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底辺のおっさんは、見失う

 シャルローネ王女に調査する許可はもらった訳だし、偉いさんにケチつけられる前に調べるとしますか。

 

 まずはこの館を調査するとして、調べる内容は魔法的な仕掛けの有無だな。


「マスター ヤマモト、この館には儀式系魔術は仕掛けられていない。

 また、上空から視た際に儀式系魔術の形跡は無い」


 はい、何時もの報告(ホウ)連絡(レン)相談(ソウ)のし忘れですね、こんちきしょうめ! 先に言ってよこの無機物(ひとでなし)


 ホルダーからの報告で下井達と連絡を取るくらいしかやる事が無くなったから、連絡を。


「マスター ヤマモト、ミス シモイ及びイクセルに連絡済みだ」


 あー、うん、なんだ、仕事が速いのはとても良い事だけどさ、ちゃんと報告(ホウ)連絡(レン)相談(ソウ)! しようよホルダー先生!

 俺が言う事が無くなっちゃたじゃないか! どうすんだよこの状況。


 シャルローネ王女が俺の前で片膝を着き、アンが「話を聞いてるのでありますか」と喚き地団駄踏み、シブ達は項垂れているこの状況を本当にどうしよう。


「ねえ、やる事が終わってるなら解散で良くない? まだ日もあるから近場を観光したいんだけど」


「それだ!」


 俺の袖を引き見上げる卯実の提案を即座に賛成し、袖引く卯実の手を両手で握り感謝を示すと彼女は頬を赤らめて顔を背けた。


 自惚れかもだけど照れてるのか、卯実さんや。





 取り敢えずあの場は王様や下井達が来てからと解散し、俺達は街の見学に出ているのだか、卯実やトイが一緒なのは良いとして、ヨウとホルダーが一緒なのもまぁ良い。


 案内や世話をしてくれるナミラさんや、トイの玩具(オモチャ)扱いのヨンタやマキが一緒なのも分かる。


 でも、アンとリール王女と子供達が一緒なのは何故?


 そのせいか卯実とトイが物凄く不機嫌そうなのだが、卯実に支えられて歩いている俺にどうしろと。


 ベルギアの首都である王都ベルギアは王家の館を中心にして丸を描く4つの区画と新しく出来た外縁部の農地が(おおぎ)状に広がっているとの事。


 また、シャルローネ王女が団長を務めていた騎士団は王都や近隣の村を巡回する警備が主な仕事だったとナミラさんが大通りに出るまでは説明してくたのだが。


「この東地区は商店が建ち並ぶベルギアで最も栄えた地区で、国々を巡る行商人や放浪者や旅人が立ち寄る宿や酒場などもあるのであります」


 大通りに出た途端に、俺達の先頭を得意気に進むアンがこちらも見ずに説明してくれているけど、俺を支えて歩く卯実に睨まれ、隣を歩くトイはアンの背中から視線を外さず手首だけでヨンタを振り回していて地味に怖いのだが。


「昼間は各地区の検問まで乗り合い馬車が出てるのでこのベルギアでの移動は楽チンなのであります」


「すげー」


「ばしゃのりたーい」


「ねーちゃんすげー」


「リールもしらなかったのじゃ」


 アンの後ろや前をチョロチョロしながら騒ぐリール王女と子供達に羨望の眼差しを受けてアンは調子に乗ってる様だが、不安で仕方が無い。


 何せへっぽこアンだしな。


 お隣の家まで10メートルな北地区とは違い所狭しと石造りの建物やボロい木造の建物が建ち並び、その大半が何らかの商店の様だが、夕暮れ時の今はどの店も片付けをしている。


「もう少し先に自分のオススメの店があるのであります。

 その店のスープはなかなかの物でありますよ」


 案内する店がある方向をアンが指差すとリール王女が「おみせまできょうそうなのじゃ」と言い走り出した事で子供達もリール王女を追い掛けて行った。


 微笑ましい光景ではあるが、リール王女は店の場所を知っているのだろうか。


 って知る訳がない! 乗り合い馬車が出ている事を知らないって言ってたし!


「ホルダー! リール王女と子供達を止めてくれ」


 まばらとは言えど人通りもそれなりにある為、既にリール王女達を見失っているが、ホルダーやヨンタの念話ならどうとでもなるはずだ。


「む、マスター ヤマモト、厄介事の様だ。

 クソガキと子供達が酔漢どもに絡まれている」


 一寸(ちょっと)待て、絡まれてると言うが見当たらないぞホルダー。目を離したのはものの数秒だぞ。


 俺は辺りを見回してリール王女を探すがそれらしき姿は見えず、通りで騒ぎが起きている様子もないのだが。


「トイ、ヨンタを卯実に渡して。卯実はヨンタのナビでリール王女達の所に向かってくれ」


「もー仕方無いわねー。邪魔ばかりして!」


 無言のままトイは手首のスナップだけでヨンタを卯実に投げ渡し、受け取った卯実は不満を口にしつつもスキルで全身を発光させて走り出した。

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