底辺のおっさんは、悩む
化け物亀の黄金の骨が輝きが増して行き、シゴに向けられた。
俺の脳裏を掠めた収束砲と言う単語に不安を覚え「やらせるな!」と叫んでしまい、映像を眺めていたリール王女や王様を驚かせてしまったが、気にしている余裕は無い。
もしあれが『収束砲』だとすればヤバい。
エネルギーを集束させて射ち出す兵器『収束砲』の威力は未知数だが、弱い訳が無い。
何せ『みんなの力を1つに』って言う不山戯た攻撃だ、やる分には良いがやられた方は堪ったもんじゃない。
化け物亀は現に守りの要であるシゴを狙っている訳だし、あれだけ勿体ぶってグロテスクなモノを見せて来たんだ桁外れの威力があるはず。
俺の叫びに応じてか、イットゥーの放つ無数の矢が化け物亀の側面を襲うも、羽根と翼に迎撃されて、ソウセキが手から放ったビームは翼で受け止められた。
「某の突きを止められるものならば、止めてみよ!」
棒の端を揺らめかせていたシブが棒をピタリと止め、普通に化け物亀に向けて突き出すと、何故かシブの突きは化け物亀の顔面にぶち当たった。
シブの突きを頭部に受けた化け物亀は背中から倒れてじたばたと手足を振り回してもがき、立ち上がろうとするが、しょせんは亀。態勢を立て直す事が出来ずに足掻いている。
「流石はおじ様やね。見えないパンチならぬ見えない突きやね」
頻りに下井が頷きながらシブの突きを評価しているが『見えないパンチ』ってなんだったっけ?
「腕が動いていない様に誤認させる必殺パンチじゃない!
やるわね、ゴブさん」
テーブルの上で上半身くねくね動かしながらパンチを出す人形が説明臭い事を言っているが、ウチの面々は大多数が『ゴブさん』なのだが。
何にせよ、この状況なら化け物亀がどこかの怪獣の様に横に高速回転しながら飛んだりでもしない限りは大丈夫だろう。
しっかし、なんか気が抜けたな。亀やダンゴムシ同様に自力で起き上がれないなんて、出オチかよ、この亀。
映像のみんなと同様に気が抜けた俺は卯実達の状況を尋ね様として化け物亀から注意を反らしてしまった。
何故、ヤツが腹から翼を生やした化け物亀だと目視しているのにそれを忘れたのだろうか。
俺は今更ながらに生き物が死ぬ様を見たくなかったのかも知れないない。
下井の悲痛な叫びに俺は驚き、再びシブ達の映像を見るとシゴの障壁が消え失せ、化け物亀と戦っていたみんなが倒れている。
棒を支えになんとか立っているシブと、ソウセキの魔法で被害を逃れたのかイットゥーとソウセキの3人だけが確認出来る。
敵である化け物亀はと言うと、当たり前の様に飛んでいる。
俺達は、翼がある以上あの化け物亀が飛べる可能性があるのに飛べないと決め付けていた。
「発火」
人垣の内側にいたヨウが魔法で爆発を起こすが化け物亀は健在だ。
それどころか再び金ぴかの骨が輝き始める。
「カドゥは治療!イットゥー、ソウセキは牽制と迎撃!」
叫ぶ様な俺の指示にイットゥーとソウセキが即座に攻撃を仕掛けるが、全て化け物亀の羽根に迎撃されてしまった。
倒れているみんなの治療を頼んだカドゥは人垣が邪魔で進めずにいるし、カドゥと同様にシロリも人垣が邪魔で射線が確保出来ずバスターランチャーを撃つ事が出来ない。
人手不足で広範囲防御手段や遠距離からの間接攻撃手段に乏しい俺達の弱点を突かれた形だ。
制空権を得た化け物亀は収束砲のチャージを悠々と続けながら広範囲に羽根を飛ばしイットゥー達の動きを封じて来る。
ソウセキが作り出す氷の壁で倒れているみんなやシブはなんとか無事だが、このままじゃ収束砲の餌食だ。
どうする、どうすれば切り抜けられる。




