かつて魔王だったモノは醜く美しい戦士を見る
まさかのブロゥ視点
さて、余を覗き見ようとした愚物をどうしてくれ様か、その瞳を抉り取ろうか? それとも獄炎で焼き尽くしてやろうか? 王水の牢に浸けてやろうか······
ミーはハッとして辺りを見たポ。
かつてのミーの人格が蘇りかけていたポゥ。
一体何故ポゥ、ホルダーティーチャーの『視て知る』でもミーの過去を知る事が出来なかったのに何故ポゥ、あの黒い眼帯は一体なんなんだポ。
山羊の夫婦は自分達ごと岩牢の魔術で閉じ込めてベルギアの騎士達を守っているポか。
兄弟達は記憶の幻に囚われた様ポね。
レディ ヨウとホルダー ティーチャーも大分、苦戦中ポね。
レディ 朝丘はジャン ティーチャーと一緒にいて魔力障壁で抵抗してるポが、魔力障壁が簡単に壊れてポね。
ヒーロー 竹井も魔力の放出で抵抗してるポが厳しいポね。
卯実ガールは倒れているポ! 不味いポゥ! このままでは壊れてしまうポよ!
ダディは? ダディは無事ポか!?
ダディは立っているポゥ。脚を肩幅に開き、軽く曲げて腰を落として腹に力が入った戦いに備えた良い態勢だポ。
苦痛に耐え、怒りに燃え、敵を見据えたその姿は美しいポゥ。
戦士の顔ポ。
戦う力を持たないダディ、それでも抗うダディの姿は間違いなく戦士の姿ポゥ。
かつてミーが蹂躙していた人の戦士達と同じ姿ポ。
戦士とは、友の為、家族の為、恋人の為、国の為、己が己である為に死力を尽くし、不条理たるミーを倒す為に戦い抜く勇敢なる者達だポゥ。
「ま、まさ、し、さん、今、たす、けるか······」
卯実ガール!!
今直ぐにあの眼帯野郎をブッ殺してやるポゥ!
ミーは眼帯野郎に襲いかかろうとしているのに、全く動け無ずにいるポゥ。
何故ポゥ!? ミーの筋肉が全く動かないポゥ!
「ああ、もうイイ、もう結構だ、もう手前ぇが死にさらせ!」
ダディが吠えたポが、猫も「にゃー」と鳴いたポゥ。
猫ポ? 猫、猫、猫ポ? あ、顕現した猫ポ!
猫が眼帯野郎の上に座ったポ!
急にミーの身体が軽く成ったポで、ミーはバランスを崩し倒れかけてしまったポ、恥ずかしいポね。
「退け! クソ猫が! オレ様に乗るんじゃねえ!」
眼帯野郎の念話ポね。ブラボー! 良くやったポゥ猫!
「マスター、ランク不明ユニーク『バックベアード・マルチアイ・アイガーター』です。
ランク不明ユニークの顕現により、顕現能力が一時的ですが、凍結されました」
プリンセス トイがダディに眼帯野郎の説明をし始めたポが、顕現の凍結って何ポか?
ミーが頭を捻って考えているところに再び念話が流れたポ。
「オイ! 単眼のザコ! このクソ猫をなんとかしやがれ!」
視る事の出来無い『バックベアード』種なぞ何の力があるポゥ?
「おうさま、ニャーは役に立ったかにゃ?」
猫がしゃべったポゥ! あの猫は『にやんとしー』ポね。
あの『にやんとしー』は万能型ぽっいポゥ。
自身に使用した防御系の魔術を隠しきっているポゥ。
「マスター、ランク無限大ユニーク『にゃんとしー』です。
可愛いです、しゃべります、可愛いです、ランク無限大です」
確かに『にやんとしー』は可愛いポね、ミーも魔王時代に悪魔タイプを生み出して飼っていたポゥ。
「腐れ複眼の小僧、消滅する覚悟は出来てるだろうな。
不意打ちで主導権を取った程度で勝った気になるな、下劣な爬虫類型ごときが」
ホルダー ティーチャーがお怒りポゥ、これは荒れるポね。
「ホルダーがキレてやがる。同族嫌悪ってヤツか?」
ダディは念話が下手ポね、口に出してるポゥ。
「おうさまは、どうするにゃ?」
「マスター ヤマモト、同族嫌悪では無い。
ただ不愉快なだけだ、格の違いすら『視て知る』事が出来ないザコが同族である事にだ」
「オイ! 待てよ、な。
ちょっとした冗談だろ? なあ、勘弁してくれよ」
「黙るにゃ! 目玉をくり貫くにゃよ!」
「な、何で伝わってんだよ! オレ様はクソ猫なんぞに送ってねぇぞ! 何故だよ、畜生が!」
「だから貴様はザコなのだ、複眼の。
私が伝えている事すら理解出来んとは情けないな」
「相棒······だ、大丈夫······」
卯実ガールがふらつきながら立ち上がろうとしてダディに抱き止められたポゥ。
「無理すんな、俺は大丈夫だ。
卯実はどうだ? 変なところとか無いか?」
卯実ガールの無理矢理笑って見せているポゥ。
卯実ガール······ 彼女も又、戦士だポ。
ダディの為に立ち上がる、ダディの為の不屈の戦士だポ。
「あたし、はぁはぁ。
あたしも大丈夫、大丈夫にするから。
だから、だから忘れて」
卯実ガールやダディにあんな苦し気な顔をさせたクソ眼帯野郎は絶対に許さんポゥ!
「やなこった。死んでも覚えててやる! 俺の家族にあんな真似をしたクソ共がいた事を忘れてやらねえ! もしこの世界に来やがったらクソを漏らすまで『ホルダーの刑』にしてやる!」
ダディが卯実ガールを強く抱きしめながら辺りを見回しているポが、プリンセス トイはクソ眼帯野郎に向かって歩き出したポ。
ミーはプリンセス トイに追て行くポ。
彼女をクソ眼帯野郎から守るポゥ。




