底辺のおっさんは、保存食をつくります
俺、下井、朝丘はぺミカンと言う保存食を作っている。
この『ぺミカン』と言うネイティブアメリカンの携帯保存食は兎に角カロリーの塊で、肉やら野菜やらをラードで煮詰め、それを固形物した物だ。
ぺミカンを作るにはラードをざっと5、6時間は煮る必要がある。
俺は鍋をぼんやりと眺めながら、俺達以外の転移者達の事を考えて見る。
俺が知る範囲では、久能、オーク共のボス、名前も分からない死体、卯実と知り合う切っ掛けになった『ブロンズガーゴイル』を召喚したが殺されたらしい人物の4名だ。
俺、卯実、竹井君、朝丘の4名で合計8名が確認出来ているのだが、残りの23名はどうなったのだろうか?
「モッさんどうしたん?」
「あー、うん、なんだ、転移者達の事を一寸な」
「考えるだけ無駄でね? あと何人いるのかも分からんしさ」
「残り23人だが、確かに考えても仕方が無いな」
「おんや? なしてモッさんは残り人数を知ってるのさ」
「言って無かったか? 俺が一番最後に転移した事」
「あー、うん、なんだ、聞いた様な聞いて無い様な」
「神を名乗るヤツが言うには俺込みで56人中31人が転移して、こっちに転生したのが22人、元の世界に転生したのが3人なんだと」
「ほーん、転移や転生先ってここだけなん?」
「地獄と天国も異世界らしいぞ。転生は元の世界かこの世界のどちらか二択だけどな」
「うぁ、何人来たのか不明じゃん」
「把握してるのは俺達と久能、オーク共のボス、死人が2人いる事ぐらいで、転生者はお前だけ」
「考えるだけ無駄! それに生き残りがいるとは思えないよ、モッさん」
「だよなぁ。よほど運の良いヤツ以外は死んでるよなぁ」
「この森はソロ活動するには危険すぎでしょ。しかもレベル1で。
竹ちゃんぐらい強いなら別かもだけど、竹ちゃんクラスの超人がゴロゴロしてるとは思えないし、徒党を組むにしても住む場所を確保出来るとは思えないね」
「そう考えると久能のヤツは運が、ん?」
「どったの?」
「ヨンタ! シブ達に警戒する様に言ってくれ! 低い位置の枝が無さ過ぎる!」
オーガーサイズのブロゥが楽に歩ける程に枝が無いのだ、シブ達が進んでいる獣道には。
シブ達がいる場所はオーガーサイズの巨体が日常的に歩いている可能性がある。
俺がヨンタに頼むと同時に先頭のソウセキにデカイ石が飛んで来る。
俺の懸念は的中し、シブ達はオーガーの集団に襲われたたのだった。




