底辺のおっさんは、闘争の魔王の最後をみる
アンはベルギアの騎士たちが持つ刃渡り80センチ位の普通の剣で闘争の魔王マリスに打ち込むが、マリスは手にする大鎌で受け止めてアンに前蹴りを放とうとするが。
「はしゃぐのはそこまでポゥ!」
飛び蹴りのスキルアーツ『流星脚』で突っ込んで来るブロゥに気が付き、マリスは蹴る為に上げた右足を地面に叩き込んで後ろへと飛び退く。
「ブロゥ殿!」
「ここで奴を倒すポが、やれるポかヘッポコ」
「ブロゥ殿こそやれるのでありますか」
「当然ポゥ! ミーに限界はねえポゥ!」
右手を掲げて閃光に包まれるブロゥに対してアンは。
「自分もでありますよ! 変身!」
右手の剣で五芒星を書き閃光に包まれたけど。
そう言うのをどこで覚えて来るんだ、って言うか遊んでんなよ。
スロを倒すべく城内に突撃したは良いが速すぎて前を見るのが怖い俺は、兎に角ガードランにしがみつき、アル君から送られるマリスとやり合うアン達の様子に集中する。
と言うか、バイクの運転なんぞ出来ねえからしがみつくしかやる事が無い。
シロリや竜帝の方はゴーレムの魔法防御力が高いのか、若干苦戦中みたいだ。
竜帝とジルバのブレスを受けてもゴーレムは倒れず、逆にゴーレム達の10指から射ち出される光弾を避けるのに忙しそうで、シロリとシドも似たような状況。
バルコニーのアル君がいるのでコンテナの方はシゴ達の視界情報が中継されているので問題なく、アンとブロゥの方はアル君が見下ろしてくれているので全体が把握出来る。
遺物の力を解放し金ピカになったブロゥと銀ピカのライガーに変身し大剣を肩に担いだアンが闘争の魔王マリスと対峙している。
「この不始末はミー達で片付けてやるポ!」
「自分は最初から全力全開トップギアであります!」
言うなりブロゥは背中に生えた黒白の翼から羽根を飛ばしながら、アンは途中で赤いライガーに変身しながら、2人はマリスへと低姿勢で突撃して行く。
ブロゥが飛ばす羽根をマリスは左手から放つ光弾で防ぎ、速度重視で腕に付いた複数の刃による格闘戦を得意とする赤いライガーになったアンに大鎌を振り下ろすのだが、急加速したアンには当たらず、逆に胸を軽く切られてバランスを崩し。
その隙を逃さずブロゥが鶏冠を飛ばしてマリスの胸に十字傷を刻む。
2人の攻撃はまだまだ止まらず、いつの間にか大剣と小剣を持つ2刀流の白いライガーに姿を変えたアンが大剣を横薙ぎに振るいマリスに大鎌で受け止めさせると、その隙にブロゥが逆方向からマリスの顔面に後ろ回し蹴りを放つ。
マリスは顔を反らしてブロゥの回し蹴りを避けるも、腹へと伸びるアンの小剣を左腕で打ち払って防ぐのだが、1回転したブロゥが目からビームを放ちマリスの右肩を焼く。
先ほどまで左右から挟まれていたマリスだが、右肩に攻撃を受けた事で態勢が崩れ正面にアン、ブロゥに背後を取られた形になり、一瞬で青いライガーに姿を変えていたアンが全身を使った大剣の振り下ろしに対してマリスは大鎌を両手で持ち横向きに掲げて受け止めやがった。
両手で持った大鎌で脳天目掛けて振り下ろされた大剣を受け止めたと言う事は。
「ポァ!」
マリスの両肩を掴み。
ブロゥは軽くジャンプし。
両膝を胸に付け。
マリスの肩を掴んだ両手を起点にし。
マリスの後頭部に両足を叩き込んでみせる。
異常なレベルの体術で攻撃を避けるマリスであっても掴まれた状態のゼロ距離攻撃を避ける術は無く、普通の奴ならば即死するのだが。
ブロゥの蹴りで押されるマリスに逆方向から大鎌を押さえていたアンの大剣が顔面に迫り。
アンの大剣をマリスは最低限の動き、いや、出来る限界の動きでアンの大剣を額の角で僅かに反らす。
結果として3人のバランスが崩れ、マリスは右手を縦に裂かれ両肩と頚椎を砕かれ蹴り飛ばされ地に落ち、アンは大剣をずらされた事でマリスの右手を手首まで切り裂くも尻餅をつき、ブロゥは蹴りの反動でそのまま落下し、全員が倒れる事となった。
倒れたと言ったが、頭から落ちるブロゥは素早く両手を地に付け、そのまま反動を利用してマリス目掛けて飛んで行き。
アンは座った状態のまま卯実の様に尻を両腕の力で浮かせつつ足をマリスの方へと高速旋回させ。
ブロゥとアンはスキルアーツを放つ。
「流星脚であります!」
「流星脚ポォォォアッッ!」
アンは地を這う様に、ブロゥは上から落ちる様に『流星脚』でマリスを襲う。
肩と首が砕け、右手は縦に手首まで切り裂かれていると言うのに立ち上がり、大鎌で受け止め様とするのだが。
不意に大鎌がマリスの手から離れ。
半端な態勢のまま。
アンとブロゥの流星脚をその胸に受け城壁のあった場所まで吹き飛ばされ。
闘争の魔王マリスはその姿を維持出来ず、老人の姿へと変貌するのだった。
呻き、立ち上がろうともがく老人の元へと魔王級の遺物である大鎌を肩に担いだアイツがアンとブロゥを引き連れて歩みよる。
俺達と共にスロを倒す突撃部隊だったはずのフラマン。
俺はフラマンが突撃部隊にいない事に全く気がつかなかったのだが、アイツは宿敵であるマリスとの因縁にケリを付ける為に潜んでいたようだ。
マリスは大鎌を落としたのではなく、フラマンが何かして奪ったのだろう。
詳しい事は後で知ればいい。
今はフラマンがマリスをどうするのかだ。
「なかなか面白い武器だな、オレの身体に合わせて縮むとは」
「じっげんだい、が、がえぜ」
「破滅の大鎌は兎も角、先の戦いで取り込んだ遺物が機能停止か修復中になっていたと言う事か、弱過ぎる訳だ。
闘争の魔王の遺物も機能停止し、破滅の大鎌もこの手にある」
「ぢがら、ぢがらがぬげる、ぢがらがぁぁ!」
まともに喋る事すら出来なくなってマリスは叫び、フラマンへと飛び掛かるのだが。
フラマンはただ作業をするかの様に。
狂えし老人の首を刈り落とすのだった。




