底辺のおっさんは、送り出す
俺に詰め寄り勝手な事を抜かすアンとブロゥの尻をシブと卯実が蹴って2人を黙らせてくれたお陰で、俺が言い返す余裕が出来た。
まずは『豪転号』を勝手に名前を変えて呼んでいる事について、名前を勝手に変えるなと注意すると「『5・5』なんて半端ポ!」とか「名前が変で格好悪いのでありますよ!『Go・Go』で無く『GoGo号!』ならまだしもでありますよ!」とか訳の分からん事を抜かすので、俺達を無表情で眺めるトイを手招きで呼ぶ。
彼女が腕に巻いている趣味の悪い眼帯野郎『よろ乳首ンタ』事、ヨンタに『轟天○』の映像を投影させた後、アンとブロゥの2人に名前の文字の説明をしてやり、最恐の奴の怒りを静めんと俺は頑張ったよ。
危なかった、本当に危なかった、竹井君が暗黒瘴気を垂れ流し始めてたし。
「最高の名前でありますなぁ、一番星号などとは雲泥の差であります」
「その名の前にノーベラ号ポかあり得ないポね」
竹井君から漏れ出る暗黒瘴気に気が付き、2人は滝の様な汗を流しながら慌てて取り繕いの言葉を発する。
全く、特撮大好き竹井君の側で『轟○号』の名前を否定するなんざ死ぬ気かコイツ等は。
ともあれ2人に模擬戦の結果を尋ねると、俺が2台を洞窟内に仕舞ったと下井に告げられたので中断したらしい。
本当に良く気が付く奴だよ全く。
お陰で模擬戦って空気でも無くなったよ。
「ところで、卯実やシブはこれからどうするんだ。
俺は下井と『豪転号』の改良案を話し合うつもりだが」
後、朝丘とジャンのおっちゃんの結婚式の衣装についても話し合うがな。
「んー、あたしはダンスの練習かな。
最近はバタバタしてて軽くしか練習出来てなかったし」
「某は近場で野草採取しつつ見回りですかな。
スライムが滅んだ今、縄張りの移動も活発に成っておりますでしょうし」
「そっか、なら卯実はヨンタを使うからトイと一緒だな。
シブの方は暇そうな奴等も連れて行ってやってよ、1人じゃ危ないしさ」
俺がそう提案するとシブはニッと笑い「承知!」と短く答えると、薙刀で落書きしているシンや木の根元で香箱座りで寝ているソウセキを誘って森の中に消えて行く。
「主殿、アタシは移動拠点の様子を見て来ますので2、3日留守にするわ、何かあったらホルダーに連絡して下さいな」
あー、うん、なんだ、確かに後始末して無かったな、あの失敗した箱。
「あ、そだ。
ヨウ、シドに送って貰うか? なんなら『豪転号』を出すけど?」
「でしたら馬車の方のテストを兼ねてお願いするわ」
『轟転號』のテストをすると志願してくれたヨウは俺に薄く笑って見せる。
ヨウなら魔法も使えるから大丈夫だろう。
そう思いつつも、俺は念の為にイットゥーをヨウの護衛として連れて行ってくれとヨウに提案すると、ヨウは了承してくれた。
ヨウはイットゥーと共にシドが運ぶ『轟転號』で移動拠点へと向かって行くのを送り出してため息を吐いた。
モノクソどうでも良いが、アンとブロゥ、喧しいから黙らっしゃい!
遊びじゃ無いんだから『ズルい』とか言うなや!




