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底辺のおっさんは、彼女を戦力として見ていなかった

 上空の映像には竹井君とシャルローネ王女しか見当たらないが、実際のところ竹井君はどうやってウィクトルに勝ったんだ。


 もしかして、跡形もなく消し飛ばしたとじゃないよね……


 俺が不安に駆られ何も言えずに上空の映像を眺めるだったが。


「クソが!アイバットですら捕捉不能な速度で動きやがってクサレ柑橘類が!」


 不機嫌でガラの悪くなったホルダーにも答えは分からず、不安は益々募る。


「山本さんオレ、山本さんの言う通りに勝ちました。


 山本さんはこうなるって分かっていて変身しろって言ってたんですね。


 もう少し分かり易く言ってくれないと、オレ、殺せって指示かと思っちゃいましたよ」


 えっと、竹井君、俺が君はぶっ殺す為に変身しろって言ってたと思っていたのか……


 俺は卑怯千万な弱い者いイジメな上に目潰しをしろって言ってたつもりだったんだが……


 アイバットのミィちゃんが気を利かせてくれたのか視界を真帝国側の方に向けてくれたので、分かったが、真帝国軍の一部が倒れており、そこにウィクトルの姿もあり、死者はいない事が確認する事が出来ると、再び映像に甲冑姿の竹井君が映し出される。

 

 上空の映像にはサムズアップする甲冑姿の竹井君が映り、兜で表情は分からないが、俺には竹井君が最高の笑顔を浮かべている様に思え、大団円って事になろうとしていたが無粋で余計な事をするヤツはどこにでもいる。


「真帝国に歯向かうクズ共が!


 貴様は化け物の分際で殺せんのだろ、ならば死ね! こいつの命が惜しければなぁ」


 派手な甲冑を纏い、面当てを上げて顔を出しているおっさんが12、3ぐらいの少年の首にナイフを突き付けながら現れやがる。


「クックックッ悪魔将軍、悪魔の名を冠する貴様も人質でも使い誰か1人ぐらいは道連れに始末して見せよ、ヤツのように」


 ホルダー先生その映像邪魔。


 誰も見ていないスロの映像とか邪魔だし、急にショーの続きをやられても戸惑うだけだから……


 竹井君の方はおっさんが人質を完全に盾にしていて竹井君は思案中で動かず。


 竹井君の変身で目が眩んだ人達は呻き声を上げながら視力回復に務めている。


 うん、誰も見てない……


「ふざけるなポゥ! ポんな卑怯なマネをしろと言うポか! これ以上ひポをひポと思わぬ貴様に従うつもりないポ! 今からミーは貴様の敵ポゥ!」


 うん、こんな唐突で寒い悪役の寝返りシーン、おっさんも見た事ないよ……


「場をつなぐ為だ仕方ないだろう、マスター ヤマモト」


 ホルダー先生、時にはシーンを切り捨て(カット)する勇気が必要ですよ。


 竹井君の方に注意を戻すが、人質を捕ったおっさんが急かすだけで動きはない。


 竹井君の力では人質を助け出す際に事故が起こりかねないので竹井君は動かない。


 にしても、この少年はどこから出てきたんだよ、他の真帝国の連中も戸惑っているし。


「チッ、ヒルデドルブの野郎、汚え真似しやがって」


 あのおっさんはあべしの同僚だけあって『ひでぶ』なのかって、あべしいきなり現れたりして何なんだお前は。


「ヒルデドルブは手段を選ばぬ男、間違いなく従者の少年は殺されてしまう!」


 出オチまで出て来やがったよ……


 どこからともなく出て来て頼んでもない説明をしくさる出オチとあべし。


 この2人の登場で脱力感に襲われた俺にホルダー先生は「この2人は警備の指揮と人員整理の為に始めからいたが、マスター ヤマモト」と教えてくれまして、微妙に気まずいです……


 映像を眺める事しか出来ないこちらでアホな事をしている間に竹井君の方では状況に動きがあった。


 取り敢えずと言った感じか、竹井君が変身を解いて両手を上げたのだが、 略すと『ひでぶ』なおっさんは竹井君に死ねと繰り返すのみ。


 小石か何かを弾いてナイフを落とさせるとか、竹井君なら出来そうだけど両手を上げてしまったらそれも出来ないし、そこらの小石を弾いても途中で石が砕けるだけかだし、何か手はないのか……


 そんな事を悩んでいましたが、正直、戦力として全く見ていませんでした。


「『シュトルムエッジ』!」


 凛とした掛け声ののち、居合い切りさながらに細身の剣を振り上げたシャルローネ王女の後ろ姿が映しだされていた。


 シャルローネ王女が手にする黒い刀身のサーベルは甲冑で守られている『ひでぶ』の腕を切り飛ばし、噴水の様吹き出す返り血で彼女は赤く染まって行く。


 ナイフを持つ腕を切り飛ばされ、痛みの余り切られた腕を抑えて地べたを転がり叫ぶ『ひでぶ』の腹をシャルローネ王女は踏みつけ、その眼前にサーベルの切先を突き付け見下ろす。


「私はタケイ殿達の様に強くなくてな。


 弱い私は生き抜く為に命を奪う事に躊躇などせぬが、無抵抗の者に刃を突き立てる様な外道ではない」


 返り血に染まったシャルローネ王女はそう吐き捨て『ひでぶ』の返答を待った。

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