底辺のおっさんは、銀竜の名前を知る
名前を付けたが、いつも通りに気に入らないなら変更可なのだが、面倒臭いので変更は勘弁してもらいたいと思いつつ、様子を伺うと。
なして泣くかね。
嬉し泣きっぽいから、まあ良いか。
近くで作業をしていたシブ達がサンを祝福するかの様に声をかけているのだが、君等シホの時と違くね、態度。
シホの時は周りにいなかったけど、あっさり目に済まされてたのは性格や向上心の問題だからなのだろうか。
「主、ワラワの様な未熟者が過分な名をいただけるなどとは思いもしておりませんでした。
先達たる同胞達には手も足も出ず、負け続ける未熟者ではありますが、主にいただいた名に相応しくなれる様、己を日々鍛える所存でございます」
サンとは余り一緒にいなかったが、面倒臭いヤツだな、コイツも。
当たり前だが、砦の襲撃に全員で向かう訳でさはない。
第1陣として竜帝に乗って行くのはフラマンを始めにイットゥー、ヨウ、カドゥ、サンの古代ゴブリン組に、盾役のシゴ、後はホルダーとアイバットのフューラちゃん。
他には追従するかたちでシドとシロリのコンビが行く。
第2陣の銀竜に乗るのは卯実、ソウセキ、ブロゥ、アイバットのアイン君とミィちゃん、リール王女、ナミラさん、エルスタス、出オチとあべし。
竹井君とシャルローネ王女がガードランに乗り、アンは自力で追従する。
俺を始めとした残りの面々は拠点のコンテナで留守番。
警護はシブとシンの2人で十分だろう、ヨンタを残しているので連絡は取れるし、指示も出せるから。
第1陣と違い、第2陣は1度エノーの王都にシャルローネ王女達を残して行く事になっている。
まあ、残して行くっても竹井君とアン以外は戦力外で、ナミラさんは世話役だし、基本的に卯実達は動けなくなった砦の兵士の捕縛要員だから問題ないだろうけど。
シャルローネ王女殿下、レトルトカレーを持って行こうとしないの。
交渉事だから有利にする為に手土産を持って行くのは分かるし、レトルトパックだから持ち運び易いのも分かるけどカレーは置いて行くよろし。
今回は各国の全線にある砦を一気に攻める電撃作戦なんだからカレーの布教をする暇なんてないでしょ、全く。
シホから大量のカレーを受け取っているシャルローネ王女の元へと俺は呆れながら向かった。
竜帝に乗る第1陣が飛び立ち、銀竜に乗る第2陣も準備完了だが、シャルローネ王女の背負い鞄が微妙。
カレーの布教をしている暇はないと俺はシャルローネ王女に言ったのだが。
曰く、交渉の為の手土産
曰く、美食による外交の一環
曰く、カレーの素晴らしさを知れば裏切る事はない
曰く、華麗なるカレーの力は国の面子に勝る
曰く、世界は華麗なるカレーにより纏まる
曰く、現地産カレーを作る為の活動
あー、うん、なんだと呆れもしたが、結局は押し切られ、カレーは彼女の背負い鞄の内に収まっている。
まあ、カレーはアホみたいに作ったから持って行かれても余裕があるみたいだしイイか。
「みんな準備はオッケー?」
「わたくしは出来てますわウミ。淑女らしく優雅にして華麗に最速で翔びますわよ」
「じゃあ相棒、行って来るから。いくわよジルバ」
立っているのがやっとな程の風を巻き起こし、こちらの返事も待たずに銀竜は飛び立ったのだけど、さっきのジルバって銀竜の名前か?
 




