底辺のおっさんは異世界を地獄と断定しました
出来たので投稿。
グロテスクな描写があります、少しでもダメな方はご注意ください
『予定は未定であり決定ではない』と言った人がいたらしい。
俺は至言だと思う。
予定通りに事が運ぶのば稀で、2、3回は当たり前に変わる。
朝の会議モドキでは顕現の事だけだったが、顕現後の予定は無い訳では無い。
シゴを護衛に残して他のゴブは周囲の探索をして貰い、俺は皿や箸等を作る予定だったのだが、復活し五体投地の態勢のまま飛び込み宙返りを決め、五体投地の態勢を崩さずに俺の前に着地したイカれ坊主のカドゥが名前の意味を尋ねる。
デパートとは言えず、後付けのとある杖の名前からと教えれば、シブ達も期待に満ちた目で俺を見る。
白い武人だとか白い護衛とか真打ちとか一等とか城の理とか言ってゴマかす。
コイツ等は何で? 名前程度の事で泣く程嬉しがるん? よう分からん?
しばらくし、全員が落ち着きを取り戻したのを見計らい、俺は幾つかの短期目標を発表した。
1番、雨風を防げる拠点の確保。
2番、保存の効く食料の確保。
3番、転移者の確認。
4番、この世界の住人との接触。
5番、安全圏の確立と魔石の確保。
この5つの目標の内の1番は至急達成する必要がある。
てか、雨降ったら死ぬし。
俺が質問を受付るとシブが手を上げた。
「主、恐らくでは有りますが転移者の死体を発見しておりまする。
原形を留めぬ程に食い荒らされており、主の御体の不調もあり、知らせを留めさせて頂きました」
やはりここは地獄だな。
転移させた神は俺達、転移者を殺しに来ている。
異能やチートアイテムが改変されてる事やこの危険な森に転移した事、情報獲得手段の無さ、そして死亡者が出た事、それらが判断理由だが概ね当たりだろう。
俺は運良く火を起こす事が出来るが、他の転移者達がサバイバルの達人とは考えられ無い、何せあのチャラ男がサバイバルの達人の訳が無い。
あの事故の被害者が転移したとすると時間帯は昼前だな。
あの路線は鈍行のみで私営線の乗り換え駅が多いので俺の様に終点で降りる人間以外は一つ前の乗り換え駅で降りている上に微妙にズレた時間帯でもあり、大規模な電車事故で60人以下の被害で済んでいる。
そのズレた時間帯に移動する人間なぞ、主婦か遅刻魔の高校生か暇な大学生以外は、ほぼ、ろくでなしのチンピラだ。
「主、同郷の者の死を御悔やみでしょか?」
イットゥーが静かに尋ねる。
「いや、今の俺は他人を助ける力も余裕も無い。
自分達の事ですら限界を超えているよ。
何せ絶食と徹夜の2日でぶっ倒れたし、その時は世話に成ったなイットゥー、シブ、トイ、3人とも、ありがとう」
「「あ、主、勿体無きお言葉」」
礼を言って頭を下げた俺に2人は頭を下げたけど、トイはなして顔を背けるん?
「とは言え、仕方無し予定変更。
嫌かもしれないけどシブ、シン、シロリの3人は死体運びをお願い、埋葬したい。
捨て置くのは流石に不憫だからな。
イットゥーはヨウとカドゥを連れて辺りの探索、5つの目標を忘れ無い様に頼むよ。
あ、一命には変えんなよ? 生きて帰れよ、当たり前だけど」
「はっ」「りょーかいよ」「ヌヌヌ、善処致しましょう」
探索なんだから死んだら意味無いだろ、普通に生きて帰れよカドゥ。
兎の歯で地面をほぐしてシゴの盾で穴を掘っていると、シブ達が遺体を運んで来た。
その遺体は衣類を奪われたのか全裸で腹や四肢の一部の他、身体の柔らかい場所が食い千切られ顔が原形を留めていない程に潰れている。
「恐らくは、ゴブリンの仕業かと。
滅ぼした群れがありますゆえ」
堪え切れずに胃液をぶちまけながら、俺は恐れた。
無惨な遺体だけで無く、自分がこの遺体の様になる可能性に。
俺がシブに介抱され落ち着きを取り戻す頃には残った3体のゴブリンが遺体を埋め終えていた。
『予定は未定であり決定ではない』
予定は未来を決定している訳では無い。
俺達の生死が未定であり決定はまだされてはいない様に。