底辺のおっさんは、ある意味で処刑宣告された
翌日と言うか、夜明け前に俺達は揺れと地鳴りにより強制的に目覚めさせられ、現在アイバット達に空から周囲の確認を行って貰っているけど、周辺の状況次第では撤退も視野に入れんとな。
「マスター ヤマモト、悪い知らせだ。
アインが目標地点の崩落を確認した」
ホルダーからの報告を俺は一瞬理解する事が出来ず、呆け、そして頭の中が『何故』で埋めつくされる。
今さら地震の1つや2つで何故崩落したんだ?
何故このタイミングで?
何故、こんな事になったんだ?
俺達がこの地にやって来た意味はなかったのか?
アイン君が空から見た映像が視界の端に映し出され、目的地となる場所は土煙を上げ未だに崩れ続けている。
禿げた岩山が連鎖的に崩れ、立ち上る土煙で状況を確認する事すら困難に成って行く。
これでは岩山内部の研究所も無事で済むはずがない。
フラマンの家族や研究者達は崩落に巻き込まれ岩石に潰されたか、よくて生き埋めだ。
まだだ!
まだ全滅した訳じゃない!
迅速に救助すれば助かる命もあるはずだ。
「竜帝! 今すぐ救助に、って竜帝は怪我が酷いからジルバ、コンテナを運んでくれ」
「居住ごと移動するのか、これは合理的だ」
俺がジルバに指示を出し、すぐさま救助に向かおうとすると、聞き覚えのない声がし俺は周囲を見回すが家の面々ぐらいしか姿は見えない。
「マスター ヤマモト上だ!」
ホルダーが知らせてくれて俺は始めて上に目を向けると、そこには自分よりも長い杖を手にした人影があった。
「聖遺物の回収に来て見れば、異世界人に唯一種等がいるとは興味深い」
夜明け前の暗さや距離もあって俺の目では上空の人影をはっきりと確認する事は出来ないのだが、相手の声ははっきりと聞こえる。
「『視て知る』事が出来ない、警戒を怠るなマスター ヤマモト」
「魔王級の相手って事かホルダー」
「不明だが、ヤツは念話で君達を異世界人と呼んだ」
上空の人影が敵かどうかは分からないが鑑定能力があり、俺達を鑑定した上で声をかけて来たのだから警戒するに越した事はないな。
「魔王と変種の番、異世界人のメスは残すとして、他は処分が妥当だな」
警戒を強め指示を出そうとした矢先に上空の人影から処刑宣告とも取れる念話が俺達へと下されるが、何故かヤツは左へと飛ぶ。
「貴様はここで殺す!」
突如フラマンが吠え、立て続けにナイフを上空の人影へと放つが、避けられ、長杖で打ち払われてしまう。
「なるほど、実験体の手引きか」
「マリス! 同胞達に行った仕打ちを詫びて死ね!」
冷静さを欠き、ただナイフを投げるフラマンに人影が気を取られている間に俺はヨウにあの必殺技を使うように指示を出すとして。
どこのどいつか知らんが取り敢えずはぎっくり腰にでも成ってもらうとするか。




