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底辺のおっさんは、無心になろうとします

 トイの杖を後頭部に受けて俺が痛みに悶えていると、卯実とトイが猫パンチ合戦をベッドの上で繰り広げ、リール王女が心配して俺の頭を擦ってくれる。


「おっきなこぶができてる。ヤマモトだいじょうぶ?」


 おっさんは幼女の優しさが染みて泣きそうです。


 理由は良く分からないが、ものの数日で随分と懐かれたもんだ。


 リール王女と始めて出会った時はクソ生意気で、語尾に『のじゃ』とか付けてたのだが、今では全く『のじゃ』と言ってないし、年相応の気遣いと優しさを見せている。


「ケンカしちゃダメ! ヤマモトはゲガしてたいへんなんだからあばれちゃダメなの!」


 じゃれあう卯実とトイをリール王女は叱りつけ頬を膨らませるのだが、あー、うん、なんだ、小動物みたく愛らしくて撫でくり回したくなるな、この子。


「リールちゃんの癖に生意気な。生意気な子はこうだ!」


 リール王女に叱られた為か幼児化の解けた卯実が一瞬でリール王女の背後に回り込み撫で回したり、くすぐったりと可愛がり出し。


「リール・ベルギアを確保します」


 卯実に続いてトイまでリール王女をくすぐり、撫で回し始める始末だった。





 ニスなどの仕上げ処理こそしていないが素人目にも出来が良いと分かる作業台をナミラさんに持たせてやって来た下井は、ニヤニヤと嗤い「へー」とか「ほー」とか言いながら俺達を見ている。


 ダメな目だ。


 下井のヤツの目は人を揶揄(からか)って遊ぶつもりのヤツが見せるダメな目だ。


「うーちゃんにトイちゃん、んでもって、のじゃっ子の3人と随分と楽しんどるようやねぇ、モッさん」


「蚊帳の外なのだが、俺は」


「あー、うん、なんや、モッさんの取り合いしとる娘らをニヤニヤ見て楽しんでたんとちゃうのぉー」


「リンカ様、お不山戯(ふざけ)が過ぎているかと」


 澄まし顔のナミラさんに嗜められてはいるが、下井のヤツがその程度で止まるはずも無く。


「おんや、ナミちゃん。ナミちゃんもモッさんが気になるのかにゃぁー」


 モノクソウザくなった下井がナミラさんの顔を覗き込む様に見上げているが、当のナミラさんは無言で済ましたまま。


「ナミラさんに絡むなよ、彼女は仕事なんだから」


「ハーレムやねぇモッさん。ねぇ嬉しい? ハーレム嬉しい? ハーレム手に入れた今どんな気持ちぃ」


「だから絡むなって! ハーレムとかってアホか」


「えー、本当は嬉しいくせにぃ。素直やないなモッさん」


 ニヤニヤと嗤い手当たり次第に絡む下井(アホ)なのだが。


 あー、うん、なんだ、そろそろ止めないと吊られるぞ、卯実に。


「あのさ、下井さん。ウザい」


 俺が思った途端、一瞬で下井の前に移動した卯実は下井の顔を掴み、片手で吊り上げて下井(アホ)を物理的に黙らせるのだった。




 下井のアホを卯実が黙らせた事で、ナミラさんが作業台をベッドに据えてくれたのだが。


 はい、すみません、本物のメイドさんに照れてしまいまして申し訳ありませんでした、卯実さん。


 だからそのじっとりとした目を止めてもらえないでしょうか。


「マスターは浮気者です」


 トイさんも無表情でそう言う事を言うのは止めて欲しいのです、はい。


「ヤマモトはお嫁さんたくさんだから、たいへんだね」


 まだ俺はお嫁さんを貰ってないザマスよ、リール王女殿下。


 卯実やトイに何か言うと泥沼にはまるのが目に見えてるので、俺は無心でフィギュアの塗装を落として行くのだが。


 ナミラさんや「ヤマモト様は後何人ほど奥様を貰うのでしょうか」とか、爆弾や燃料を投げ込むのを止めて貰え無いでしょうか。


 大体、複数の嫁を貰う甲斐性など俺には無いザンスよ。


「ナミラちゃんさぁ、普通は1人じゃ無いのかなぁ奥さんは」


 卯実さんや、声が怖いですよ。


「ヤマモト様ほどの方ならば複数の妻を持つ事は割とありますよ、ニノミヤ様」


 ナミラさんや、俺程度の人間はゼロが普通です、嫁の数は。


「ニノミヤ様、ヤマモト様は魔林山(まりんさん)を統べる王。


 お世継ぎの事を考えますと、もう5人はいてもおかしくはありません。

 現にニノミヤ様、トイ様のお2方がおられますので皆様のご勇名が広がれば増えるかと」


 あー、うん、なんだ、ナミラさん。来るとしても嫁じゃなくて介護ヘルパーさんの様な気がするのですが、魔力ゼロのおっさんですし、俺。


 ぶっちゃけ、自分1人で生きる事が出来無い俺が良いと言ってくれる奇特なヤツは家族くらいなもんで、嫁に来られても面倒見きれない。


 そんなこんなで、姦しい女性陣の会話を聞きながら、改造予定の『ノーマルゴブリン』2体と『ダークエルフ』の塗装を落として終えて、本命の翼竜(ワイバーン)の塗装落としに俺は取り掛かるのだった。

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