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底辺のおっさんのカレーなる絶望

カレーは有っても米がにゃーよ

「流石は相棒!! 愛してる」

叫んだ俺はある事に気が付き、飛び掛かる二ノ宮さんを避ける気も無く押し倒された。

 米が無い。

 そう米が無いのだ、カレーはあるが米、ライスが無いのだ。

「やた! 高いヤツじゃん」

二ノ宮さんは俺からレトルトカレーの箱をひったくって、歓喜の声を上げた。

 そんな二ノ宮さんを俺はいたたまれない気持ちで押し退ける。

 無理やり押し退けられても二ノ宮さんは嬉しそうにニコニコと笑顔を浮かべながらカレーの箱を開封し中身のカレーを確認する。

 つ、伝え難い、ライスが無い事を。

「山本さん、鍋の用意出来ましたよ。

 あ、薪木が足らないかもしれないですね、取って来ます」

竹井君は鍋を置き薪置き場に走って行く。

「山本、辛口? 中辛? メーカーは? 面倒だからわたしの分を出して。

 痛っ、何するのよ」

朝丘が手を出すが二ノ宮さんにはたかれて、抗議する。

「おめーに食わせるカレーはねーザマス! 山本さんが渡しても相棒のあたしが許さんザマスの事よ」

二ノ宮さんが壊れたよ。

「山本··················さん、わたしにもカレーを下さい。

 お、お願いします」

朝丘が頭を下げて頼み込んで来たが、俺は何も言えずに立ち尽くしていた。

 どーしよ······

「どしたの? 世界の終わり見たいな顔して?」

「カレーライスが···カレーライスが食え無いんだ······」

「カレーあるじゃん? 何、言ってんの? って、ま、まさか···」

「米が、ライスが無いんだ···」

「うそ、山本、ご飯が無いの? 嘘よ、嘘と言ってよ!!」

「神は死んだー」

狂った様に頭を振る朝丘と崩れ落ち膝立ちで上を見上げた二ノ宮さん。

 まてよ、大元、本体に何かあるかもしれん。

 昔あったメロンパンのガレージキットの様に本体がおまけに成ってるこの状態だ、本体をまだ確認していない。

 俺は『食料10日分改』の本体である木箱を覗き込んで中身を取り出す。

 木箱には目の荒い麻袋に入った小麦粉、藁で守れた卵、多分だが岩塩が入っていた。

 俺がその事を告げると2人は復活し木箱に詰め寄って来た。

「カレーライスは無理でもナンよ、ナンを作ればイイのよ」

「ライスが無ければパンを食べればイイのよオーホッホッホ」

朝丘、ナンってどうやって作るか知ってるか? 俺は知らん。

 二ノ宮さん···君はどこのマリーさんだよ?

「薪木、持って来ましたよ山本さん。

 カレーライス、楽しみですね」

薪木を抱えて戻って来た竹井君は笑顔でそう俺に告げた。


 結論から言えばパンもナンも作れ無い。

 竹井君も含めて俺達は誰1人として作り方を知ら無いからだ。

「どうするの、卵と小麦粉で薄焼き見たいなのでもする?」

朝丘が恐ろしい事を言い出した。

 俺と二ノ宮さんは2人と合流する前に手に入れた卵を食おうとして酷い目にあっている為に卵に消極的だ。

 卵を割ったら雛が出てきて「ホーチミーン」とか叫んだな俺。

 卵から雛の事を2人に伝えると2人も卵を諦めてくれた。

「では、小麦粉を水で溶いたらどうですか?」

「嫌よ、失敗してもんじゃみたいに成ったらどうするのよ」

竹井君が代案を出すが、朝丘が即座に反対する。

 仕方なく俺は全員の知識を集約しているホルダーに相談する事を提案しようとすると「あのー、今、宜しいでしょうか?」と聞き慣れない声が掛かる。

「あ、ども、あるじさんですよね? ウチは下井凛花しもいりんか言います」

へぁ? シリンって名付けるつもりだったけど、自分で名乗ったよ、このメスゴブは。

「あー、うん、なんだ、そのシリン、お前は自分で名前を付けたのか?」

「尻違いますぅー、リンカ・シモイ、下井凛花ですぅー。

 次にウチの事をケツ呼ばわりしたらケツ穴に四角い500のペットボトル突っ込んでやる!! 分かったかハゲ!!」

「お、おう、分かった」

シリン事、下井凛花に気圧けおされた俺は2、3歩後退りしてしまったのだが、異能を発動した竹井君が俺と下井凛花の間に入り、二ノ宮さんも異能を発動して下井凛花の後ろに回り込んでいる。

「君は何者だ?」

竹井君が右手を上げ左手を下げた構えで下井凛花に尋ねた。

 古流空手だかの目玉と金玉を狙う構えで、相手に『ブッ殺す』って意志表示するヤツだっけか? 漫画知識だけど。

「答えないと···折るよ、首」

二ノ宮さんが表情を消し戦闘態勢で左足を引いている。

 二ノ宮さんは近頃、竹井君に素手の戦い方を教わっていて戦闘能力を上げていて、十分に下井凛花を始末する事が出来る。

「暴力反対、人類みな兄弟、ラブ&ピース」

両手を上げ無抵抗をアピールする下井凛花に対して。

「あんたゴブリンじゃん」

二ノ宮さんが冷たく吐き捨て。

「まさかの差別発言的ツッコミ!!」

必死な顔で余裕だなコイツ。

「この場合は区別だ、オレ達の敵か味方かの」

竹井君は下井凛花との距離を詰めて最終勧告を告げる。

「たっけてー主さーん、腐れ目玉ぁー話違うぞコラー」

「マスター ヤマモト、ミス シモイは前世の記憶を持ついわゆる転生者だ。

 私がミス シモイを『視て知る』所、マスター ヤマモト達と同一の理由で転生したと確認が取れた」

また勝手に視て、仕様がないヤツだな。

「下井凛花、あんたはなんだ?」

「知らんがな、ウチが知りたいわ、こんハゲ!」

ええー、助けてゆーたじゃんか、アンタ。

「ミス シモイ、先程からハゲと呼んでいる人物こそが君たちゴブリンの主だ。

 彼の名はヤマモト マサシ、この場の支配者だ」

支配者に成った覚えは無いぞ、目玉野郎。

怪物が闊歩する場所での地獄の様なサバイバル生活なのにシリアスが遠い。


『ホーチミン』はベトナムの最大都市で、ベトナム戦争時は南ベトナムの首都だった都市です(現在のベトナム首都は北のハノイになります)

 

 作者 野上には、聞いただけで無理です、食えません、アレは。

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