底辺のおっさんは、家族にうたわれる。
「そう言った重いのはいらんから」
俺の答えにブロゥは『鳩が豆鉄砲を食らった』様な顔をして俺を見つめている。
「あー、うん、その、なんだ、堅苦しいのは苦手なんでな。
なんてーか、こんな場所で言うのアレだが、気楽にやってくれると嬉しい。
俺自身、命令とかは得意じゃ無いし頭も悪い。
俺が間違った命令をした事で何かあっても責任を取りきれないし、目覚めも悪い。
だからブロゥ、お前もある程度は好きに過ごして欲しい」
何故かブロゥは涙を流しながら俺を見つめる。
山羊頭の悪魔夫婦がブロゥの背後に来て片膝を着き、俺に頭を下げる。
「主、ブロゥ閣下の忠誠は不要と言う事ですか?」
ライトが尋ねる。
「魔王たるブロゥ閣下を世に放つのでありますか? 主」
レフィが尋ねる。
「あー、うん、なんだ、ブロゥも言ってたけどさ、家族なんだろ? 俺達は。忠誠は違うと思うんだ。
家族なら忠誠では無くてさ、感謝と敬意があればそれで十分にお釣りが来るんじゃ無いか?
俺はそう在りたいし、そう思いたい」
「「主は魔王たるブロゥ閣下の家族になると?」」
山羊の悪魔夫婦が声を揃えて俺に尋ねる。
「トイや卯実、竹井君に下井、ホワイトゴブリンのシブ達、古代ゴブリンのイットゥー達、あ、後、朝丘とホルダー、みんな俺の家族さ。
なんだかんだで今までやって来た他人同士の他人家族だけど、俺はみんなを家族って胸を張って言う。
ブロゥもライトもレフィも、悪魔だろうが魔王だろうがなんだろが、俺の家族だ。それだけは否定しない」
「ありがとうございます、我らの主」
「我らの主。その言葉、有り難く頂戴いたしましたわ」
俺の言葉に山羊の悪魔夫婦は礼を述べ、頷き会う。
「おお、我ら家族の長たる者、ヤマモト」
ライトが高らかに詠う。
「おお、魔王を統べる王の主、ヤマモト」
レフィが高らかに詠い、戸惑う俺を他所に山羊の悪魔夫婦が揃って詠う。
「「我等が主、その名はヤマモト。
我等の王、その名はヤマモト。
悪魔を救う愚かな長、その名はヤマモト。
悪魔を家族と呼ぶ父、その名はヤマモト。
万魔を造りし創造主、その名はヤマモト。
それは大いなる者の名」」
「それは差し伸べる者の名」
山羊の悪魔夫婦からブロゥが続けて詠う。
「それは優しき者の名」
涙を流したまま、片膝を立てて座るブロゥからシブが詠う。
「それは守るべき者の名」
胸の下で両腕を組んで頷くシブからイットゥーが詠う。
「それは怒れる者の名」
胸に手を当てるイットゥーからシゴが詠う。
「それは惑わす者の名ね」
腰で両腕を組むシゴからヨウが詠う。
「ふむ、それは授ける者の名」
帽子で顔を隠すヨウからホルダーが詠う。
「えっ、あ、い、愛しき者の名!」
俺を視るホルダーから卯実が。
「それは耐える者の名っス!」
恥ずかしげに顔を隠す卯実からシンが詠う。
「それは偉大なる者の名!!」
拳を突き挙げるシンからカドゥが詠う。
「それは受け入れる者の名です!」
両腕を広げて天を仰ぐカドゥからシロリが詠う。
「それは繋ぐ者の名」
真っ直ぐに手を挙げるシロリから竹井君が詠う。
「なによ、わたしもなの? だったら。それは運ぶ者の名」
俺を見て頷く竹井君から朝丘が詠う。
「ウチとシリンちゃんはそだね、その名は素直なる者の名ってとこかな? 真面目に謝るしお礼を言うしねモッさん」
ジャンのおっちゃんを愛しげに見つめる朝丘から下井が詠う。
「その名は問い掛け足掻く者の名です、マスター」
左手を挙げて振り回す下井からトイが優しく詠う。
そして全員が揃って詠う。
『その名を詠われる者の名はヤマモト、我らの家族』と詠った。
何が何だか理解出来ずに戸惑う俺にホルダーが伝えてくれる。
「マスター ヤマモト、君に伝え忘れていたが先程の行為は、本来は家族を持たない悪魔達が行う儀式だ。
あの様に家族と明言し受け入れてくれた相手の印象や感謝、不満などを伝え呪術上の繋がりを得る。
魔力の無いマスター ヤマモトにはほぼ無意味だが、儀式を行った事により家族の魔力を無制限に借り受ける事が可能だ。
マスター ヤマモトには繋がる為の魔力が無いのでほぼ無意味だが、この世界において無制限に魔力の借用を許す事は最上級の敬意の表れだ、マスター ヤマモト」
ほぼ無意味って2回も言うなや! 後、伝え忘れたって嘘だろが、この嫌なヤツ目玉ン!!
「そったら、おではヤマモトさの家族さ違うべが、それは救う者の名だべ」
ジャンのおっちゃんがニコニコと人の良さそうな笑顔で俺に伝えると、完全に蚊帳の外だったシャルローネが叫び出す。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!! 『妖艶の美獣』『背徳の美貌』『魔王を統べし美王』である『夜明けを告げるモノ』様がこんな、こんなのは嘘だー!!」
んな事を叫ばれても知らんがな!!




