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パシフィックノナ対インド系多国籍企業   作者: 江戸銀(エディ)
狂乱救済海底『ナラタム』
6/19

インド人対ウニの誤


『よっわ……』


チーン。

そんなオノマトペが合いそうなほどズタズタにやられたロブスターが海中に針のむしろ状態で横たわっている。

本気を出すために第二形態になったのが誤算だった。大きくなった甲殻だが、その一枚一枚の隙間も広がり、さらにその隙間から体内に貯めた熱を放出するために熱水を放出しようとするとその隙間には人間の手が入ってしまうほどガバガバになってしまう。

後はガンガゼの超極細棘がその隙間に容易に潜り込み、あっけなくロブスターは神経毒に当てられ失神してしまったのだ。


『これが俺の力だぜ』


『尺のつご『はいはーい、エビ野郎も倒せたことだし行きましょう』


ロブスターの死体を避けつつ、ノナ達はジェットパックのスイッチを入れて再度小エビの蔓延る青い海を漕ぎ出そうとした。

ゴボッとスクリューを内蔵した排水口が音を立てて、入っていた微小な空気を排出する。


『『うん?』』


『『あ?』』


ロブスターとの戦いはほとんどガンガゼのワンサイドゲーム、たとえロブスターが鉄を砕くほどのパンチが放てたとしても4匹のノナのジェットパックを全て正確に壊すことなど不可能。

そんなことは承知しているガンガゼはおもむろにジェットパックを自分の背中から引っぺがして排水口を覆っていた鉄板を剥いでみると、そこには


『こ、こいつは!?』


なんと無数の小エビ達が隙間なく詰まっていたのだ。

トラ柄のようにも思える金と銀の縞模様、伸びきっていない眼柄。攻撃こそ痛くはなかったが、その硬さはそこらの金属並み。

ガンガゼのジェットパックに詰まった小エビを見た瞬間、ムラサキウニはその正体に気づいた。


コウテツキジンエビ。

2050年頃に発達した遺伝子改造技術と当時8種類しか確認されなかったキジンエビ種ということもあり、一部の熱狂的な甲殻類マニアによって作られた第9番目のキジンエビ。


系譜としては小型化の遺伝子をねじ込まれたロブスターで、主に観賞用として作られたものだったが、何を間違えたかその外骨格は未知の金属のようなもので覆われたのだった。それを何処の馬の骨とも知らない企業がモデルジーンを買い取り、それを基にMTA化させたのがこれらの小エビの大群。

東京大学の甲殻類MTAの変遷に関する資料になっていた一例だ。


『ジェットパックは捨てて、泳いでいくしか!』


『くそ!エビ風情が!』


『俺の後ろに隠れてくださいっす!』


パイプウニの両腕に生えたサンゴのような太い棘がより一層太くなり、大盾となったが一面だけしか防げず、残った五方からコウテツキジンエビのMTAが雪崩れるように泳いでいた。

堪らずムラサキウニとガンガゼは頭に生えた針で串刺しにしようとするが全く歯が立たず、ガンガゼの神経毒も効き目は薄いようだった。


『これじゃあ、逃げきる前に全身エビまみれになって死んじゃうわ!』


『あのエビ公全然連絡役じゃないじゃねーか!まてよ、あのエビ公はどこに消えたっ!?』


ガンガゼが囲まれた棘の中、顔面にひっつくコウテツキジンエビを何回も払いのけつつ、先程倒したはずのロブスターの死体を探す。

金銀に光る小エビばかりで、特徴的に大きくヒゲの発達したロブスターの姿は影も形も泡もなかった。


『神経毒から回復して、単身で他の部隊に伝えに行ったりしてたら私たち絶体絶命大ピンチじゃないのヨォォ!』


『おちつけ!とりあえずナラタム島にーー


慌てふためくムラサキウニをガンガゼがなだめようとしたその時だった。


ドボンッ!


水に金槌を放り込むような音が海上から鳴った。その刹那、ノナ達の真上から急速に接近してくる謎の白い弾力のある何かが飛来した。

それは数時間前に見かけたチンアナゴのように表面がゴムパイプのようにツルツルではなく、凄く大きな吸盤が夥しく付いており、パイプウニの太い棘にその何かが巻きつくと一気に四匹を水底から引きづり出そうとした。


『ぎゃぁぁぁあ!なんなんだべさこれ!』


『触手……まさか、タコ!?』


『いや、イカよ!』


パイプウニの硬く太い棘をポキポキと何本も折るような強い力で締め付け、強引に引き上げるその力は圧倒的で他のノナ達も顔を青ざめた。


バシャーーン!


触手につられるようにして4匹は引っ張り上げられ、水中から空中に無力に放り投げられた。

海の青から一転して青空の青となり、目をチカチカさせる三匹衆。

その青の中に巨大にうねる白が入道雲のように水平線から突き抜けていた。それはノナ達をいまにも握りつぶさんとしている触手につながっており、大船のマストのような三角形状の頭に長い胴、大きな2つの黒目の間に漏斗状の口がある醜悪で気持ちの悪い生き物。

それ総じて、クラーケンというのにふさわしかった。


「海底を這う小さき者共よ、我らが三王の会談を邪魔するとはいかなる要件であるか?」


空を震わせるような声が響き、ノナ達の濡れた体から水滴を幾粒か吹き飛ばした。その発生源は今ノナ達をその触手で掴んでいるクラーケンだったが、ガンガゼが唯一自由に動かせる首を使って見回すと、ナラタム島に山のように大きなヤドカリと生理的嫌悪感に苛まれる頭部に羽根の生えたタコの怪物が囲んでいた。


「これが、あのロブスターが言っていた……ヤドカリとイカタコの会談……」


「こりゃ…まじかぜ」


全ての元凶であるインド人、マハトマ・ラムシュアを追う中腹にこんなものがあるだなんて誰が思っただろうか。

見据える先のナラタム島はすでに目の前。











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