底辺のおっさんは、謎生物JK二ノ宮と会話するようです
やっとこさ、謎生物JKの名前が出ます
「まずは君から飲むんだ」
俺はどろりとした青い液体で満たされた木皿を謎生物JKの前に差し出す。
『滋養強草』を磨り潰したクソ不味い汁を差し出したのは、別に嫌がらせと言う訳では無い。
ろくにメシを食って無いであろう謎生物JKに固形物を与えて腹を壊されたら事だ、余計な手間を減らすべく差し出したに過ぎ無いのだよ。
俺の後だと『キモい』とか『ハゲが移る』とか『変なモノ入れてる』とか『ハゲの使った汚い皿でぇー』等と言われる可能性が異常な程にあるとか、不味い汁を後回しにしたいとか、運が良ければ飲まずに済むとかでは無く完全な善意だ。
善意ったら善意なのだよ!!
「2、3日食って無いから魚や肉はヤバいだろ? 薬と思って我慢して欲しいのだが、嫌かい?」
「あの、あたし、怪物に襲われる前まではトマト食べてたんで大丈夫ですよ、襲われたのも半日位前だし」
あんですと? トメーィト? 食べてた? 何処でよ? あーうーあー何だね、するってーと俺がクソ不味い汁を飲まされてる間、チミは真紅の実、トメーィトを貪り喰らっていたと? うむ、そのトマトのある場所を教えなさい、情報の報酬として『滋養強草』の汁を進呈しよう。
「あ、でも川の近くとしか分からないんです。
怪物から逃げてたんで」
クソ役立たずが!! あーもートマトうらやまし過ぎだろが!!
「川の近くっスか? なら明日はそのトマトとか言うのを探すっスよ、お宝探しっス」
「トマトってどんな食べ物なんだろうね? 見つけるの楽しみだねシンにいさん。
あ、お姉さん、これ焼けましたのでどうぞ」
ポジティブな奴等だな、いや、マイペースなだけか?
「えっとシロリ君だったよね、魚ありがと」
「いえいえ、どういたしまして。
沢山ありますから、遠慮せずにどうぞ」
「そうっス、腹ペコじゃ力が出ないっスからねーさんもたんまり食うっスよ」
これこれチミ達、勝手に餌付けをするんじゃありませ···ん? 何でシロリの名前を知っている?
「主、如何なされました? その様なお顔で?」
「む、もしや小娘の異能か!! 神たる我が主に異能の力を仕掛けおったな不埒不遜の小娘風情が!!」
「違うから座る、ただ疑問が湧いただけだから落ち着いて。
カドゥが思った様な事じゃ無いからさ、落ち着こうよ。
あー、なんだ、悪かったねえーっと」
「二ノ宮卯実です、山本さん」
「二ノ宮さんね······待て、何で俺の名前を知っている」
俺が謎生物JK二ノ宮を睨み、ズボンの尻にあるカッターに手を伸ばすとトイとヨウ以外のゴブリン達の空気が変わり臨戦態勢に入るが。
「マスターヤマモト、ミスニノミヤがマスターヤマモトの名を知っているのは、私がこの世界でのマスターヤマモトの記憶を体験させたからだ。
結果として我々の情報をミスニノミヤは得た事になる。
マスターヤマモトのプライバシーを侵害した事は謝罪しよう」
ホルダーの念話が伝わりゴブリン達は臨戦態勢をといたが、シンとカドゥの2人は小刻みに震えていた。
「えっと、その、ゴメンなさい?」
「別に構わないさ、二ノ宮さんも知りたかった訳じゃ無いだろ? ハゲたおっさんの事なんざ。
なんてーか、こっちが謝る方だ、ゴメンな嫌なモノ見せて」
「いえいえ、あたしの方が悪いんですよ。
助けてくれた山本さん達に酷い事を言ったりしたし」
「じゃ、相子って事でイイかい?」
「え、はい···じゃ無いし、助けてくれて、ありがとーございました」
「その場の勢いで助けただけだから」
「知ってますけど、助かりましたんで、ありがとですよ。
ご飯もゴチになってますし」
シロリがなー、俺じゃ無いけどなー、頭下げんなー。
「「ホルダー!! 今日と言う今日は許さん(っス)」」
いきなりシンとカドゥが立ち上がりヨウを指差し怒鳴った。
「主を一体何だと思ってるっスか!!」
「神たる我が主に対し不敬不遜不埒なぞこの我が許すと思ったか目玉風情が。
不埒な目玉の無礼を見逃すなど、否!! 否!! 断じて否ーぁぁぁ!!」
「マスターヤマモトを何と思っているかについては、担い手ヨウのマスターであり信用する友人だと思っている。
私個人はマスターヤマモトに使役されている訳では無く、マスターヤマモトが使役するヨウに使役されている存在であり、君たちの様にマスターヤマモトの下に着いた訳でも無い。
これはマスターヤマモトが私の作成時にヨウの所有物として作成した為だ、そこに私個人の意思は無い。
広義上はマスターヤマモトの意思よりこの様な関係が成立し、そこに上下は無い。
だが、マスターヤマモトに創造主としての敬意は多少なりともはあるが故に『マスターヤマモト』なのだよ。
もしカドゥの言う様に不敬不遜ならば私はマスターヤマモトの精神を破壊し支配下に置いていただろう。
その様な場合、君たちは間接的ではあるが私の支配下に置かれる事となるのだが?」
「はい、そこまで。
ホルダーは二ノ宮さんにも謝っておけよ、悪気が無いなら特にだ。
後、シンとカドゥ。
今はメシの時間だ、ケンカなら後で他のモンに迷惑を掛けない範囲でやれよ」
「べ、別に気にしてないですよぅ」
はい、そこの謎生物JK二ノ宮、目を反らさないの、ホルダーが苦手なのは、ほぼ全員だから。
「主が言うならここは引くっス」
「神たる我が主の恩赦に感謝せよ、目玉風情」
はぁー、話進まんだろ、めんどくせーなぁ。
「えっと、あたしがあの電車に乗ったのは確かに遅刻で、ですけどたまたま前の晩にダンスの練習にイイ場所を見つけて、たまたま普段より遅くまで練習して、たまたまスマホの充電を忘れて、たまたま寝過ごして、たまたまあの電車に乗ったんで遅刻魔じゃ無いですよ、あたし。
後、山本さんが高校の女子に酷い目に遭わされるのって、山本さんが『ボーナスハゲ』って呼ばれてて、声を掛けられたら犯罪者扱いするとイイ事があるって噂があるんですよ。
ですから、そのゴメンなさい。
山本さんがいたんであんな事を言っちゃいました」
『ボーナスハゲ』って何だよ!! 御陰で駅員に「アンタ、又か」とか言われたんだぞ、こんちきしょうめ!!
「良か無いけどイイとして頭を上げてくれるないか? 二ノ宮さんに聞きたい事があるんだ。
二ノ宮さんに聞きたい事は二ノ宮さんが転生の時に何を望んだかだ。
望んだ異能次第では此処でお別れになる。
ホルダーに聞くより、二ノ宮さんに答えて貰いたい」
俺の質問に謎生物JK二ノ宮は困惑した表情を浮かべた。
トマトは見つかるのだろうか?




