底辺のおっさんは、荒ぶる獣達を見た
何もしたく無いと思っていても、やるべき事は山積みであり、今はまだ昼前だ。
何よりも暴動に成りかねない件について、みんなの意見を聞かなければならない。
顕現の凍結についてだ。
眼帯目玉の『よろ乳首ンタ』を顕現した事で能力が凍結された訳だが。
現在、保存の効かない食料や嵩張るレトルト食品の一部等は『フィギュア化』してあるので顕現しなければ食べられない。
顕現凍結中イコール食料の多くが『フィギュア化』したままとなる。
凄げぇ荒れそうだな、こりゃ。
俺が『よろ乳首ンタ』により顕現凍結中だと、みんなに伝えると案の定、荒れた。
『ノーライスノーカリー』その事に気が付いたゴブリン達とベルギアの騎士達は、荒ぶる獣と化した。
獣達は『よろ乳首ンタ』こと、ヨンタに罵声を浴びせ、振り回し、投げつけ、叩き付け、噛み付き、引っ張り、捻り、殴ったが、ヨンタに傷一つ付けられなかったのだ。
「マスター、よろ乳首ンタは『魔王の竜翼』を加工した物です。
『魔王の竜翼』は『夜明けを告げるモノ』の竜翼です。
『魔王の竜翼』は再生能力を持ちます。
『魔王の竜翼』は高い防御力を持ちます」
何故かサングラスを掛けたトイが俺に説明してくれたのだが。
そのサングラスは必要なのか?
「賢者の眼鏡、ランク3ユニークです。
賢者の眼鏡は使用者に鑑定スキルを与えます。
賢者の眼鏡の鑑定スキルは6レベルになります。
賢者の眼鏡は使用者の魔力を消費します」
トイの説明を聞きながら「見た目に似合わず便利な物になったな、サングラスは」と、ぼんやりと思っていたが、一寸待て!
魔力を消費する? 使用者の? と、言う事はだ。
現在の使用者はトイだな、トイは魔力を消費する事で活動や存在を維持するのだから······ とっと外せ、コラ!
トイからサングラスを没収して俺が掛けてても、魔力が無いので頑丈なサングラスでしかなかった。
主にヨウか下井が使うんだろうから良いけどさ。
結局この日は、獣達が暴れ疲れて自棄酒を飲んで終わったのだが、コレでいいのか? 俺等······ って、後回しはいつもの事か。
翌朝、俺達はヨンタの処遇を決めるミーティングを行っている。
現在のヨンタは完全にホルダーの支配下にあり、ホルダーの子機として利用できるらしいが、シブ達ホワイトゴブリンとベルギアの騎士達は破棄する事を提案している。
それに対して、トイ、ヨウ、ホルダー、ブロゥの4人が待ったを掛けている。
ヨウとホルダーはヨンタを使う事での探索や通信の利便性を挙げ、トイは新しい動画再生機として利用する気だ。
「魔王だった頃のミーの一部ポゥ。
ミーのパワーアップに使えるかもしれないポ。
普段はプリンセス トイポが所持するポゥ、ミーはプリンセス トイの警護に着くポよ」
ブロゥの言い分は自分の強化パーツにしたいとの事で割とまともな理由だ。
イットゥー、カドゥ、ソウセキ、シドは俺とトイに一任するとの事で、卯実や竹井君は安全ならと、条件付きで利用する側だ。
ジャンのおっちゃんと朝丘、山羊夫婦は無関心で、ミーティングにすら参加していない。
「んで! モッさん! モッさんはどっちにするのさ」
下井が珍しく苛つきながら俺に尋ねて来る。
「トイのオモチャで良くないか? ホルダーが安全を保証しているし。
他にも探索の目が増えれば、生き残りの騎士や転移者を見つけ易いしな」
「ぬぅ、主がそう仰るのなら我は従いますが『よろ乳首ンタ』! 二度と巫山戯た真似をするな! 次は許さんぞ!」
シブは警告しつつヨンタを睨む。
眼帯目玉の話はこんなところだな。
「山本さ、頼みさあんべ。
おでに、おでに夕さをヨメにくんろ!」
神妙な顔でジャンのおっちゃんが爆弾発言をかましてくれやがった。




