底辺のおっさんは、普通にして欲しい
あー、うん、なんだ、今まで出来ない事ばかりだったので無意識にそれを除外していたよ、魔法と言う手段を。
ヨウは魔法で自動車や家は出せ無いが、既にある『豪転号』や試作3号機の部品などを強化する事は魔法や錬金術で出来るらしい。
ものは試しに『豪転号』をヨウに強化してもらおう。
俺の頼みを快諾したヨウは付与魔法で『豪転号』の全体を魔力でコーティングしているらしいが、スキル使用時の様に魔力発光現象は起こら無かったので、俺には何がなんだか分からない。
「主殿、この荷台車に複数の魔術を掛け、錬金術で永続化して魔導具化するわ。
それで魔力を持たない主殿でも使用できる様に魔石を取り付けるけどイイかしら」
「あー、うん、なんだ、任せるよ」
本来、魔石の使い方はこうなんだろうな、おそらくは。
トイに魔力をチャージする事は特殊な使い方なんだろう、魔力があれば自前の魔力でチャージ出来る訳なんだし。
魔力を持たない俺はこの世界において異物でしかない。
特殊な魔法生物でもあるトイは見方次第では魔導具な訳で異物とは言い切れ無い。
マズイな、ネガティブな方に考えが……
「モッさん、どしたん?」
俺がネガティブな思考に捕らわれかけているところを下井が心配そうな顔を向けた。
「大した事じゃ無いよ。魔力が欲しくなっただけだから」
咄嗟にごまかしを口にしたが下井の事だ、おそらくそうでは無いとバレているだろう。
「そっか、モッさんは魔力が無いから」
気が付かない振りをしやがって、良い奴だよ全く。
俺は気分を変える為に『豪転号』の強化をヨウに任せて試作3号機の車輪を組み立てを始める。
試作1号機『豪天號』は一体型のディスクホイールだったが下井の協力により、2号機、3号機の車輪はスポークタイプを採用しているので、車輪その物を組み立てる必要がある。
いや、止そう、自分の実力から目を背けるのは。
ディスクホイールなんて格好付けて言わずに車輪が作れ無いと認めよう。
俺達が『豪転号』の強化や試作3号機『轟転號』の組み立てをしていると、狩りに出ていた面々が続々と帰って来る。
今日の所はここまでにして、みんなの晩飯を作る下井の手伝いでもするかね、たまには。
翌日、ミーティングを終えた俺達は『豪転号』のテストをする為に搭乗者を決めるジャンケンをするが、いつもの如く殴り合いや裏取引が行われたのは言うまでも無い。
全く、たまには普通にやろうよ、みんな……




