底辺のおっさんは、色々とアレなバイクを完成させた
下手な歌については置いといて、バックルとガーゴイルに共通する文字か模様が欲しいのだがイメージが湧かず、メモ帳にぐちゃぐちゃとそれっぽいモノのを書いているとリール王女がベッドに上がり俺の手元を覗き込んで来た。
「かみはたいせつなんだからイタズラしちゃダメなんだよヤマモト」
おおぅ、10歳かそこらの女の子に『メッ』ってされちまったよ、ハゲたおっさんが。
事案だよ事案。
「消せるから大丈夫やで、のじゃっ子」
「ほんとに」
「ホンマやで。なあ、モッさん」
「シャーペンだしな。なんならリール王女も書くか」
シャーペンと消しゴムをリール王女に差し出すと、リール王女は満面の笑みを浮かべて「リールもかく」と頷いた。
俺はリール王女が落書きしている間にガーゴイルの加工に取り掛かる。
俺は肩、首を切断して角度の調整と、ハンドルとシートの作成をする。
「マスター ヤマモト。シブ達の出撃準備が整ったが、直ぐにでも出撃させるのか」
ホルダーから報告が来たのだが、ぶっちゃけ今の時間が分からないので返事に困るな。
「マスター ヤマモト、竜帝の飛行速度ならば日没には戦場に到着すると思われる」
「なら明日にした方が良いと思うし、そろそろ晩飯って時間だろホルダー」
「マスター ヤマモト、了解だ。そのままシブ達に伝えよう」
「ほんならウチは夕飯の支度せんとな。モッさんは『滋養強草』汁やけどな!」
俺はホルダーとのやり取りを口に出していた様で、下井が再びニヤニヤと嗤いながらサムズアップを俺に向けやがったよ、鬼畜生め。
「『滋養強草』汁は兎も角、シブ達にはカレーでも食わせてやってくれよ、クソッタレな所に行くんだし」
「せやな、おじ様達はクソッタレな場所に行くんやしな」
流石の下井も戦場と言うクソッタレな場所に行くシブ達を思ってなのか、陰りのある顔で部屋を出て行った。
今、俺に出来る事は万が一に備えた装備の作成と新しい家族を迎え入れる事くらいだ。
「できたぁ!」
メモ紙に何かを書いていたリール王女が両腕を掲げて喜んでいるが、何が書けたんだろうか。
「きょうの魔術文字のれんしゅうおわり」
リール王女がメモ紙に書いていた、魔術文字とやらを覗いて見ると、良く分からん記号が並んでいた。
「なんて書いたのかな」
卯実も少し興味があるのか、リール王女が書き上げたメモ紙を覗き込んで来たのだが、俺同様に読めなかったみたいで、あっさりとリール王女に内容を尋ねた。
「んと、これがお日さまで、これが空なんだよ」
「そうなんだ、リールちゃん凄いね」
あー、うん、なんだ、卯実さんや、良く分からんけど取り敢えず褒めておこうと言うのは危険らしいぞ。
自分は覚えてなくても、子供の方は教えた事をしっかりと覚えていたりするから。
まあ、俺が覚えておけばフォロー出来るかもだし、リール王女は魔術文字の太陽と空を書いたと。
ん、待てよ。
記号の様な魔術文字で『太陽』と『空』と書いたのなら他の文字。
例えば『戦士』や『騎士』もあるのならば、ベルトの装飾に使えるかも。
「なあ、魔術文字で『戦士』とか『騎士』って文字や『大地』って文字はどう書くんだ」
「えっとね、こうでこうだよ」
メモ紙の裏側に『戦士』と『大地』を示す魔術文字をリール王女は書いてくれたので、俺はその日の内に、記号染みた魔術文字をフィギュアのバックル部分に書き込み変身ベルトを完成させ。
続けてガーゴイルの首、両手、両足、尻尾を切断して角度を変え、魔術文字の『大地』と『空』を書き込んだプラスチック粘土製のタイヤを取り付けてシルバーガーゴイルバイク形態も完成させた。
指がプルプルし過ぎて大変だったけどな!




