表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/467

竜と騎士と魔女の後始末

 久野を殺し終えアタシは術を解く。

 イットゥーが何か言ってるけど後にしてくれ無いかしら?

「ヨウ、それは無理だろう。

魔女の夜(ヘクセンナハト)』は効果は充分だが、制御に難がある以上は使えんな』」

「『イットゥー達に説明するのはホルダーに任せるわよ』」

面倒な事をホルダーに丸投げしてアタシは大の字で地面にねころんだ。


 主殿達の知識を元に組み上げた空間変異魔術『魔女の夜(ヘクセンナハト)』は使用後の疲労が半端じゃないわね。

 職業(ジョブ)選別型聖域構築する空間変異魔術、主殿や下井の知識では個人の固有? 結界って言う万能空間を作れるはずだけども、流石に無茶だったみたいね。

 なんだ、か、すご、く、ねむ、い、し……




 ホルダーの説明によると、自分に有利な空間を作る魔術を実験的に使用した結果、理性等が利かなく成ってしまったとの事で、久野の身体を乗っ取っていた川崎と言う人物の肉体が隠されている場所だと言うのに疲れ果てたヨウは意識を手放して眠りについている。

 これは私に対する信頼の表れなのでしょうか?

「彼女は慣れていないのだよ。イットゥー。

 自己と使える他人と使え無い他人の3種で世界を見ていたヨウは、他者を利用する事はあっても頼る事はほぼ無い。

 故に『家族』に後を頼む事すら告げ忘れる。

 ヨウはマスター ヤマモトの言う『家族』の一員となるべく空回りしているのだよ『家族』を知らないが故に」

「今回の件もその空回りの結果ですか、ホルダー」

「その通りだが、マスター ヤマモトの精神に余計な負担をかけさせたくなかったので、私も協力する事にした」

「何故、猿を救出した時に主に伝えなかったのですかホルダー、あの時に始末していればこんな回りくどい事をせずに済んだはずですよ」

「マスター ヤマモトの性格は知っているだろう。

 彼は家族の為と思えば自分の命を容易く賭けてしまう人物であり、容易く他者を受け入れるお人好しだ。

 久野達や川崎を救う為にマスター ヤマモトはどれだけの対価を支払うと言うのだ、イットゥー。

 ミス シモイやミス ニノミヤに泣き付かれた程度で知りもしない小娘の為に命を賭ける男だぞ、我が友は」

ホルダーの言う通り、我が主君(マイロード)は他人の為に自身の命を軽く扱い、容易く死にかける心優しき我らの王だ。

「ホルダー、ヨウが寝ている間に終わらせましょう。

 川崎と言う転移者の代替品はもう無いのですね」

「無い、久野を『視て知る』事で確認済みだ。

 目標の倒木ならばシドの砲撃で十分始末出来る」

「ならば私は周囲の警戒に当たりますのでシド、お願いします」

「本機了解、これより殲滅を開始する」

シドが翼を広げて飛ぶ。

 おそらくは空から砲撃するのだろう。

 大の字で寝ているヨウを私は抱き抱えてその場を離れる。

 シドの砲撃の邪魔になりますしね。


 この日、2人の転移者が死んだ。

 何かを遺す事も無く、誰かに悼まれる事も無く、私達の為に私達が殺した。

 この事は決して知られてはならない。

 主がこの事を知れば、嘆き苦しむ事が分かりきっているのだから。  

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ