。
不用意な事は言わないほうがいい。」
彼は塞いだ手を優しく降ろしながら嘯く。
「何をされても構わないよ。
みんな死ぬよ。どうせ明日にも。」
希望を奏でた口から絶望を吐き出す。
“人”が怖くない筈はない。
魔獣に捧げる供物だとしても、
壊れるまで玩具にされるのは、
やはり耐え難いものだから。
また話を始めた彼は唐突に
「僕らだけの特別な
秘密の名前を考えよう。」
と、言い出した。
名前など所詮は呼称だと思ったが、
何故か惹かれる私もいた。
ただ、
「あからさまに違う名前は、
“人”に聞かれた時
誤魔化せないから嫌。
今の番号から取って付けよう。」
と提案し、むずがる彼を説得する。
私は『G-7』だから“ジーナ”
じゃあ僕は『G-9』で“ジーク”だね。
これならお互いに
ジー『の』ナ『ナ』
ジー『の』クと呼んだのだと
言い張る事ができる。
特別な名前が出来た。
たったそれだけの事だったが、
感情の無い心が少し、
温もった感じがした。
「じゃあ、これから2人の時は呼び合おう。」
約束した彼にも表情は無かったが、
声が少し弾んでいる様に聞こえた。
【お詫び】
この度、この作品を読んで応援して下さった方々ありがとうございます。
大変、私事ではございますが、私生活が忙しくなり趣味として取り組んでいた本作を執筆する時間が無くなってしまいました。
そのため、執筆できる余裕ができた時に不定期で更新させて頂きたいと思います。
誠に勝手ながら、何卒ご容赦のほど宜しくお願い致します。