底辺のおっさんは、拳を掲げる
相変わらずアホな面々です
完成したゴブリンと食料を収納カプセルに収めて俺が食卓のある場所まで行くと中々なカオスが繰り広げられていた。
シブ、イットゥー、シゴの3人が気持ち悪い程にリズム良くうねうねとした波を描く腕立て伏せをし、カドゥが壁に向かい時代劇染みたオーバーアクションの土下座と胸の前で両手を組む祈りのポーズを高速で繰り返し、シンが壁をトカゲの様に這い回り、シロリは平べったい粘土の塊を地面に叩き付けては叩き付けた粘土を捏ね回すのを繰り返し、俺に背を向けている二ノ宮さんは正座している朝丘さんの前で仁王立ちだ。
竹井君の他にトイとヨウが見当たらないが、外で見張りか?
俺に気が付いたシブが円を描く様にうねうねとした腕立て伏せから逆立ちに移行するとシゴ、イットゥーもシブに続き逆立ちをすると、シブがバク転しながらこちらに近づくと、シゴがバク転をしながらシブを追い、イットゥーもバク転でシゴを追う。
シゴとイットゥーが位置を変えシブ、イットゥー、シゴの並びに成り、シブが俺の前に着地してボディービルダーがするポージングとか言うヤツの『サイドアップなんちゃら』とか言う右手で左手首を掴み胸の筋肉をピクピクするアレをするとシゴが着地してシブと逆向きで同じ様にポージングをし、やはり胸の筋肉をピクピクさせ、イットゥーが着地と同時に両手を後頭部で組んで足を前気味に出すをポージングで腹筋をピクピクさせる。
「「「「主、何用で!!」」」」
君等、何処でそー言うの覚えて来るの? おっさんはボディービルの事、良く知らんのに? まぁ気にせんとこ、多分したら負けだろうしな。
「あー、うん、なんだ、トイ達は何処?」
「トイ様はヨウと湯浴みをしております、主」
イットゥーが腕を曲げを腹の前にやり前屈み気味なポーズをとり、胸の筋肉をピクピクさせる。
イットゥーは何で今に限って上半身裸なん?
「竹井、見張り」
シゴが両手を尻の辺りで組んで片足を引いた状態で膝を軽く落としたポーズをとり、腕の筋肉をピクピクさせる。
シゴ、何故、ステテコだけなんだ? 衣類のワゴンから着れそうな服、着てたよね君等、最近。
「彼等に御用ですかな主。
我が呼んで参りましょうか?」
シブもシゴと同じポーズを逆向きでとり、腕の筋肉をピクピクさせる。
シブ、お前もか···で無くて! パンツ一丁ならぬ、褌一丁なのは何故!! クソダサい横書きの『武士』Tシャツはどうした?
「あー、なんだ、トイとヨウは二ノ宮さんに頼むから良いよ。
竹井君は自分で呼んで来るよ。
みんな集まったらこの子を顕現するよ」
俺がメスゴブリンを見せるとシブ達が喜びの声を上げた。
俺は二ノ宮さんにトイ達の事を頼み竹井君を呼ぶ為に入口に足を向ける。
「ちょっと、この子を何とかしなさよ」
足元のモノクソどうでも良い朝丘を一瞥し、俺は竹井君を呼びに行く。
トイじゃ無いが俺にとってあの女はここの生活に必要ない。
俺と竹井君が戻るとトイとヨウの2人と入れ替わりで二ノ宮さんと朝丘さんの2人が風呂に入っているらしく「お湯を無駄に使うな!」とか「お風呂に入れる事を山本さんに感謝しろ」とかが風呂の方から聞こえて来る。
デカイ丸太を縦に割って貰ったのをヨウのナイフでくりぬいただけだぞ、その湯曹。
「マスター、食事を要求します」
欲望全開ですなぁトイさん。
でも、二ノ宮さんは待とうな。
『銀』と一文字書かれたデカTシャツを着た風呂上がりのトイの頭に手を置き俺はヨウを見ると『黒』と書かれたデカTシャツを着たヨウが首を横に振って俺に告げる。
「朝丘はダメね、もっと酷く成ったわ。
で、卯実ちゃんが怒り出したんでもう卯実ちゃんに任せたわ」
薄暗い魔法の明かりの下でヨウは呆れている。
どうでも良いが2人共、太もも丸出しなのだが?
「卯実ちゃんとホルダーが見張ってるから、馬鹿な真似はしないと思うけど、主殿も気を付けてね」
「ん、分かった」
食事を要求するトイとお預けを食らったゴブリン達を宥めながら俺は二ノ宮さんが風呂から上がるのを待った。
「「「「目がーーー(っス)!!」」」」
顕現の閃光をもろに浴びた面々がお約束の叫びを上げてのたうつ。
シンは2回目で二ノ宮さんは知ってるのに何故? カドゥはアホだから兎も角、朝丘は説明を聞いてなかったのか。
顕現により、大荷物のメスゴブリン『シリン』と俺の大本命『食料10日分改、レトルトカレー40食入りダンボール、カップラーメン20食入りダンボール』が俺達の前に現れたのだ。
「危ない!!」
低魔圧で倒れそうなシリンをシロリが助け様とするが支えられずに下敷きになるが俺はそれよりも2つのダンボール目を奪われ、ふらふらとダンボールに近づく。
まだだ、まだ中身の確認をしていない。
観測するまでは中身は不確定だ、このダンボールの中身が記載物通りなのか確定していない。
震える手でカップラーメンのダンボールを下ろし、開封して中身を確認し俺はグっと拳を握り笑みを浮かべる。
カレー、カレーがまだだ。
レトルトカレーのダンボールを開封して俺は天を仰ぎ歓喜の叫びを上げた。
「おおおーーーー!!! ィエスっ!! ィエス!!! イエーースッ!!
やったぜ! 今夜はカレーだぁーーーーー!!」
俺は拳を掲げ上げた。
食品業界に革命を起こし日常的に目にしていた、レトルト食品を手に入れた山本さん達ですが、問題はまだまだ山積みです。
ボディービルは作者 野上も良く知りません。
『サイドチェスト』とか『アブドミナル・アンド・サイ』とか『サイド・トライセップス』とか『モスト・マスキュラー』とかよう分からんです、ハイ。




