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パシフィックノナ対インド系多国籍企業   作者: 江戸銀(エディ)
狂乱救済海底『ナラタム』
2/19

ウニ対インドの壱


現在放射能汚染の割合が最も少ないのはユーラシア大陸諸国とその周辺の島国だけとなった。

奇跡的なことに日本は核戦争に巻き込まれず、放射能汚染が薄かったのだが、島国ということで海洋生物がベースのMTAによって北海道、四国、九州、そして中国と近畿地方を乗っ取られてしまった。

そんな絶望的な状態の中最後の希望で東京大学に集められた無数の研究者の手によって、人類の味方となり得るかもしれないMTAが制作された。


それがノナだった。


ノナというのは方言でウニのこと。研究者には東北出身の人間が偏ったためにそう呼ばれることが多かったためにそのまま名付けられた。


ウニのMTA達はまだ解明しきれてはいないがなぜか人間に対して忠誠心が高い傾向のMTAになることが多かったのだ。


しかも、その殻の性質から攻防どちらにも優れ、戦闘にとても向いていた。


かくして日本の人類はノナを従えて、生態系のトップに返り咲こうと今回の世界滅亡危機を起こした黒幕を退治しようと躍起になるのだった。






「なるほどねぇ、人間の歴史は案外深いんだねぇ」


細い針のような髪の毛をしたノナが全く関心がなさそうにそう呟く。このノナの名はガンガゼ。


「最近やってた昼ドラよりドロドロでこんがらがった設定っすね」


紅色の生姜のように太い髪の毛をしたノナが口元に手を当てて、笑いながらそういう。このノナの名はパイプウニ。


「人間同士でなんと醜い……でも、そんなところがアタシは好きなのよね」


ちょっと紫がかった髪の毛をしたノナが若干オネエ口調で身を震わせる。このノナの名はムラサキウニ。


「俺にはむづかしくてよぐわがんね」


茶色がかった髪の毛をしたノナが田舎者臭を漂わせながら死んだ魚のような目で遠くを見る。このノナの名はエゾバフンウニ。


「あ、ごめんごめん、リズムゲームやってたからなんの話ししてたか聞いてなかったや。あとで教えてねパイプ」


真っ白な髪が束ねられ、ラッパ状に広がっているノナがイヤホンをとって能天気にそう言う。このノナの名はラッパウニ。


彼らこそこの日本ーー主に関東圏で活躍するウニ型MTA、通称ノナと呼ばれる人間に対して唯一と言っていいほど友好的なMTAだったのだ。

ほかのMTAと違い、針以外に特徴のないウニはその特徴以外を人型化に全振りされたため髪の毛以外はほとんど変わらず人間の姿をしている。

しかし、その存在を現在の半狂乱状態の日本国にアナウンスすれば国家転覆の危機にも陥りかねないと言うことで、海に直結する巨大水道管の近くにある廃線となった地下鉄を改造して造られた極秘施設に収容されている。


「そうこう話しているうちに、人間のみんながいい感じに黒幕、MTAの親玉の正体を暴いてくれたようだぜー」


ガンガゼは強制的に携帯させられているタブレットに送られてきたメールを開いてニヤッと笑った。

かねてよりこのMTAが発生した事件には黒幕がいるとされてきたため、その正体を見破るためにノナは海外に渡航(海底を歩いて)することが多かった。そのMTAの発生しやすい要所要所の近くの廃病院やら下水道やらにはよくMTAを軍事利用しようとしている黒幕に繋がりそうな手がかりが落ちており、それを全て合わせて解析した結果が今日全てを曝け出したのだった。


「誰々?!」


「黒幕って言っても、アタシ達のパパのパパにあたる人よね?それってお爺様!?」


「正確には僕らのお爺様は今の人間の平均寿命から考えてもすでに他界してるはずだから、お爺様の弟か、パパの腹違いの弟かとかじゃない」


まるで死んだ父が帰ってきたようなホームパーティー感覚でタブレットの周りにガヤガヤと集まる、パイプウニとムラサキウニ。エゾバフンウニとラッパウニは各々自分の世界に浸っていて、どうでも良さげだ。


「マハトマ・ラムシュア。インドにあるナラタム島って場所に基地を作ってそこで『僕らみたいな』超エリートを造ってるらしいぜ」


「ナラタム島ってどこにあるのよ?」


ナラタム島周辺では確かに近年、ヒトデベースのMTAや甲殻類ベースのMTAがよく見られるとされ、日本が送った無人潜水艦『アンコウ2100』はエビベースのMTAによって全体をボコボコにされた上で、送り返されてきた。おそらく知性の高いMTAがコミュニティを作っているとされる魔の島である。


「南インド」


「大雑把すぎてさすがわからないっぽくないっすか?」


「ほら、これ地図」


一旦は崩壊したグークルグループの技術者が夜なべして作ったマップ端末。それは100年前のものより劣るものだったが、形さえわかればそれでいいノナにとっては100年の差など毛ガニの毛ほども興味がないのだった。


「さすが人間さんっすね、仕事が早いっす」


「それじゃあ、早速行ってみるべ!」


「武器は何がいいか知らん?水中銃?」


適当な武装をポイポイと施設に備えられている武器庫から持ち出してくるムラサキウニ。生物兵器としての改良研究も進められていたため、一部に体と合体させるサイボーグ兵器やイクラ型閃光爆弾なんてものもある。

しかし、ほかのノナ達はまったく仰々しい武器連中に興味を示さずただ一つ銀に光る先端が扁平状の武器を掲げた。


「いやいやもちろん、ウニ割スプーンでしょうよ」


ウニ割スプーン。正式名称を【ノナ専用対MTA武器ざんまい】である。ざんまいとはスポンサー企業の某寿司チェーン店の名前の一部をつけたものである。

秘めたる力があるわけではないが、コスパのいい合金で作っているため、結果的に名前通り量産できる武器ざんまいであり、何よりノナ達からかなりの高評価をもらっている良い武器。

ノナ達のご先祖様はそれのご先祖様によって何度もかち割られてきたのだが、それを知る者はまだノナ達の中には誰もいなかった。


「よーし!みんな準備オーケーね!それじゃあ謎のインド人を倒しにレッツラゴー!」


ムラサキウニがそうコールすると施設の白い床の真ん中が左右にスライドしていき、水で満たされた大穴を見せた。その匂いはどこかノナ達の記憶ーーあるいは二重螺旋の記録を刺激して、興奮させた。


「アタシ1番!」


ムラサキウニが先陣を切って飛び込むとほかのノナ達もこぞって我先にと穴の海に飛び込んでいく。


「抜け駆けしおって!おまん逃がさんぜよ!」


「インドって何か有名な食べ物ってあったっすかね」


「あれ……えーっと、インド、ネシア…だっけ?」


各々期待、不安、興奮、希望、迷走纏まらないバラバラの感情を胸に今、MTA研究が行われているだろう諸悪の根源インドはナラタム島に向かうのだった。


















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