底辺のおっさんは、トボトボと歩く
油で満たされたフライパンから食欲を刺激する音がする。
鳥肉が加熱され、衣が茶色になって行く。
飯盒で炊きあげたご飯をおひつ、木製のたらいに移される。
ヨウ達はまだ帰らない。
油で揚げた鳥肉、唐揚げが木の大皿に盛られて行く。
飯盒で炊きあげたご飯がおひつに移される。
おひつはご飯でいっぱいだ。
ヨウ達はまだ帰らない。
唐揚げが揚がる度に木の大皿に盛られて行く。
大皿は唐揚げで溢れそうだ。
ご飯で満たされたおひつに蓋をする。
ヨウ達はまだ帰らない。
衣を付けた兎の肉が熱した油の中に落とされる。
食欲を刺激する音がする。
唐揚げを満載した大皿を収納カプセルでフィギュア化する。
ヨウ達はまだ帰らない。
別の大皿を用意する。
油で揚げられる兎の肉が色付いて行く。
ご飯の入ったおひつを収納カプセルでフィギュア化する。
ヨウ達はまだ帰らない。
ああ、腹がへった。
ヨウ達はまだ帰らない。
揚がった兎の肉が大皿を乗せられて行く。
にゃんとしーのソウセキが飯盒を魔法で洗浄して行く。
腹がへった。
ヨウ達はまだ帰らない。
「モッさん。ウザイ。
腹へった言うなや」
俺達の所有する各種肉を唐揚げや素揚げしている下井が、ジトッとした目で俺を見る。
うるへぃ、唐揚げを揚げる音が悪いんじゃ!
「下井、こっちの肉はなんっスか?」
俺達の作業を眺めて居たシンが調味液に浸けられた鳥肉を指し示す。
「それは肉に下味を付けてんの!
邪魔しない、つまみ食いしない! モッさん連れてくよろし! でけたら呼ぶからモッさんも行く!」
暑さで余裕が無さそうな下井料理長閣下の命令で俺はシンを連れて卯実のグループの様子を見に行く。
卯実、シャルローネ王女、セランのじいさん、ヨンタの4人のグループで、ヨンタが投影している映像に併せて踊っている。
踊っているのだが、なぜ戦隊モノのエンディングダンスのメドレーなんだよ、他にもあるだろ! 次!
次はシブのグループだが、うん、次に行こう。
シブ、シゴ、イットゥー、エルスタル? エロスタス?まぁ金髪にーちゃんはどうでも良い。
兎に角4人は筋トレしてるだけだし。
竹井君のグループは、あー、うん、なんだ、稽古中か、芝居の。
アンとブロゥが竹井君に殺陣の稽古を着けてもらっているので次。
巻き込まれたく無いし。
朝丘とジャンのおっちゃんがイチャイチャしてるので次!
トイがホルダーを振り回して遊んでいる。
こっちはごっこ遊びか、次に行くべ。
下井料理長閣下が汗水垂らして料理をなされているので次って、一週してしまったよ……
「主…… 見回りでもするっスか」
「うん、ソウダネ、ソウシヨウカ」
働いてるのが下井だけって、みんな自由過ぎだろ……
俺とシンは肩を落としトボトボと周囲を見て回る。
ヨウ達はまだ帰らない。
早く帰って来ないかなぁ……
結局ヨウ達が帰って来たのは夕方だった。