底辺のおっさんは、今さら危険性に気が着きました
まだ話が進まない。
シンとシロリがスプーンで空いた皿を叩き、シゴは食べ終えた皿をじっと見つめ、イットゥー、ヨウ、カドゥは腹をさすりながら何かを飲んでいる。
シブは呆れ顔でシンとシロリの後ろに立つ、おそらく拳骨を2人にくれてやるのだろう。
卯実と竹井君は朝丘とジャンのおっちゃんを笑顔で眺めながら何度も頷く。
竹井君は朝丘の保護者で卯実の年頃なら恋バナとか好きだろうから、こんなモンだろう。
トイは······また、ホルダーか。
なんてーか、ゲームやスマホで遊んでばかり子供を持つの親の気分だよ······ はぁ。
「モッさん、ちとイイかい?」
「ん、なんだ? 食材の顕現か?」
日持ちし無い食材を収納カプセルでフィギュア化しているので、顕現して欲しい物があるのかと下井の元に俺は向かった。
「や、悪いね呼び寄せて」
「で、何さ?」
「ちょいとマジな話しで、モッさんはジャンのおっちゃんをどうするん? おっちゃんを身内の様に扱っているしさ」
下井の目が真剣なので真面目に俺は答える。
「別にどうもしないさ。おっちゃん達が求める『滋養強草』を渡してサヨウナラだが?」
「無理だね、モッさんは身内にクソ甘いからずるずると付き合ってくと思うよウチは」
「まさか、そんな事は無いだろ。
俺だって身内にそこまで甘くする気はないし」
「モッさん、無自覚なん? 角砂糖のハチミツがけよりも激甘だよ、夕ちゃんがその証拠」
「朝丘が? あいつに甘くした覚えがないけど」
下井は目を閉じ首を振り否定してきた。
「ウチが生まれる前の事はホルダーに教えて貰ったし、生まれた時のカレー騒ぎで夕ちゃんの件は、うやむやなまま。
多少の改善はあっても、夕ちゃんの態度は変わらないんだよ?
ウチなら夕ちゃんを切り捨ててるよ、モッさん」
「厳しくないか? 口が悪い位で」
「うんにゃ。夕ちゃんは口が悪い分だけマイナスだよ。
トイちゃんを基準にして見ても働かないし、ここぞって言う事も無いし竹ちゃんの足場を造るだけで戦闘でも役立たず。
でも食べる分はケチ着けながらも一人前で、内向きのスキルも無いからやっぱり役立たず。
日本なら兎も角、置いとく余裕は無いでしょ? 此処では」
「あー、うん、なんだ、朝丘は、アレだ、アレ、否定役って感じだな、うん。
此処の面々は何故だか俺を全肯定するから、否定役が必要なんだよ、必要悪っての? そんな感じだ」
「モッさん、無理矢理に役目を作るのは良くないよ。
ウチもモッさんの甘さは気にいってるけど現実問題、足りない物が多すぎて生活破綻しかけてるんだよ? 食料だってガチャ頼りな所があるし。
農業を初めるにしても、種も苗も無くて直ぐに食べられる訳でも無いでしょ?」
「何が言いたいんだ下井は?」
「外の世界に出る必要性についてだよ。
モッさんはジャンのおっちゃん達が、自力で帰る事は出来ない事は気づいてるよね? シブのおじ様達だけなら森を越えられそうだけど足手纏いを増やせば分からない。
ここで夕ちゃんをジャンのおっちゃん達に押し付けて、おっちゃん達、足手纏いを切り捨てるべきだよ」
そんな顔をするなよ下井。そんな泣き出しそうな顔を。
「似合わないから無理すんなアホが。
卯実の言葉じゃ無いけど、今まで通り上手く行くさ、竹井君やシブ達の強さだって、アクションアニメを通り越してギャグアニメだぞ、ギャグ」
「モッさんがそう決めたんならウチも煩く言わないけど、一つだけ約束して欲しい事があるんだよ」
涙を拭い真剣な目を俺に向けて下井は告げた。
「これ以上は外の人間にトイちゃんのガチャや顕現を見せ無いでモッさん」
俺達の生命線であるガチャと顕現をするなと言う下井を俺は笑う。
「プッ、何かと思えば。当たり前だ、当たり前。
流石にバレたら面倒になるのは予想できるさ」
下井は笑う俺の胸ぐらを掴んで引き倒し睨む。
「違うよ、モッさん。
そんなに軽い問題じゃ無いんだよ!! ウチ等の持ち物についてモッさんはどれだけ分かるの? ウチ等の持ち物はヤバいんだよ? ホルダーで分かるでしょ!! あのヤバさが!!
おじ様の棒だって『如意棒』だし、シン坊の槍は人が作れ無い、シゴの盾は10枚あれば無敵の部隊が出来る。
兄様の矢筒は入ってる矢を増殖させるし剣と弓は普通に魔法武具だし、イカれ坊主のメイスもそう!! バスターランチャーなんかは攻城兵器で、全部が全部、自己修復機能でメンテナンスフリーのチートアイテム!! モッさんが加工して着けた武具はみんなそう!! 下手にバレたら良くて飼い殺し、悪けりゃ殺されるよね? 分かる? 分かるでしょ!!」
マ、マジでそんなにヤバい物だったのかよ。下井が怒るのも無理は無い。
シブ達の装備をジャンのおっちゃんが当たり前に使っていたとすれば人間の支配圏は広いはずだし、一国の王女の連れが3人の訳がないから森には今まで以上の化け物がいる事になる。
かと言って今まで切り捨てられる側の俺が、誰かを切り捨てれる程に非情になれず、恐らく『くっころーズ』も抱え込む。
甘いと言われても仕方が無いし、下井の危惧する事も理解出来るので困ったもんだ。
「あー、ゴメン、ウチ言い過ぎた」
「いや、下井ありがとな。教えてくれて。
たが、顕現は見られているから仕方が無いとしても、トイのガチャは回さない方がイイかもしれないな」
なんてーか、下井と差しで話すと大体こんなだな、お互いにアホ同士だからか?
「そだね、顕現だけならまだゴマかせるかも。
あ、そだ、ジャンのおっちゃんは『分析』の異能持ちなんだよね、モッさん調べて貰いなよ。
魔力の無いモッさんに、この世界の食べ物が安全かどうか分からないしさ。
まぁゴブリンのウチや魔力持ちのうーちゃん達は平気だろうけどね」
下井は締めに嫌な事を言いやがった。
如意棒って実は武器ではありません。
御釈迦様が如意棒で混沌をかき混ぜ大地を創り掬い上げたと言う逸話(ジャン●漫画で無い原作の方の封神演義だったかな? 良く覚えて無いけど)があるお玉で、一般的には孫の手の事です。
下井の言う如意棒は、西遊記の主人公、斉天大聖孫悟空の持つ如意金箍棒の事です。




