底辺のおっさんは、仕舞う
「筋肉の動きによる先読みは自分には通用しないのでありますよ! 諦めて豆でも食べているのでありますブロゥ殿」
ブロゥと向かい合うアンが構える。
「あのマシーンはミーが活用するポ。
へっぽこ小娘はへっぽこ小娘からぽこっへ小娘にされる前に消えるポよ」
ブロゥがサイドなんちゃらとか言うポーズをする。
何故か『豪転号』の所有権を賭けてアンとブロゥが模擬戦をする事となっていた。
あー、うん、なんだ、言っちゃ悪いが『豪転号』は個人所有物じゃ無いから。
後、見物は2D格闘ゲームのモブじゃ無いんだから一ヵ所に固まらないでよ、みんな。
アンが篭手を着けた右腕を顔の横に上げて左腕を振り回してから右腕と交差させて光に包まれ変身する。
「変身であります!」
なんすかアンさん、その電光な超人グリッド男の合体染みた変身は。
「筋肉! 筋肉! 筋肉ポゥ!」
ブロゥもなんすか、そのスジ肉ってのは。
確かに漢字表記すると同じ字だけどさぁ。
あ、後、アンに対抗して一々ポージングをすんな。
誰かが「ラウンドワン、ファイト!」と格闘ゲーム臭い模擬戦開始を告げると、ブロゥが先制攻撃の魔法を放つがその名前は無いだろ、以前と名前も変わってるし。
「バストバーン!ポポゥ」
ブロゥの胸から赤い光線が放たれるが、ライガーに変身したアンはブロゥに飛び込む形のジャンプで光線を避けて、そのまま飛び蹴りを放つ。
アンの飛び蹴りをブロゥは両腕を交差して防ぐが、アンは着地と同時にしゃがみ込んで地を這う様な蹴りでブロゥの足を払おうとする。
ブロゥはアンの足払いをバックステップで回避して体勢を立て直す。
「ブレイブマグナム!であります!」
ブロゥのバックステップに合わせてアンが飛び込みながら大きく振りかぶり叫ぶ。
あー、うん、なんだ、その『勇気増量』ってなによ。
スキルアーツでも無さそうだし、確かに技っぽい響きだけど攻撃系ではなくて強化系じゃないの普通は。
「『トサカッター』ポ!」
アンの大振りパンチがブロゥに届く寸前でブロゥの鶏冠が飛び出してアンを吹き飛ばした。
あー、うん、なんだ、お約束だけどやっぱり鶏冠は外れるんだ、お約束だけど。
どうでも良いが、君等はなして前後にしか動かんの? 昔の2D格闘ゲームじゃあるまいし。
ホルダーかヨンタが気を利かせて2人の模擬戦を俺にも見える様にしてくれてはいるが、ぶっちゃけ、どうでも良い。
2人が模擬戦に夢中でリアカーの事を忘れている隙に仕舞うとするか。
俺はこっそりとシブと卯実に頼み、2台を洞窟内へと移動させるのだった。
再び外に出るとブロゥと変身を解除したアンが詰め寄り、2人は俺を非難し始めやがる。
「ヤマモト殿! 自分の『ノーベラ号』を何処に隠したでありますか! キリキリ吐くであります!」
「ダディ! ミーの『一番星』号を何処に隠したポか!」
君等のじゃ無いし『豪転号』と『轟転號』です! 勝手に、名前を、変えるな!