底辺のおっさんは、精神世界へ助けに行く
ヤツの竜翼に無数の目玉が表れた途端、ヨンタから念話が来たが、何をどうしたら良いのか全く分からん、がしかし。
ヨンタのヤツは色々とアレでも家族な訳だし、出来る事があれば手を貸してやりたい。
「マスター ヤマモト、ブロゥと融合中のヨンタだが、なかなか危険な状況の様だ。
ブロゥの内面、分かり易く言うならば精神世界の様なモノにてブロゥの精神、ブロゥの旧人格、遺物に残された魔王級どもの残滓が肉体の主導権を奪い合っており、ヨンタはその隙を突き繋がりの強い竜翼の主導権を掌握している」
「つまり、翼だけはヨンタで残りはブロゥと魔王級の残りカスがケンカ中って事か?」
「頭の悪い言い方をすればその通りだが、ブロゥ以外のモノが主導権を握れば、ブロゥ並びにヨンタは消滅する恐れがある」
「ホルダー、助ける方法はあるのか」
「ヨンタは私が掌握している眼だ。
ヨンタを通じてヤツと『同調』する事は容易く、そして個を維持する事に私は慣れている」
「ホルダー、俺に何か出来る事はあるか」
「全く、君と言う奴は家族が絡むと己を省みなくなるが、それこそ君らしいと言える。
ならば手を貸して貰うぞ、我が友マスター ヤマモト」
ホルダーとの念話を終えると俺は再び意識を失った。
「マスター ヤマモト、マスター ヤマモト、しっかりしたまえ、この程度で君が消失するはずがない」
寝起きみたいにぼんやりとした頭にホルダーの声が響き、俺は呻いたのちに周囲を見回すが、真っ暗で何も見えん。
自分の身体すら見えないし、なんだか腕とかの感覚もぼんやりしてるのはなぜだ?
「マスター ヤマモト、私と君はヨンタと意識のみ『同調』しブロゥの内面世界にいる。
自他の区別を認識し意識を保てば問題は無い」
なかなか難しい事を言ってくれますね先生。
「いいぞ、自他の認識がハッキリされて来ている、その調子だマスター ヤマモト」
よー分からんがホルダーに褒められた途端、俺は右手に何かを持っているとハッキリと分かる。
右手にある物、ホルダーに目を向けるとぼんやりとした頭がスッキリとして俺は俺だと理解出来る。
「君がこの場での自己を確立出来たので移動するべきだな、マスター ヤマモト」
「行くのはいいが、真っ暗で何も見えんけど、どこに行くんだ」
「私としてはヨンタと合流したのちにブロゥと合流し遺物の思念を消去する事を勧める。
移動は相手を考えながら進むだけだ」
「なんとも行き当たりばったりな事で」
若干呆れはしたものの、こんな場所は初めて…… でもないな。
マキに会った場所に似てる。
あの時も肉体がないから見えないとか言われたし、近い物があるのかも知れないって、まずはヨンタを探さんと。
俺がヨンタを探しに歩き出した途端、ヨンタのアホは目の前に現れ、思わず叩き落としてしまった。
ヨンタの奴は再び浮き上がりギャアギャアと喚き俺に文句を言うが。
あー、うん、なんだ、驚かせる方が悪い、うん、俺は悪くないはず。
「チンタ、黙ってブロゥの所へ案内しろ」
「チじゃねぇ! こんな状況だって言うのに相変わらずクッソ性格の悪ぃな大将」
「ンタ、早くしろ」
先生、話が進まないのでチンタをからかうのはその辺にしてブロゥを探さんと。
「だからチじゃねぇってんだろがハゲ!」
「はいはい、よろ乳首ンタ案内をよろ乳首って事で」
「ハゲてめえ、ここならオレ様も自由に動けんだからカマしてやんぞハゲ」
ホルダーとヨンタのおかげで気が楽になったし、外の様子も分からんしとっととブロゥを探して片を着けんとな。




