底辺のおっさんは、姉妹の人気に感心する
ホルダーによって強制的に知識を頭に流し込まれて呻く女将さんを尻目に、俺は火が着くほどの酒を一気に飲み干して潰れた面々を介抱するヨウをテーブルに頬杖を突き眺めている。
ちなみに女将さんにはイットゥーとソウセキがついているから問題無いだろう。
「ホルダー、竹井君に馬車か台車で迎えに来て欲しいと連絡してくれないか、もうここに用は無い」
「そうか、了解した」
ホルダーは何故か寂しさが感じられる返事をし竹井君を呼んでくれたが、割とすぐにアンとナミラさんが俺達を迎えにやって来て、未だに混乱し続ける女将さんを椅子に残し、俺達は酒に潰れた面々を荷馬車に運んび店を後にした。
まあ、テーブルにナミラさんから借りた代金を残して行くと言う情けない去り際ではあるけど。
女将さんの店からアンが牽く荷馬車に乗って通りを行くのだが。
「おう! 持って来なへっぽこ騎士」
八百屋っぽい店のおっさんがりんごを放り投げて来たり。
「アンちゃん、これ持ってお行きなさいな」
肉屋っぽい店のおばちゃんが干し肉を放り投げ。
「おっ、アン! 残り物だがナミラちゃんと食べな」
パン屋の女将さんがフランスパンの様なパンを投げ、アンの顔面に直撃したり。
「あっ! おーいアーン! みんなー、間抜けのアンが帰ってきたぞー」
石造りの店の屋根から10歳くらいの少年が手を振っていたり。
持ってけ、持ってけ、と荷馬車に野菜やらパンやら肉やら兎に角お裾分けが投げ込まれ、それにアンとナミラさんが応えるから帰路は全然進まない。
やっとの事で広場に到着したが荷馬車はアンとナミラさんに送られた差し入れが山積みになり、酒に潰れた面々はそれに埋められていた。
まあ、頭は出てるから死にゃしないだろうが、絵面が酷いな。
「それにしても、ちょっと凄いわね、この量」
荷馬車を押すヨウが差し入れられた品々に感心している。
確かに凄い人気だったな、アンとナミラさんの姉妹は。
へっぽことかダメとか間抜けとかアンは酷い言われ様だったが悪意や見下した感じは無く、なんと言うか親しみが込められ感じで悪くなかったな。
「全く持って失礼しちゃうのでありますよ、もー」
「好かれてるのですから良いじゃ無いですか、姉さん」
「真帝国の将軍をぶっ飛ばしたのは自分でありますよ! それなのに皆様方は『あ! へっぽこアンだ!』とか『ダメっ子アン』とか失礼しちゃうのでありますよ。
ナミラは『ナミラちゃん、家の嫁に来ておくれ』とか『アンの世話は大変だろ、持ってきな』とか誉められて! 自分がおねーちゃんなのでありますよ!
それなのに皆様方はヤマモト殿達が見ている前で、へっぽこ、へっぽこと。自分のイメージが崩れてしまうのであります!」
へっぽこと言われて憤慨しているがアン、俺のお前に対するイメージは元から『へっぽこ』だ。




