底辺のおっさんは、王なのか、皇帝なのか分からない
森と平原の境目で掘っ立て小屋を建て、明日の平原攻略に向けて話し合う。
単純に川沿いを行くルートと、太陽の位置から方角を割出して最短距離で王都を目指すルートのどちらを選ぶかの選択だが、どちらのルートも一長一短で絞り切れないでいる。
川沿いのルートは迷う心配は無いが、周り道なので、ドラゴンに襲撃される可能性が高まる。
最短距離のルートは確実性が無く、道に迷う可能性があり、道迷いによりドラゴンの襲撃もあり得る。
無難な川沿いルートを取りたい所だが、シャルローネ王女達が『滋養強草』を求めて王都を旅立って約2ヶ月が過ぎでいる為、今現在、ベルギアの王様が生存している保証は無い。
みんなが何のかんの言っても最終的には俺が決める羽目になるのだがな、いつも……
結局はその夜には答えが出ず、明日に持ち越しと成ったのだが、翌朝、俺達の前にソイツは表れた。
黒い巨竜竜帝は。
俺達が朝飯を食い終えて、昨夜の続きをしようとした途端、俺達から少し離れた場所に火炎球が落ちて、爆発した。
爆風で片付ける前の食器やら俺やら下井やらが転がり、ヤツ、竜帝が降りて来た。
イットゥーやシドの監視を嘲笑うかの様に降り立ったっている。
俺が爆風で転がされた後、状況を確認しようとした時には既にいたのだ。
「勇者よ! 我と戦え! 我と楽しもうでは無いか!」
竜帝が大音量で俺達に告げて来た。
「モッさん、このデカドラゴン、ヤバいよ! 竜王竜帝って鑑定に出てる!!」
いつの間にかサングラスを掛けた下井が叫んで伝えてくれたのだが、俺の頭の冷静な部分は『どっちだよ!』とツッコミを入れていた。
本当、どっちだよ、王なの、皇帝なの、どっちさ!