底辺のおっさんは、最弱無敵らしい
酷い絵面だ、ライガーに変身したアンの必殺技とかは良いとしても、相手の大男の現状が酷過ぎる。
ひび割れ、地味にすり鉢状になっている地面はまぁ良い。
倒れた敵に背中を向けて歩き出すのも、変身を解くのも安全面では無しだが、様式としてはアリだ。
何が酷いのかと言うと、倒れた敵が酷過ぎる。
チート臭い大盾の効果で外見上は傷1つ無いが、三半規管やら胃やら脳やらは無事と言う訳で無くこうして気絶しているのだが、なして全裸。
うつ伏せだからアレは見えていないけど、盾を持った全裸の大男とか変態臭が酷過ぎだろ。
格好つけながら立ち去ろうとするアンなのだが、その眼前にボロボロの黒いエプロンドレスを着た少女が仁王立ちで立ち塞がり底冷えしそうな冷たい目でアンをみていた。
「姉さん、貴女は、何を、して、いるの、ですか!
無駄に頑丈なだけしか取り柄の無い姉さんが真帝国の軍団長と戦うなんて!
それになんですか! さっきの格好は!
姿がコロコロ変わったり、魔術の使え無い姉さんが魔術攻撃で真帝国の軍団長を吹き飛ばしたり、身体強化を全身に発現させたり、無事を知らせなかったり、逃亡したシャルローネ殿下が竜を連れていたり、奇妙な白いゴブリンがいたり、王族の方々を連れ去った柑橘類みたいな顔の人がいたり、姉さんが軍団長を倒したり、軍団長が全裸だったり、止めをしっかり刺さなかったり、いきなり姉さんが現れたり、いきなり姿が変わったり、全部説明してください姉さん!」
「あー、うん、なんと言うでありますか、1度に言われましてもどこから答えるべきか分からないのでありまして。
あと、近すぎるのでありますよナミラ。
目が怖いのであります」
詰め寄られてしどろもどろになったアンに対して周囲の人々が反応するのだが。
「やっぱりアンよ!」
「ああ、あのダメっぷりはアンだ! 間違い無い!」
「いつもナミラちゃんに叱られてるアンちゃんよ」
「こんなへっぽこダメダメなヤツはアン以外にいない!」
「後先考えずに飛びだしても締まらない姿はアンに間違い無いぞみんな!」
駄目さでしか周囲に認識されていないとか、おっさんは涙で前が見えませんよ、アンさん。
「シブ兄さん、盾を回収して縛り上げといたよ」
誰もがアンに注目している中、不意にシロリが大盾を掲げながら現れて周囲の注目を集めてしまい、再び人々がざわめきだしてしまった。
シロリ君、空気を読まずに出たりすると注目されてしまいますので注意しましょうね。洋館に入れねぇなこんちくしょうめ。
あと、全裸野郎から略奪するとか鬼か君はって小鬼かシロリも。
結局、シャルローネ王女が説明やら紹介をする事で騒ぎは収まったのだが、なんすか、その痛々しい2つ名は。
『白根白鬼将のシブ』とか
『光壁光盾のシゴ』とか
『赤風青斬のシン』とか
『轟砲擊波のシロリ』とか
『万魔妖擊の天魔ヨウ』とか
『神言狂乱の使徒カドゥ』とか
『晴天の化神たる正義の味方 竹井 猛殿』とか
あー、うん、なんだ、もう止めて、おっさんは激痛がしてなりません。
シャルローネ王女の側にいたみんなも崩れ落ちてるし。
「き、聞きたい様な聞きたくない様な、シャルローネ、怖い娘」
下井のヤツがどこぞの少女漫画のライバルみたいな顔で戦慄してるし、本当、勘弁してくれ。
「一騎当千の勇者達が集う『へのへのもへじ洞窟』の主にして最強の放浪者団『へのへの一家』の長、最弱無敵の山本 正殿の助力を得て私は邪竜平原の王竜帝とともに王と成りに舞い戻ったのだ」
シャルローネ王女、最弱無敵ってなんすか。
おっさん、もう死にそうですよ。
あえて文字壁を作ってみました。
m(_ _)m




