ごしゅじんさまとの戯れ
「ほらー!ちゃんとじっとしてて?動いたら洗えないじゃない。」
「っ……ですがっ……!」
産まれて初めて風呂というものに入った気がする。私は座らされて何故かご主人様に頭を洗われていた。
「自分が奴隷だからって身だしなみに気をつけないのは駄目よ?あなたも女の子なのだからね。」
髪の毛を優しい手つきで洗い流していく。髪についていた汚れが一気に落とされているような気がする。ご主人様は私の髪を撫でる。
「いい髪質ねぇ……。艶々で滑らか。羨ましいわ……」
「恐縮です。ですがご主人様も良い髪をしているでは?茶色の長い髪がとてもお似合いですよ。」
ご主人様は私?とびっくりした表情を浮かべた。
「私のはね〜あれよ。色んな薬物で粧ってるだけなのよね……。でも、そう言って貰えて嬉しいわ。」
少し微笑むご主人様。とても可愛らしい。
「さーてとっ。髪は終わったから……次は体ね?。」
どうやらひと段落着いたらしい。するとご主人様は自分の手に石鹸なるものを付け、私の体を触りだした。
「なっ……なにをされてっ!いるのですかっ……!」
「な〜に?ただ体を洗っているだけよ〜?」
首から腰にかけて指を滑らせてゆく。なんとも言えない感触が私の体を襲った。
「ですがっこの程度のっこと……私にもできますっ…!」
「へぇ……。」
ご主人様の口調が急に変わった。体感温度が少し下がったよえな気がした。私の背中を冷や汗がなぞる。
「そんなこと言っていいのかしら?あなたは私の……。」
ご主人様の口が私の耳元に近づく。
「ど・れ・い・なの……よ?」
全身の毛がよだつのが分かった。なにを浮かれている。相手はご主人様だ。仕える人だ。ある程度自由になったからと言えど慣れすぎるのは良くない……。
「申し訳ございません。自分が少々未熟でございました。お許し下さい。」
ふふっ。頭の上から笑い声がする。
「もしかして本気で受け取っちゃったかしら?冗談よ、冗談!そんなに気をはらないで〜。」
ご主人様は先程の口調に戻った様に見える。だが、本当に良いのだろうか。そんな私を尻目にもせずまた体を洗い始めた。
「それじゃあ……えいっ!」
「ひゃんっ!」
あらぬ所を擽られた為変な声が出てしまった。
「ご、ご主人様っ!あのっ……あっ…お待ちくださいっ!」
「ふふっ。どうしたのかしらー?私にはよく分からないわー?ふふふっ。」
そう言いつつ擽る手をやめることはなくさらに速くなった。
「な…何故、このような…んっ!ことをするのですかっ…!」
必死に耐えようとするも、擽られるということが初めてということもありどうしようもなかった。
「なぜって?そうねぇ……。」
ご主人様は私の顔を覗き込む。
「私はあなたと仲良くしたいだけなのよ。今までの人とはあまり仲良くなれなかったから……ね。」
悲しげな表情を裏に隠しながら笑う様はなんだか私の胸に刺さった。
「まぁこんな辛気臭い話は終わりにしましょ!ほら、どんどん洗っていくわよ〜。」
「は、はいっ……よろしく…おねがいっしますっ……!」
その後、私のお風呂は長く続くのだった……。
*
お風呂からあがりバスローブなるものに身を包んだ私は、ご主人様に髪を乾かして頂いたあと用意して頂いたメイド服に着替えることにした。着替えはご主人様に手伝っていただき事なきを得た。意外と簡単だったので明日からは私にも出来そうだ。
「いいわね!とっても似合ってるわ。サイズは大丈夫そうかしら?」
「はい。ちょうどいいです。ありがとうございます。」
少しだけ胸が窮屈な気もするが……。ここで口答えする訳にはいかない。大丈夫だろう、多分。
「そう。それは良かった。あとね、あなたに渡したいたいものがあるの。」
そう言って取り出したのは小さな銀色の棒に小さなパーツがいくつか出てきた。
「ご主人様、こちらはなんでしょうか?」
「いいから、ちょっと右手を見せてくれるかしら?」
右手。私は出すのを躊躇ってしまった。だがご主人様に逆らうことは出来ない。仕方なく右手を差し出しだ。
「やっぱりそうなのね。もうっ!幾ら隠そうとしても無駄よ?私、そういうのはすぐに分かるの。」
ご主人様は私の悲惨な手を見てそう告げた。右手の親指と人差し指以外の指が私にはないのだ。いつかはバレるとは思っていたが、こんなにも早くバレるとは思ってもなかった。
「申し訳ございません……あの……。」
「いいわ。誰にだって見られたくないものは沢山あるでしょう?良し。これで大丈夫だわ。
試しに動かしてみてくれる?」
「動かすって、何を…です…か……。」
私が右手を見ると銀色に輝く義指が付いていた。それぞれが自由自在に動く。
「こ、これは……!!」
「これはね、私が作った義指よ。昔は別の人に渡していたものなの。」
これ程良くしてもらっていて申し訳ない気持ちでいっぱいである。
「あっあ、ありがとう……ございます……っ…。」
「ほらほらー。落ち着きなさい?これは余り物だから好きに使ってあげて。ほらもう、シャキッとしなさい〜。」
この上ない幸せを感じた。私はまだ生きていてもいいようだ。
「そうだわ!肝心なことを忘れていたわ。私たちまだ名前名乗ってないじゃない!」
「名前……ですか?私には個体番号しかないので名前とは言えませんが一一五六四八が私には与えられた番号なのですが。」
うーんとご主人様は首を傾げる。
「そうねぇ……もっと可愛い名前にしましょう?例えばサラとかどうかしら?」
「サラ……私の名前ですか?」
名前など今まで考えたことも無かった。私の名前……。
「えぇ。とてもいい名前だと思うわ。」
そうそうとご主人様は頷く。
「私の名前の紹介がまだだったわね。私はね氷相セラって言うの。改めてよろしくね、サラ。」
右手を差し出すご主人様。その手を取り跪いて、手の甲にキスを。
「はい。よろしくお願いします、ご主人様。」
なんだか気恥しいわね〜とご主人様はおどけるように言う。確かにそうかもしれない。だがこれで私は造られた。今、サラという人として生まれることが出来た。
「じゃあ、家の間取りとかの説明するわね。ついてきてくれる?」
「はい、勿論です!ご主人様!」
その後家を隅々まで探索して、自分の部屋を決めて頂いた。明日から、メイドとしての仕事が始まるわ。その為に早く寝なさい〜とご主人様が仰ったのでお言葉に甘えて、自分のベットに潜り込んだ。嗚呼、私の新しい生活が始まる。期待が膨らむ。だが予想以上に疲れたのかベットに潜ってすぐに瞼が閉じ始めてしまった。明日の朝はきっと素晴らしいのだろうな。おやすみなさい。私は深い眠りについた。久々に本当に眠った気がした。
いやはや……最後まで読んでくださってありがとうございますm(_ _)m
早速あのようなシーン…でも、大事なんですよ?ほんとに…!まぁそれはともかくまたまた自分の感性で書いてるのでもしかしたら拙い部分あるとは思います。思うんですが…何とか頑張って書きますのでよろしくお願いします( .. )訂正等ありましたら御一行下さい。なるべく毎週水曜日に更新したいと思います。それではっ!