底辺のおっさんは、祝福する
ジャンのおっちゃんが朝丘を嫁にくれとか理解に苦しむ事を何故か俺に伝えて来る。
ジャンのおっちゃんの背後に寄り添う朝丘もしっかりと顔を上げ俺を睨み付けている。
辛気臭くて毒舌しか吐かない朝丘がこの件について本気だと分かる。
ジャンのおっちゃんと朝丘が真剣な分だけ周囲の雰囲気が真剣なモノになって行く。
俺の答えを待つ2人とそれを見守る面々。
「あー、うん、なんだ、なして俺に聞くの?」
俺の疑問にみんながぽかんとした顔をした後に「はあー!」と揃って叫びだした。
「ちょ、信じらんないよ相棒!」
「山本さん!真面目に答えてあげてください!」
「あんまりであります! 酷いのでありますよ! ヤマモト殿!」
「ヤマモト殿! ジャンの覚悟をその様に踏みにじる等とは!」
「ハゲ野郎! てめえには2人の真剣な気持ちが分かんねぇのか!」
「ヤマモト殿! 我らの同胞たるジャンに対する侮辱! 貴殿であっても許しては置けませぬぞ!」
「ないわー。モッさん、それはないわー」
卯実や竹井君、アンにシャルローネ王女、エルスタス、セランと来て、最後で下井にダメ出しされる。
何でみんなして俺を責めるんだよ!
「うるせぇ!ちと黙れやボケー!」
俺は怒鳴りながら手の平でテーブルを叩く。
あんまりにもみんなが俺を責めるから怒鳴っちゃったよ、泣くぞ畜生。
「あのなあ! 俺に許可を取る必要なんて無いだろが!
当人同士がイイ大人なんだし。
ジャンのおっちゃんは『くれ』じゃなくて『する』だろ? 俺の家族って言っても朝丘の意思もあれば自由もあるんだ。
朝丘とジャンのおっちゃんがお互いに結婚したいって言うならば、俺が言える事なんざ『おめでとう。末永くお幸せに』たぞ!」
俺がそう告げると、再びみんなはぽかんとした顔をする。
なんか間違えたか? 俺がジャンのおっちゃんや朝丘の表情を伺うと、朝丘の表情が徐々に晴れ、朝丘はジャンのおっちゃんの名前を呼びながら揺すり始める。
ジャンのおっちゃんも満面の笑みを浮かべ朝丘を抱きしめて名前を呼ぶ。
2人はお互いの名前を呼び合いながら抱きしめ合う。
「相棒、紛らわしいよ」
卯実が俺の側に来るなり肩を押す。
「2人とも、おめでとう」
竹井君が2人に祝福の言葉とともに拍手をすると他の面々も拍手をしだして2人を祝福した。
みんなが一頻り2人を祝福した後、俺はホルダーにアレが可能か尋ねると、ホルダーは可能と答えてくれた。
アレ『オーグメンテッド・リアリティ』
ARとも拡張現実とも言うヤツで、ジャンのおっちゃんと朝丘の結婚式をしてみようと提案したが、みんなにはピンと来なかった様だったが、結婚式そのものは賛成らしい。
「マスター ヤマモト、ARによる幻影はよろ乳首ンタに任せるとして、幻影だけで良いのか? 結婚式とやらはドレスや料理等で彩るのでは無いのか?」
「どうせ顕現出来る様になってからだから、それまでに準備するさ。
と、言う訳だよ下井君」
「どう言う訳さモッさん」
「ワゴンのフィギュアにドレスや料理のフィギュアを追加して」
訝しむ下井に俺は笑顔で告げると下井は固まった後に「ま゛ーーー!」と叫び声を上げ喜んでくれた。
良い事をすると気分が良いな。