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感情の記憶
感情はもうない。
それは必要ない。
それは邪魔なだけ。
それは辛くなるだけ。
“今”が。この瞬間が。
ここにいる女性は、
“人”を慰めるため使われる。
道具として扱われ
蹂躙されながら役をなす。
感情が失せる前、
ある少女がいた。
笑顔が似合う、
優しい少女だった。
えくぼが可愛い少女と、
私は仲良しだった
あくる日の朝、
牢に戻った彼女は
嬉しそうに語った。
殴られ蹴られる事無く
優しくされたそうだ。
“愛情”が貰えたのだと
喜ぶ彼女につられ、
私も嬉しくなった。
その日の夜、
彼女はいなくなった。
代わりに呼ばれた私は、
彼女が弄ばれて屠られた事を知った。
私の顔を踏みにじりながら、
“人”と呼ばれるものは
笑みを歪めていた。
次の日、全部捨てた。
残っていたなけなしの感情を全て。