底辺のおっさんは、ゲシュタルト崩壊を楽しむ
何かが足りない気がするのだが、何かが何なのか検討が付かない。
「モッさん、どしたん?」
「ん、ああ、なんか、なんかなんだけど、何かを忘れ、いや、足らないだな、そう、何かが足らない気がするんだよ、なんか」
「『な』がゲシュタルトしてるよモッさん」
「とは言うものの足らないんだよ。
例えば唐揚げのレモンとか『どっちらでも良い派』だから無くても気にしないが、あればある方が良いのだけど最後の一つを食い終わってからレモンがあった事に気が付く様な感じがして、終わってから物足りなさ見たいな何かを感じるんだが」
「よー分からんよ、あ、晩は唐揚げにしよう」
うん、知ってたよ理解出来ない事は、説明した俺も理解出来て無いし。
今夜は晩飯唐揚げか、旨そうだな。
『何か』は又、今度にするとしてだ。
そこのデカイ子供達! 洞窟内で変身ヒーローごっこをするんじゃありません! 変身鎧娘とマスクドオレンジも怪人ニワトリ男と洞窟の中で遊んでないで外でやりなさいよ、外で!
竹井君とブロゥが寸止めで訓練をしていたはずがアンが飛び入り参加してからは、何故か変身ヒーローごっこになっている。
大げさによろめいたり、寸止めだと言うのに派手に倒れたり、変身ポーズをしたりと参加者だけは楽しそうに遊んでいた。
3人のデカイ子供を下井が、外でやらないと飯抜きするぞと脅する事で追い出し『豪転號』のサイズアップについての話合いを再開する。
朝丘の結婚式の準備や保存食の作成など他にもやる事は山積みなんだし、作業のスケジュールを決め無いとな。
ただのサイズアップだと空中でのバランスが狂うだけで無く陸での使用も問題が出る。
牽く事も考慮すると最大重量に耐える為の車輪や車輪の配置も変わる。
最低でも荷台の両端と真ん中で6輪にしないと陸での使用は難しい。
重量バランスの取り難い空中でも同じ事なんだがな。
「荷台は斜めに入れる板を4枚着けて耐久力を上げるとして、空でのバランスはどする?モッさん」
「あー、うん、なんだ、気球式なんてどうだ。
外周に重りを下げてバランスを取る方法だが」
「あー、うん、なんだ、手っ取り早いかもだね。
でも荷物が増えるから、そこはどうするのさ」
「あー、うん、なんだ、荷物って程でも無いだろ、荷台の壁面の外に収納して、使う時は収納から出して荷台より下に重りが行くように蔦ロープで調整するなら」
「あー、うん、なんだ、それだと長さでしかバランスが取れないんじゃ無い?」
「あー、うん、なんだ、重りを荷台の内側に入れれば問題無いだろ」
「あー、うん、なんだ、そっか」
「あー、うん、なんだ」
「あー、うん、あー、うんってうるさい!
一々『あー、うん、なんだ』って言うのは必要なの?
無いよね! 無いなら言わないの! 分かった相棒!」
竹井君と入れ替わりで洞窟内に戻った卯実が怒鳴り出して俺を指差す。
「あー、うん、なんだ、悪い」
「だーかーらー!」
せっかく俺が謝ったのに卯実が腕をバタバタ振り回して暴れ始める。
「あー、うん、なんだ、どーもすみません」
俺が某ネタ気味に再び謝ると卯実も「もー、もー、もー」と持ちネタで返してくれた。
ヨウ達が泊まりで出掛けていても俺達は相変わらずアホのままだな、所詮は。




