底辺のおっさんは、再び開けられない
自分でそう加工しておいて言うのもなんだが、ハンドルやガチャの演出からトイが切り離されている事でトイの存在意義に疑問を持ったりもしたが、ベッドの上にはカプセルが11個転がっている。
やはり白のカプセルが多いな。
最低ランクの白いカプセルが6個、黄色いカプセルが1個、青いカプセルが2個、赤いカプセルが2個とかなり期待が持てる。
まずはランク5の赤いカプセルに俺が手を伸ばすと、その手は卯実に掴まれて止められた。
俺の手を掴んだ卯実は目を閉じて首を左右に振り無言で俺の行為を咎めるけど。
「ウチ赤とっぴぃ」
「そうだなぁ、折角だからオレはレッドにしょうかな」
「自分、白」
「オイラも白を選ぶっス」
「じゃぁボクも白にしょう」
「では某も白を」
「えっと、リールは青いの!」
「ならば自分は黄色であります!」
「ちょ、あ、アタシも青いの!」
「出遅れました、白です」
下井のヤツが赤のカプセルをかっさらうと、竹井君やシブ達、ヨウ、リール王女、アン、トイがカプセルを奪い、最後の白いカプセルを卯実が掴む。
ちきしょう、カプセルを開けるくらいしたっていいじゃないか、ちきしょう。
「うりゃっス!」
断りも入れずにシンがカプセルを捻って開け、中身を見せると外れの『ノーマルゴブリン』が入っていた。
「ゴブリンっスね。こいつも主に呪いを解いて貰うっス」
シンの言う通りに塗装は落とすけど、勝手に開けないでよ。
「開ける!」
いやね、言えって思ったけどさ、勝手に開けるの違うと思うんだよシゴさん。
シゴが開けた白いカプセルからは『ノーマルゴブリン』が出て2体目か。
「えい」
シロリ君、君もか!
「あ、変なのが出ました主」
シロリが開けカプセルからは輪っかのフィギュアが出て来たけど、指輪なのか腕輪なのか判別がつかないな、これ。
「ふん!」
シブさんや、そんなに力任せに捻らなくても開くから、ってかお前も勝手に開けるよ、泣くぞちきしょう。
「食料の様ですな」
シブが『食料10日分』フィギュアを見せると「ほぁちゃぁであります!」とアンのヤツが叫びカプセルを開けやがった。
アンの開けた黄色のカプセルからは世界観ぶち壊しの大型トレーラーが出て来たけど、車よりも走った方が早いよね君等。
ってか、なしてランク3で大型トレーラーが出るんだよ。
どう考えてもランク7の家具やランク5のポーチより上だろ、普通。
「山本さんこれは」
無言でカプセルを開けた竹井君が判断出来ずに中身を差し出したけども。
うん、俺も分かんねえ、それ。
白い段ボールのフィギュアで中身は不明と来やがったよ、何も書いてないから分かる訳があるか、ちきしょうめ。
「リールのはこれー」
フィギュアを掲げるのは良いけど、カプセルをポイ捨てすんなお子様。
リール王女の掲げたフィギュアは懐かしの『ダークエルフ』さんで、相変わらずアメリカンスタイルのヤバい顔だ。
日本人の感覚からすると、彫りの深いエイリアン顔でやっぱり顔がヤバい。
絶対に美形に見えないヤバさだ。
「アタシのは何かの器具ね、多分」
ヨウが差し出したフィギュアだけど、これは無い。
これも世界観ぶち壊しで絶対に無い。
チェーンソーは無いだろ普通! ってかラインナップを決めたの誰だよ! 世界観ぶち壊しだろが。
「あたしのはこれ」
卯実が差し出したフィギュアはガーゴイルだ。
卯実と出会う切っ掛けと成った青銅のガーゴイル。
「これってさ、あの時の怪物だよね」
卯実は思う所はある様だが、ここで航空戦力の増加はありがたい。
残るはトイと下井のだが、トイさんや、いつの間にか開けていますが、それをベッドの上にポイ捨てするのはどうかと思うのですが。
出たのはプラスチック粘土で当たりだろが、見た目つまらないのは分かるけど。
フィギュアの内容報告しないと思ったらトイは不貞腐れてたのか、全く。
「真打ち登場やで! 激レアさんいらっしゃーい」
下井、ご夫婦で出演する長寿番組じゃないんだからさ、いらっしゃーいは違うと思うのだが。
んでもって出て来たのは。
「ドラゴンやね、モッさん」
緑色の翼竜だった。




