底辺のおっさんは、再びあのセリフを聞きます
短いです
お粥が入った飯盒を手に下井がテーブルに向いながら続ける。
「伝えたウチが言うのも何だけど、あんま気にし無い方がイイよ、考え過ぎるとハゲるよって、もうハゲてぇーら」
本当に嫌な事を言うな!!
俺は下井の後を追ってテーブルに向かうと、朝丘とジャンのおっちゃんが手を取り合って見つめ合っていた。
何があったの!?
「ジャンのおっちゃん、お姫様の分でけたよー。
ちゃんと生米から作ったし『滋養強草』粥、イイ感じで美味しいよ!」
下井が言うと、旨い物を食うと口からビーム出したりする古いメシ物アニメのセリフに聞こえるのは何故だ?
「『滋養強草』!! おで等ぁ、それさ探してここさきだよ!! 何処さ有っただべさ」
「ジャン大丈夫よ、山本がちゃんと話てくれるわ。だから落ち着いて」
朝丘が興奮して立ち上がりかけたおっちゃんの手を両手で優しく握って諭す。
お前はここでも他人任せか朝丘。別に良いけどさ。
「あー、うん、なんだ、そのな『滋養強草』だが、そこらに生えてるんだよ。この森だと」
ジャンのおっちゃんはぽかんとした顔で朝丘を見ると、朝丘が慈しむ様な優しげな笑顔で頷いて答える。
「で、だ、おっちゃん達はどうする? 直ぐに帰るのか? ここで他の仲間を待って見るか? 俺としては待つ方を勧めるが?」
全てをジャンのおっちゃんに任せたのか、言い合っていたシャルローネ王女とイケメンじいさんはジャンのおっちゃんを見守る。
「けんど、決めるのさぁ姫さまだべさ。おでにゃあ分からんべ」
「あー、うん、なんだ」
「あなたの意見を聞いてるのよ、ジャン。大丈夫だから教えて」
被せるなよ朝丘。
「んだ、山本さ、なして待つべ?」
「1、生き残りがいる可能性の考慮。
2、おっちゃん達の体力の回復。
3、食料の確保。
4、生還ルートの精査。
5、俺達の移動準備期間。
ざっとこんな所かな? 初めから4人で来た訳じゃ無いだろ?」
小指から順に立てて、ジャンのおっちゃんに理由を告げると、朝丘が笑顔をジャンのおっちゃんに向けた。
本当に何があったのよ朝丘に。
「山本さ達はここさ、おんでて行くのだべか?」
「いや、ここは捨てないよ。
ここを守る守護者も用意してあるし、新入りも用意した。
おっちゃんは俺の異能を知ってそうだし、一度見せてるから分かるだろ?」
俺は赤い収納カプセルから3つのフィギュアを取り出す。
白山羊頭の悪魔『ライト』黒山羊頭の堕天使『レフィ』そして新入りの鶏頭のデカブツだ。
ふと、遊びたくなった俺は地べたに転がるベルギアの皆さんに向けて3つのフィギュアを放り投げて宣言する。
「顕現!」
3つの閃光が『へのへのもへじ洞窟』内部を照らし、あのセリフがこだまする。
「「「目がー!!」」」
ちっ、ジャンのおっちゃんは朝丘が視界を塞いで守ったか。