底辺のおっさんは、へのへのもへじの絵を描く
今回は時間が進みます。
「ちゃんとした人間だモン!!」
モン言われても···
「卯実ちゃん、一寸落ち着こ?」
「だって山本さん、あたしの事『謎生物』とか『へのへのもへじ』顔って思ってるんだモン!! それだからあたしを悪モンにしようとしてるだモン、ヒドイよ」
あーそうかそうか、そうだった俺の記憶を見てんだよこの娘は。
「卯実ちゃんの言う『へのへのもへじ』が何かは分から無いけどそれを許したく無い、で良いのよね?」
「違うモン!! ちゃんと人間扱いして欲しいだけだモン!!」
モンモン五月蝿ぇなぁ、大昔のサル漫画のタイトルかよ。
「マスターヤマモトは自分に引け目があるのだから話を聞けと言った所か? ミスニノミヤの要求は」
ぇ、あれで分かるのかよ?
「あのさ二ノ宮さん、確かに俺は女子高生の事を『謎生物』と思っている。
何を考えているのか全く分から無いし、二ノ宮さんの学校では『ボーナスハゲ』とか呼ばれているそうで俺の事を人間として扱っていないのはお互い様だと思う。
そこでだ、お互いを知る為に認識の擦り合わせをしないか? まずは『神を名乗る奴』とどう言ったやり取りをしたかで」
二ノ宮さんが小さく頷くのを確認して、俺は新しいタバコに火を着けた。
まず俺から『神を名乗る奴』とのやり取りを話して聞かせた感想は。
「山本さん、変。
フツーは死んだらパニクると思う」
そっかーチートの確認とかすんのは変かーって、当たり前だな。
何であんな感じだったんだ俺?
「でも、あたしが即死じゃ無いからかも。
窓ガラスで片脚が失くなって身体が燃えてたの覚えてたし」
俺は事故の時、半分寝ながら『ニャロウ小説家め!!』でチート転生物の『ソードバスター山川』のラストを読んでた様な気がする。
よし、あの時の俺は寝ボケていた事にして置こう。
「成る程ね、それなら平然としていられないな」
「気を失った後、山本さんの言う『神を名乗る奴』に全部忘れて生まれ変わるか、異世界転移? て言うのかを選べるって言われて、元に戻してって言ったら死んでるから無理だって言われた。
良く覚えてないけど」
「多分だけど、ホルダーの予想通りかもな。
ホルダーの予想だと二ノ宮さんが『忘れたく無い』とか『ダンサーに成る夢』とかを『神を名乗る奴』に伝えた事でその内容から『異能』が選択されたのではないのかって事だ。
ホルダーは『記憶強化』か『身体強化』じゃ無いかってさ」
「嘘、勝手に決められたの?」
「多分だけどね。
記憶の方は確認出来ないけど『身体強化』の方はなんとかなりそうなんで、二ノ宮さんが望むならホルダーに頼んであるから教えて貰いな」
「ありがと、でもね、あたしはちゃんとした人間だからね山本さん」
「『へのへのもへじ』な顔では無い事はしっかりと認識してるよ、二ノ宮さん」
「むー」
頬を膨らませ不満をあらわにしてから二ノ宮さんはクスクスと笑った。
で「マスター『へのへのもへじ』とはなんですか?」とトイが質問して来たので、地面に描いてやると「随分と印象深い顔ですな」とか「ここら辺をこうして、この部分をこうすると」とか「なかなか愛嬌があるっスね」とか「イットゥーさん、絵が上手いですね」とか「主殿の元いた世界の文字を組み合わせた絵ですか···興味深いわ」とか「自分、描く」とか「この絵は後世に残さねば」とか、まぁ好評だった。
『へのへのもへじ』が好評だった一夜から20日過ぎ、俺達の生活は色々有りながらも、日に日に向上している。
洞窟に『へのへのもへじ洞窟』とゴブリン達に名付けられたり。
洞窟の周囲の邪魔な木を間引きしたり。
シロリのバスターランチャーの射程距離が分かったり。
バスターランチャーの射線上の木が消滅したり。
残っていた木の根を掘り出して道を作ったり。
俺が何処かの魔女の一撃を受けたり。
二ノ宮さんがレディヲ体操とストレッチを毎朝やり出したり。
トイとゴブリン達も体操を毎朝やる様に成ったり。
俺だけ体操とストレッチで息が上がったり。
俺だけ筋肉痛で呻いたり。
周囲の探索をしたり。
俺だけ迷子に成ったり。
トマトを発見したり。
トマトは此処ではマトマと言う名だったり。
二ノ宮さんの異能が『身体強化』と判明したり。
『身体強化』が使える様に成った二ノ宮さんが『ノーマルゴブリン』を悲鳴を上げながらビンタの一撃でブッ殺したり。
二ノ宮さんが『身体強化』で魔力を使い過ぎて、低魔圧でヘロヘロに成ったり。
二ノ宮さんが命のやり取りを割り切ったり。
二ノ宮さんがヨウから借りてるナイフで踊る様にオークを斬り殺したり。
俺が『ノーマルゴブリン』にボコられたり。
トイの魔力チャージ量が298に成ったり。
顕現のクールタイムが明けたり。
生活用品のセットが『異世界の新生活応援セット』と言う名前だったり。
『異世界の新生活応援セット』を顕現したが閃光を発しなかったり。
俺と二ノ宮さんが寝袋の取り合いをしてたらトイに使われてたり。
川辺でボロボロの男女に出会ったり。
その男女と今、対峙している。
以下ものクソどうでも良い事
山本さんが死に際に読んでいた『ニャロウ小説家め!!』にて公開されている『ソードバスター山川』は剣が中心のファンタジー世界で有効射程距離、作者の都合、総弾数、作者の気分次第な魔銃『ケルベロス』と『フェンリル』を手に冒険する16歳の少年『山川海都』がゲスに成り下がるチーレムな物語。
人妻を寝盗ったり、奴隷商から好みの少女達だけ拐ったり、女騎士との一騎討ちに勝って『くっころ』男優に成ったりな頭の悪い内容だったが作者が飽きた為、いきなり現れた魔王を倒す旅に出て魔王四天王の一人を倒した後。
四天王1番「シバンがやられたようだな···」
四天王2番「フフフ···奴は四天王の中でも最弱···」
四天王3番「人間に倒されるなど四天王の面汚しよ!」
以下略
某ギャグ漫画の作中作のパロディーで物語は終わった。