底辺のおっさんは、頭を撫で続ける
シャルローネ王女が竹井君に読み書きを教えている様子で、邪魔するのも色々な意味で悪いから退散するべく俺は愛想笑いで謝辞して部屋を出ようとしたが。
「ねえ様、タケイどのとのけっこん。おめでとうございました」
俺と手を繋ぎ合うリール王女は部屋を出ようせず、シャルローネ王女の勢いで言ってしまった『我が夫』の件でシャルローネ王女と竹井君にお辞儀をした。
リール王女の祝福の言葉に竹井君はキョトンとした表情を浮かべ、シャルローネ王女は照れと羞恥で顔を真っ赤にして慌てふためき、声にならない言葉を発しながら右往左往し両手を振って暴れ始めて俺を見るけど。
あー、うん、なんだ、その自業自得と言う訳でシャルローネさんは自分でなんとかしてください。
俺にどうしろと言うのだ。
姉シャルローネ王女に祝福の言葉を告げて満足したのかリール王女に手を引かれて俺達が部屋を出てものの数秒後。
「ま゛ーーー!!」
シャルローネ王女の容量オーバーしたかの様な叫びが背後から聞こえたが気にしないでおこう。
俺とリール王女はホルダーの捜索に戻り、地下牢以外は回り終えたがホルダーは発見出来ず広場へとやって来た。
「ホルダーいないね」
ションボリと項垂れるリール王女の形の良い頭を俺は無言で撫でて慰めるのだが、明るい金色の髪は柔らかくサラサラで、妙に触り心地が良い頭してるなこの子。
「リールの事きらいだからホルダーいないの」
「ホルダーは無機物だから嫌っている相手だったら逆に嬉々として絡んで来るって」
不安気に俺を見上げるリール王女に対して俺は笑顔で答えてやると、リール王女はきょとんとした表情で首を傾げて見せた。
あの魔杖なら嫌っている相手が頼み事をして来たら、間違いなく相手が泣くまで責めたてるだろうななぁ、あいつサディストだし。
外に出たのは良いが、ホルダーの行方に心当りがある訳でなく、俺達2人共に土地勘も無く案内人すらいないし、リール王女は文字が読めるかも怪しい。
どうした物かね。
「ヤマモト、おしばい! おしばいするみたいだよ!」
余りに撫で心地が良くて無意識に撫で続けている俺の腕を引き、リール王女は広場の一画で弦楽器や管楽器の様な物を軽く鳴らしたり、確かめる様に声を出している連中を指で指し示していた。
この世界だと大道芸みたいな辻芝居が一般的なのだろうか、舞台とかもないし服装もそこら辺の人と変わらず衣装とかもないみたいだが。
「あの人たちみたいなの、たびのいちざってナミラが言ってたんだよ。すごいよね、どんなおはなしするのかな」
辻芝居の準備をしている連中は旅の一座だと俺に伝えて、興味津々で連中を見つめるリール王女の頭を俺はポンポンと軽く叩き、見て行くかと尋ねるとリール王女は満面の笑みを浮かべ「うん」と元気に答え頷いた。
まぁ、芝居が終る頃には竜帝も下井達を連れて来るだろうし、リール王女も芝居で寂しさが紛れてくれて何よりだ。




