底辺のおっさんは、嘘だと思いたい
ドラゴンゾンビと竹井君がアイバット達の目視範囲内にいるので状況が上から分かるのはありがたい。
上空の大天使は竜帝に任せて、もはや骨だけだからスケルトンドラゴンかも知れないが取り敢えずはドラゴンゾンビと呼ぶコイツを集中攻撃で倒す。
現在の竹井君の状況はやや優勢と言った感じ。
薙ぎ払う様に振るわれたドラゴンゾンビの右腕は竹井君によって手首の辺りから切断され、今しがた振るわれた尾骨も竹井君に打ち合う形で切り飛ばさた。
勇者の剣と同化し為なのか元々なのか知らんがすげぇ切れ味だなパワーアップした神剣は。
ドラゴンゾンビが放つ真っ黒な球体ブレスはチャージが必要の様で、ところかまわず切りつけて来る竹井君に邪魔されチャージそのものが出来ないでいる。
そんな状況下でジルバから飛び降り、自慢の棒を扱える限界サイズに巨大化させたシブの1撃がドラゴンゾンビの頭蓋骨を粉砕し。
シンの薙刀が骨組みだけの翼を切り捨て。
シゴの剣が逆の翼を切り捨て。
シロリのバスターランチャーとジルバのブレスがドラゴンゾンビの背中に命中した。
「なるほど、腹部の物体が魔力を吸収しているのか。
マスター ヤマモト、ヤツは腹部の物体で魔力を吸収する事でこちらの攻撃を無力化ないし弱体化している」
「って事は」
「普通に殴ればよい」
ホルダーと俺の解答が一致しすると同時にジルバから飛び降りた卯実がドラゴンゾンビの左腕をシホから借りたチェーンソーで切り落として着地する。
ん? あのチェーンソーは魔力で出来た無数の刃が高速回転して目標を切断する武器なのにどうしてだ?
もしかしたら卯実の魔力は吸収されなかったのか?
ふと嫌な予感がして俺は距離を取る様に指示を出し、ほぼ原型を留めていないドラゴンゾンビの様子を伺うと。
ドラゴンゾンビは爆散し、周囲に骨の欠片を撒き散らし、ドラゴンゾンビがいた場所には腹にある真っ黒なナニカ、紫色の塊、真っ白なデカイ爪が空中に浮かんでおり。
真っ黒なナニカに紫色の塊と真っ白なデカイ爪が吸収去れると、信じられない事に一瞬でドラゴンゾンビが再生されたのだった。
嘘だろ、おい……
みんなは距離を取った事で、爆散し撒き散らされた骨は避ける事ができたが、それは再生したドラゴンゾンビからも離れている訳で。
ドラゴンゾンビが飛ぶのを阻止出来る位置には誰もいない事になる。
上空のジルバとシロリの攻撃は吸収されてしまうのでドラゴンゾンビを押し留める事は出来ないし、ドラゴンゾンビに再び飛ばれたら、こちらはあの真っ黒な球体ブレスを防ぐ事は出来ない。
「絶対阻止!」
慌てた俺の訳も意味も分からない滅茶苦茶な指示に彼女は応えてくれた。
電磁加速した無数の弾丸がドラゴンゾンビに降り注ぎ爛れた腐肉を穿ち、剥き出しの骨を砕き、飛ぶ事を許さない。
ヨウとシドの魔力を伴わない合体攻撃、ガトリングレールガンだ。
「本機、残弾数ゼロ、以降の攻撃は魔力弾による物となる」
マジかよ、嘘だろ、おい……
シドの報告で芽生えた希望は一瞬で絶望に変わり果ててしまった。
次は飛ぶ事を阻止出来ない……




