底辺のおっさんは、正座をさせられる
本当にギリギリ
オークの襲撃は容易く撃退した。
ホルダーのアシストを受けたシロリが、バスターランチャーの一撃で総勢36体のオークを皆殺しにしたらしい。
目の機能が回復し始めた俺は小指サイズの魔石15個を前に正座させられている。
理由はトイへの魔力チャージをしようとしたからだ。
「主殿は死にたいのかしら? シブの魔力で身体の中身はボロボロなのに、更に負担を掛けようとするなんて。
魔力が無いから回復魔術の効きも悪いし負担も大きくなるから最低限の治療に留める羽目に成ったと言うのに全く」
ヨウが正座をする俺を見下ろす。
「相棒、流石に無茶し過ぎだよ」
卯実の呆れた声が頭上からする。
「今すぐにチャージしないとトイちゃんがヤバいって訳でも無いでしょ、モッさん」
背後から下井の声がする。
「山本さん、今は回復に務めるべきですよ」
竹井君の声が頭上からする。
「マスター ヤマモト、何を焦っているんだ?」
ホルダーの念話が頭に響く。
「あー、うん、なんだ、その、まずは、ごめんなさい。
トイの魔力チャージ総量が600を越えそうだったのでつい······
500の時にシークレットが発生していなかった様なので600以上で発生するかもしれないと思いました、ハイ」
「明日で良くない?」
明日にしろと言う卯実の一言に、反論してぇ。
無課金のガチャってのはなぁ、もう少しで回せるかもってなるとつい頑張っちゃうんだよ!! 畜生!
「モッさん、気持ちは分かる。ウチも後少しでガチャが引けるってなるとつい、朝まで待てずに回復したそばから行動してしまうよモッさん。
だがな!! 大抵が無駄に終わるんだよ! 小出しに動いて、結局はガチャが引け無いと言う結果に終わり、回復アイテムを使ってしまうんだ!!」
うん、俺にも覚えがあるよ下井。
「しかし、回復アイテムが無い訳だから完全回復する事も、ガチャが引ける事も無く徹夜してしまい。朝1の楽しみを失って、とぼとぼと出勤するんだ!」
あー、うん、あるな、ソシャゲやブラゲの無課金あるあるだな。
下井はガチャを引ける派か、俺は回せる派だぞ。言葉の意味は同じで意味は無いがな。
「んで、シークレットガチャって何さモッさん」
あ、竹井君達と合流してから、シークレットガチャがなかったから説明してなかった。
「トイちゃんのガチャが相棒以外でも回せるんだよ」
「なるほど、そいつはぁ重要だ!」
卯実の説明を聞いた下井が頷く。
回す気マンマンだな下井。
「とりま、普通のヤツで我慢しようよ相棒」
トイにランダム11連ガチャを頼み、俺はトイの胸元のハンドルに手を伸ばすと、トイが俺の手を払った。
「マスター、撫でてからです」
俺にトイは無表情で頭を突き出してきた。
ガ、ガチャガチャでキュートなフィギュアな歌詞かよ······
あのエロゲのオープニングテーマの歌詞に従ってトイの頭を撫でてからハンドルに手を伸ばすと、今度は卯実が俺の手を払う。
卯実は「ん」と言って俺に頭を突き出す。
自分も撫でろと······ 面倒臭いヤツ等だ、全く。
左手で卯実の頭を撫でながら、トイのハンドルに手を伸ばすと下井に手を払われた。
なして!?
「や! 天丼は笑いの基本やし」
ヘラヘラ笑う下井の頭にグーチョップ (ハンマーパンチとかチョピングライトとか言う打ち下ろし)をくれてやり、トイのハンドルを回した。
初見の連中はトイの演出に驚き、卯実やゴブリン達は何故か拍手をしていた。
11個のカプセルが地面に転がる。
色は、白7、青2、初見の緑1、赤1だ。
白が多いが、おそらくランク4のカプセルが出ている。
「ランク1、7つ、ランク2、2つ、ランク4、ランク5が1つづつです。マスター」
トイの報告に俺は小さくガッツポーズをした。




