底辺のおっさんと少女のとある一夜
今回で1章は終了です。
2章開始まで感想を受付しますが返信は、2章の前書き後書きにてお返しいたします。
トイを連れて洞窟を出ると二ノ宮さん達は既に意識を取り戻していた。
「トイちゃん!!」
俺達に気が付いた二ノ宮さんはトイに飛び付くが、トイはあろう事か俺を盾にして二ノ宮さんを避したのだが結果として、二ノ宮さんは俺を押し倒した。
「ふにゃ?、え、あ、相棒? あのそのね、元気?」
「あー、その、なんだ、うん、取り敢えずは、退こうか?」
あー、うん、なんだ、胸がどうとかよりも血生臭い。
「二ノ宮卯実は直ちに入浴するべきと提案いたします」
トイが二ノ宮さんの長い髪を引っ張って立たせ様とするが、二ノ宮さんの悲鳴が上がるだけだった。
二ノ宮さんだけでは無く血塗れの女性陣は洞窟内の風呂場に移動し残された野郎どもは泉で血を落とす事になり、俺は再び泉に戻って来た。
「山本さんは二ノ宮さんの事をどうするんですか?」
「んー」
竹井君からの質問だが俺は答えを決めてある。
「二ノ宮さんに決めて貰う」
俺の回答がお気に召さない様で、竹井君は様子を伺っていたゴブリン達共々落胆の溜め息を吐いた。
どーしろってんだよ。
俺達、野郎どもが『へのへのもへじ洞窟』に戻る頃には日は傾き、直に1日が終わる。
食堂で女性陣と合流して夕食の準備をと成る所だが、誰1人としてその気力が無く俺達はカップラーメンで夕食を済ませた。
偉大なるインスタント食品様万々歳。
精根尽きたゴブリン達を食堂に残して、俺は独り見張りに着く為に指定ポイントに向かった。
イットゥーが監修した俺用の見張りポイントで、夜間であれば影で外側からは見えずに内側からは見える岩影に腰を下ろして、見張りを開始する。
時折風が生み出す葉擦れの音がする程度の静かな夜だ。
まるでこの世に独りだけだと錯覚しそうに成る夜。
「だーれだ♪」
「うんぎゃらげれぽぽほげるぴ●ーーー」
元来、夜間の見張りと言うモノは他者の安息を守る責任重大な仕事であり、気が抜けず神経を磨り減らす重労働だ。
俺が視界を遮られた事で奇声を発したのは仕方の無い事だ。
まるで大昔の漫画の主人公の1人が寝起きで自分の額から角が生えた事で上げた悲鳴の様な奇声を上げるのは仕方の無い事なんだ、そう、仕方の無い事だ。
視界が開けるなり、俺は振り返り視界を遮った人物を確認すると、驚いて腰が抜けた二ノ宮さんが居た。
「なんなのよアレは!! 驚かせ様としたこっちがビックリしたじゃないの」
知らんがな。
「多分、悲鳴?」
「何で疑問系なのよ」
「さぁ?」
俺にも分からんがまぁ、二ノ宮さんが怒っている事は理解した。
理不尽なヤツめ。
「全っく、緊張して損したわよふー」
長い息と共に怒りも吐き出した二ノ宮さんは俺に手を差し出す。
はぁ、立たせろと、面倒臭ぇ。
とは言え、二ノ宮さんが居る以上、この場で見張りを続けるのは無意味だ。
岩影が隠してくれるのは1人が限度なので、俺は仕方無く立ち上がり二ノ宮さんの手を取った。
二ノ宮さんを引き起こしてから俺は二ノ宮さんと外に出た。
満月と星々照らす明るく静かな夜、連れの少女は赤く頬染め無言で俺の言葉を待つ。
「二ノ宮さんは」
「卯実だモン、名前で呼んでくれるまで返事しないモン」
またモンモンモンかよ、あー面倒臭い。
「卯実さんは」
「さんはいらないの! 全然対等じゃないモン、プン!」
次はプン言って顔を背けるのかよ······ 強要してる時点で対等じゃないだろ。
「あー、なんだ、照れ臭い、そう、照れ臭いんだよ、名前で呼ぶの」
「あたししかいないモン」
「あーもー、うー、う、卯実?」
「疑問系だモン、プン!」
「兎も角、卯実はどうしたいんだよ。
変な行動していた理由はヨウやシブが話てくれた」
「むーズルい、女の子に言わせ様とするのはズルいだモン」
「あのな『ダンサーに成る夢』はもう諦めたのか? 死んでも叶えたい夢ってのをさ」
「そんなこと無い!!」
不満の余り幼児化していた二ノ宮さんが俺を睨み、怒りを露にして怒鳴るが、俺は怒る彼女の頭を優しく撫でて諭し始めた。
「だろ、俺とそう言った関係に成るって事はさ、諦めたのと同じ事なんだよ。
毎朝の練習も出来なく成るし動く事も大変だよ? 日本だったら可能性は有ったけど、この世界で、この場所で子供を産むって事は命に関わる事かもしれない。
人の支配圏を目指すのは二ノ宮さんや竹井君の夢を進めるには絶対に必要な事だし、少人数で旅に出るにせよ全員で旅に出るせよ準備は進めている。
何よりも、俺の相棒は夢を諦めて家庭に入りますなんて死んでも言わない。
それ処か死んでも叶え様とする凄いヤツだろ?」
「でも、あの、ね、確かにそうだけど、そのね、ヨウさんに何かされてるのはね、知ってたの。
でも、何時の間にかだけど、や、まー、まさ、あ! 相棒!! 相棒の事がね、そのさ、えっと、あー、すー、き? そう、気に成ってたの」
「ん、ありがとう。
でも、聞かなかった事にしとく。
夢を叶えて落ち着いた後でも気持ちが変わらずにいたのなら。
俺に貰われてくれるかい? それまでは予約と言う事で」
俺は彼女の頭をポンと軽く叩いて撫でるのを止めた。
「予約って、フツーは婚約じゃ無いの?」
「言ったろ? 聞かなかった事にしとくって」
「なにそれー、ズルーい、じゃ、あたしも予約って事で」
二ノ宮卯実と言う名の少女が俺を相手に下手でいて情熱的なキスを2度3度と一方的にして洞窟内に走り去った。
なに? なぜに? べさめむーちょ?
イイ年のハゲたおっさんは仕事も忘れて朝まで立ち尽くした。
ベサメムーチョ スペイン語で意味は『相手に沢山キスして』や『相手に情熱的なキスをして』らしいです。
山本さんは二ノ宮さんから沢山の情熱的なキスをしてもらった様ですね。
これにて1章は終了となります。
この様な稚作に、ここまでお付き合いいただきまして、真にありがとうございます。
2章も引き続きよろしくお願いいたします。




