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人罰

 光線が飛来し、頬をかすめる―――。

 私は身じろぎもしない。


 あたりは怒号や悲鳴が渦巻いている。


 ある者は凶行に見舞われ、

 ある者は凶弾に倒れる。


 「ターーーーーンッ。」


 乾いた音が木霊こだまする。

 その度に一人死ぬ。


 理解できぬものは怒り狂い、

 怒声を上げている。

 理解できたものは恐怖に慄き、

 失禁している。


 前線で抵抗している者が

 虚しく吹き飛んでいく。

 『魔獣』は”人でなし”を襲う。

 忘れられていた教訓だ。


  殿で逃走する者が

 愚かしく倒れ込んでいく。

 『私』が”人でなし”を襲う。

 この先、忘れられなくなる教訓だ。


 状況や行動は”人でなし”によって違う。

 ただ聞こえてくる嘆きは同じだ。

「なぜ”この私”がこんな目に。」

 漏れなく全員が口にする。


 救いがたい愚者の言葉だ。

 自分がもたらしてきた

 災いの結果であるのに。


 みな混乱している。


 冷静な者から死んでいくから。

 統率する者から死んでいくから。

 対処しうる力ある者から死んでいくから。


 そう言うふうに仕組んたのだ。

 間違っても誰一人”救われない”よう。


 数人が必死で草木を掻き分けている。

 その範囲はおよそ100m。

 そんなに貴方のかたわらにはいない。

 私がいるのはおよそ500m。

 スコープ無しで狙撃可能な射程範囲。

 

 ”死のレディ・デス”と呼ばれた私の射程範囲。


 正気を失い光線を乱発する。

 光れば光るほど、場所が特定できる。

 対抗狙撃カウンタースナイピングでまた一人倒れる。


 光を信仰し、

 闇に葬ってきた者の末路だ。

 憐れな末路だ。


 だが、許されるものじゃない。

 虐げられた”人”達が受けてきたのは、

 こんな恐怖ものじゃない。

 こんな絶望ものじゃない。


 怒りとは裏腹に、

 淡々と撃鉄を落とす。

 ボルトアクション式のレバーを引いては、

 空薬莢を飛ばす。


 頭は酷く冷静だ。

 ただ、私の心を代弁するかのように

 銃身は鈍く重く熱を発している。


 ”天”からの罰などではない、

 天は”人でなし”を罰さない。

 

 これは私たちからの罰、

 ”人”からの罰。


 今まさにそれを知らしめんと、

 モシン・ナガンは硝煙を噴いていた。


 静かに。”彼ら”のために。

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