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底辺のおっさんは、外堀を埋められていた

もう少しで1章が終わります。


「何事!?」

濡れ鼠で『へのへのもへじ洞窟』に戻ると入口の周囲がおびただしい量の血痕と吐瀉物で汚れ、気を失ったゴブリン達とケツを突き上げて気絶している二ノ宮さんが倒れていた。

 トイと竹井君とホルダー、朝丘が見当たらず俺は洞窟内の様子を伺う。

 内から水音がかすかに聴こえる。

『風呂に誰かがいる』そう判断した俺は念の為に二ノ宮さんとゴブリン達の介抱する事にした。

 シブが一番酷く、全身を赤く染めて痙攣している。

 まぁ痙攣のお陰でシブが生きていると気付けたのだが。

 うつ伏せで倒れているカドゥとシゴを仰向けにしてやり、二ノ宮さんを運ぶ。

 二ノ宮さんを比較的にマシな所に寝かせて、二ノ宮さんが作ったと思われる水溜まりに土をかけて始末し、その後シブの頬を軽く叩いて反応をみると、シブが呻き声を出して目覚めてくれた。

「あ、ある、じ、ご、ぶじでした、か」

「無理しないで良いから、直ぐにカドゥかヨウを起こすからそれまで耐えてくれよ」

掠れる声で俺の心配をする血塗れなシブの顔をシャツの袖で俺は拭ってやり、シブが荒い呼吸を整えている間に俺は濡れたシャツを脱ぎタオルの代わりにして、血塗れのゴブリン達を拭いてやった。


「申し訳ありません主殿。

 主殿の身を守る事こそ我らが使命だと言うのに、この不始末。

 如何様な罰でも受け入れる所存でございます」

自力で覚醒したヨウが片膝を着き謝罪をするが、俺はそれどころでは無い。

「いらんから、手伝ってくれ」

意識の無いヒトは兎に角、重い、そしてバスターランチャーは個人での運用を想定されていない。

 バスターランチャーの下敷きにされている下井を助け出す事が俺には出来ないのだ。

 下井を引摺り出すにしても、バスターランチャーを退けるにしても、どちらも動かない。

 結局、シブの手を借りてバスターランチャーを退けて下井を二ノ宮さんのそばに寝かせた。

「待て、ヨウはカドゥとシゴの介抱をしてくれないか、二ノ宮さんと下井はカドゥに頼む」

下井を寝かせた俺は、意気を無くしてとぼとぼとこちらに来るヨウに対して右手のひらを見せて拒絶した。

 ヨウは泣き出しそうな顔を帽子で隠そうと左手を挙げるがそこに帽子は無く、慌てる様に背を向けた。

 下井以外のゴブリン達が意識を取り戻した頃に、竹井君が朝丘を背負って現れた。

 竹井君は特に怪我も無いが朝丘は顔面血だらけで、竹井君の話によると、自分で狂った様に木に頭を打ち付けていたので竹井君が絞め落としたとの事。

 ぎっくり腰のカドゥには酷だが3人の治療を頼み、シゴ、シン、シロリを警護に残して俺、竹井君、シブ、イットゥー、ヨウの5人で洞窟の中に行くと提案した。

 全員が俺の同行に反対するが、ならばと俺は1人で洞窟内に歩き出すとヨウが俺の腕を掴んで止めた。

「主殿お待ち下さい。

 ホルダーの無いアタシは信用なりませんか?」

「ホルダーの有無は関係無い。

 ヨウはヨウの目的があるのかもしれないが身内を利用するのは辞め欲しいんだよ。

 ヨウは俺と二ノ宮さんをどうしたいのか教えてくれるのか? 教える訳が無いよな、二ノ宮さんを惑わして俺の子供を産ませるなんて事は」

「主殿、アタシは主殿を侮っていた様ですね。

 そこまで気付かれていたとは、確かにアタシとホルダーは二ノ宮卯実を使って主殿の子を産ませようとしておりますが、それは」

「『俺の為』は、無しだ。

 それは俺を見下す言葉だ、何も出来ないヤツって言う」

ヨウの言葉を遮り俺は言葉を被せて冷めた目を向ける。

「その様な事は!」

「あるのさ。

 俺の子供が必要ならヨウが自分で産めば良い話だ。

 手段を選ばなければヨウなら可能だろ? その上で行動しないって事はその選択肢は最終手段な訳だよな? つまり俺は対象外って事だ。

 からかう事は有っても実行はしないし、俺は自力で相手を得る事が出来ないヤツだから用意してやろうって訳だ」

「主!! それは違います!! ヨウ殿は真に主を思い悩んでおります」

シブが俺とヨウの間に立ち、この魔女を庇う様に俺を迎え打つ。 

「主は異邦人である故に子が成せぬやもしれぬと、ヨウ殿は我に打ち明けて下さったのです。

 同郷の二ノ宮嬢で在れば主の子を成す事が出来るやもしれぬと打ち明け、ヨウ殿は我に協力を求められました。

 我は二ノ宮嬢の返答が否であれば出来ぬと断り申しましたが、ヨウ殿は皆の前にて二ノ宮嬢に主の子を産んでくれと頭を下げ、二ノ宮嬢はこれを受け入れた次第でございます。

 主、二ノ宮嬢もまた、この話を受け入れた上で主と接しておるのです」

シブの醸し出す圧に屈した俺は顔を背けて逃げようとするが、ヨウは未だに俺の腕を掴んでいて逃げる事は叶わない。

「主と二ノ宮嬢の件は、我ら『ホワイトゴブリン』『シロ』一族の総意でもあります」

シブが俺に向ける圧が増し、息苦しくなってきた。

 何だよ『シロ』一族の総意って『シロ』一族なんて何時の間に立ち上げたんだ······およ? 総意だと? 下井も『ホワイトゴブリン』だよな? まさか昨夜のは······

「下井も知ってる事なのか? 竹井君は? 朝丘はー知る訳ねーよなアイツは」

「知らないですよ、初めて聞きましたよ!!」

竹井君は必死に首や手を振り否定するが、なんだかんだ言っても彼は役者だ、鵜呑みには出来ない。

「末の娘、シリンと下井も我が伝え存じております」

畜生カッツォ!! 下井のヤツめ、煽りやがったな。

 下井も二ノ宮さんの心配をした上で俺に話を振ったのは分かるが、騙された気分だ畜生カッツォ!!

「ヨウは昨夜の俺と下井の話を聞いていただろ? その上でこの対応はどうかと思うが···ま、俺が間抜けなだけか。

 二ノ宮さんの件は置いておくとして、トイとホルダーだ。

 2人が何処にいるか分からん以上は探さないとだ、トイは俺の命令は聞くし、ホルダーの念話の範囲に入ればヨウか俺に届くと思うので俺も中に入る、以上だ」

「しかしながら、内部には『カオスデーモン』どもが居るやもしれませんぞ」

シブの言葉に頭痛がする。

 俺達は『カオスデーモン』達を捕らえた後、どうしたんだ。

 何か有ったのは確かだが、何が有ったのか覚えていない。

「先のアレはよこしまなる神々の呪いでしょうか、ヨウは何か分かりますか」

「ええ、イットゥーの言う通りよ。

 呪いから解放されたシブ達『ホワイトゴブリン』ですら気を失うレベルの魔力奔流よ、アタシ達『古代エンシェントゴブリン』がこの程度で済んだのは運が良かっただけね。

 なにせアタシ達を滅ぼす程の力がある事は実証済みなのだし」

うん、良く分からん。

「てゆーか竹井、アンタは本当に人間なの。

 アレを受けてなんとも無いなんて化け物よ、化け物」

ヨウてめえこのヤロ、ヒーロー竹井になんて言い草だ。

「流石に気持ち悪くなったけど、朝丘さんの結界が割れたのが見えて直ぐに異能を発動したし朝丘さんが叫んで走り出したから長くいた訳でも無いけど。

 異能を発動したのに、効果が全く出なかった事で朝丘さんを見失ったからこんな事になってしまった。

 オレが」

「ハイそこまで。

 竹井君が悪いと言うなら作った俺が一番悪いんだよ。

 結局の俺のミスって事だからみんなも気にする事は無いよ」

俺の責任にしないとシブが切腹するから介錯をとか言いかねないしな。

 明日中に1章が終わるかな?

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