寝て待つハゲと地味なヤツ
あれ達と連絡を取り移動先が決定したのだが、俺達の移動速度は遅い。
かなり遅い。すごく遅い。笑いそうな程遅いのだった。
今までは脳筋達がアホみたいな速度で駆け抜けていたが、今回は俺と下井の負傷が原因で陸路を駆け抜ける手段が取れず、空路は何があるか分からないし、人数の制限が大きい。
現在はカドゥが1人で豪転號をひいている。
シブ、シゴ、シンは目視可能範囲で先行し、卯実、竹井君、ヨウが豪転號の直衛に着き、シロリ、シド、アンは空から警戒中だがなアン、その金ぴか鎧がまぶしいくて下井がうるさいのだが何とかならんのか?
アンが最高速度で飛べば1時間と掛からない距離でも陸路を慎重にゆっくり進むと時間がかかり、ホルダーの予測だと夕方辺りには目的地に着くとの事で。俺は昼寝でもして暇を潰す事にした、と言うか安静にしていないとな。
ソウセキの魔術で姿を消したまま壁を登り切り、壁の内側を覗くとそこには、畑と厩舎、兵舎と思われる木造の3階建て、指令部と思われる石造りの2階建てが目に着く。
規模からして兵舎は主達のいた世界で言う体育館と言う運動施設と同等の大きさがあり、個室で100人は収容出来そうですが、この砦だけでベルギア王国の兵士を半数近くは収容出来るでしょう。
ベルギア王国の兵数は約500名、交代利用して寝るだけならば300名は室内に収容出来る規模だが、一体何と戦うと言うのだろうか?
まぁ、私が気にする事では無い。今はシャルローネ王女達の居場所を探らなければ。
「イットゥー、どうするにゃ」
「そうですね、日が高い事もあってか巡回も無い様子ですから監視塔から内部に潜入しましょう、その後は石造りの建物、おそらく指令部に進入しますよソウセキ」
私の背中にしがみついているソウセキに予定行動を伝え、私は壁の角にある3つの監視塔へと駆け出した。
砦そのものはなかなか立派なのですが詰める兵士の質は酷い物で、最上階で監視任務に着く兵士が3人いるのだが彼等は監視任務の重要性を理解していない。
1人は居眠りをしており、残りの2人、中年と青年の兵士は粗末な椅子に腰掛けて性的な会話に花を咲かせていた。
「偽物んなんだからコッチに回して欲しいもんだよな」
青年兵士がぼやくと中年兵士が呆れる。
「おいおい、偽物の訳が無いだろが、魔林山から帰って来たんだよあいつ等は」
「でも偽物んとして始末すんだろ? その前に楽しませて貰っても罰は当たんねぇだろ、あの胸とか王族の具合ってのを試してみてぇじゃん」
青年兵士が女性の胸を強調する様なジェスチャーを繰り返すと中年兵士が忍び笑いをしながら同意する。
「中古じゃ買い手が減るんだ仕方ねえよ。
王族の女ってのは使い道が多いらしいからよ」
「ベルギアくんだりしたってのに女も使えねえんじゃ、やってらんねぇよ」
「開拓村にちょいと年は行ってるが美人が1人いたぞ。小太りの旦那がいるみてぇだがな」
「って事は戦争が始まりゃ犯れるって事だな。
早くベルギアと戦争になんねぇかな、手近なとこを略奪して回るのによ」
「若いねぇ、犯る気の分だけ節操がねえな若造」
中年兵士はくつくつ笑うが、私は聞くに耐えられず、青年兵士の首を切断しすかさず中年兵士の首に剣を突きつけたのだった。




