底辺のおっさんは、雪崩れ込む
絶対に勝負が着かない9マス3人で行う三目並べに付き合い、他のメンバーを先へと行かせてくれた大天使のいた神殿の様な広間の奥に床が下りのスロープになっている場所があり、その先にはデカイ扉。
そして扉の先は再び下りが続いた。
大理石っぽい材質のトンネルだが、魔法でも掛かっているのか天井が光を発していて、日の光が射し込まない地下トンネルであっても明るい。
この下り坂のトンネルは真っ直ぐではなく、一本道だが右へと緩やかに曲がり続けている事から広間の真下に出るかも知れない。
それに気づいたのは、まあ、なんとなく振り返ったらデカイ扉が見えなくなっていたからだけどな。
道を進んで行くと右側に木製の扉があったが、ホルダーによるとフラマンが封鎖した脱出用の通路に通じる部屋らしいので、用はない。
その先にも壁に扉があるが、開ける必要はない。
広間の扉を抜け地下へと踏み込んだ際、俺は地下牢の様だと思ったのだが、それは事実だとホルダーに教えられた。
離宮とは名ばかりのスロが女性を嬲り、壊し、監禁する地下牢だと。
王妃と共に連行され、妻を目の前で奪われた王様。
命だけはあるが、心身共に原型を留めていない王妃に引き合わせる為だけに呼ばれた王様。
属国の王様達の記憶に刻まれた牢獄にして地獄。
ここはそう言う場所であり、扉の向こう側には犠牲者達がいる。
助け出している余裕は今はない。
彼女達を無事に送り届けられる程の人員はいないし、幼いリール王女に見せたくないと言う俺のエゴだ。
不快で、吐き気のする明るいトンネルを行き、門の様にデカイ黄金の扉が俺達の目の前にある。
この先に下衆にも劣るくクソ野郎がいる。
先頭に立つ竹井君が全員を見回し、最後に俺に顔を向けて答えを待っている。
「みんな、準備は出来てるよな。
スロの実力は分からないし、今現在の部屋の状況も分からない。
200年も皇帝として君臨しているんだからスロはもしかしたら不死身なのかも知れないけれど、俺はこれ以上クソ野郎の犠牲者を見たくない。
だから。
だからどんな手を使ってでも、ここで倒す!
開戦!」
最後尾にいる俺は、掲げた右腕を振り下ろしながら戦闘開始を宣言し。
竹井君が扉を蹴り砕き。
俺達はそのまま室内へと雪崩れ込んだ。




