底辺のおっさんは、再び突き飛ばされた
今更ながら気付いたけど、戦場で動けずに放置されたら間違いなく死ぬよな。
卯実は斬ったり刺したりはしていないが、身体強化スキルで全身発光した状態で殴り、蹴り、引き倒し、振り回し、投げ飛ばした訳で。
あー、うん、なんだ、10トン車とかに轢かれた方がマシなレベルの重傷者だらけで動けるヤツが殆どいないのだが。
ある者は金属っぽい甲冑が陥没してたり、又ある者はくっついているのが不思議な位にペタンコに潰れた腕とか脚のヤツがいたりしてるし。
「あー、うん、なんだ、卯実さんや。その辺にしてあげてよ、ヤツ等が作った水溜まりが川になりそうだし。
ホルダー、敵さん達に降伏するように伝えてくれ」
「止めたくったってこっちに来るんだし! 彼奴等が来なければ、あたしも手を出さないわよ!」
俺はホルダーを通じて卯実に戦闘を終了する様に告げるのだが、卯実は手近なヤツをぶん投げてから言い返して来たので、ホルダーに敵全員に降伏勧告をしてもらうと意思表示出来る連中はこぞって降伏したのだった。
さて、ここからが問題だ。何せ敵兵の大半が行動不能なので連れて戻るにしても手が足りず。かと言って放ったらかしにすれば動けないのだからヤツ等は確実に死ぬ。
俺が提案出来る手段は『ヨウに治療して貰う』と『救出した砦の衛兵達に護送して貰う』ぐらいしかし出ない。
「取り敢えずヨウは捕虜が死なない程度に治してやって。カドゥにもそっちに行ってもらうから。シドはカドゥを拾いに来てよ、アンに連れてってもらうのは不安しかないから。
卯実とシロリはカドゥが着くまで待機しててよ。そんじゃまぁ、行動開始って事で」
あのへっぽこじゃあどこに行くか分かったものじゃないし。
卯実達に指示の様なものを出し、俺はカドゥに敵兵達の治療を頼みながらシドを迎え入れる為に外へ出た。
「マスター ヤマモト、またトラブルだ。真帝国の指揮官が正式な捕虜としての権利を主張し出した」
え、あの惨劇で無事だったヤツがいたの!
卯実達による一方的な暴行で無事なヤツがいる事に俺は驚き戸惑ってしまい、俺の後ろを歩いていたリール王女は俺の背中にぶつかり、俺は背中を突き飛ばされた様に倒れ、下井のヤツに爆笑されたのだった。
ただ子供が背中にぶつかっただけなのに何故! それともリール王女は怪力キャラなのか?




