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第79話 救済の果てに

 さてと、どうしよう。もう目を開けてツヨシに謝ろうか。ツヨシは私が死んだと完全に思い込み、怒りを爆発させている。本当に爆発している。

 私は胸を貫かれる時、局所的にワールドを発動して急所を外すことに成功した。血は多少なり出ただけで死んでない。片肺は削られて息苦しい。この程度なら薬でどうにでもなる。

 暴食に喰われなかったのは、単に奴が自己捕食で満腹状態であったから。空腹状態なら逃げ回る積もりでいたのに。ツヨシの復活まで。日付を跨ぐまで。

 計算違いだったのは、ランバルが想定よりも強かった事。あっさりと捕まり、この有様。

 日付変更まで後2分。ツヨシは回復していない。ちょっとした興味本位で死んだ振りをして、薄目を開けてツヨシがどうするのかを見守った。些細な出来心。

 泣いてくれるのか、怒ってくれるのか。旦那の反応が見たくなった。うん、爆発するまで怒ってくれた。嬉しい反面、起きるタイミングを見失った。傷がとても痛い。でも死にはしない。

 彼は認識出来ない素早さでランバルの腕をカットすると、私の身体から引き抜いて風に乗せて3人の隣に運んでくれた。触れてくれたら謝罪も出来たのに。生きてるけど?って。

 ん?何か違うな。生きているのが解ったから、安心して戦っているのかな?それとも本当に怒りで周りが見えなくなったのかな?疑問は尽きないが、もうすぐ日付も変わる。回復したら3人を起こしてさり気なく見物しよう。爆発するツヨシは中々見られないし。

 理由は解らないが、ツヨシは日付が変わる前から魔術やスキルを使用している。今は全身から火を噴いているし。盡力はどうして回復出来たのだろう。また疑問が増えた。

 「くっ、速さは同等なのに。炎の鎧で近付けぬとは」何か言ってる。

 同等ではない。既にツヨシのほうが上。だってこの私が見極められないのだから。

 時計の数字が0:00を示した。よし、起きよう。

 ウィートが持っていた残りの薬を少しずつ3人に振り掛け、自分にはヒールをした。薬で治すなら半分くらい必要だし。ツヨシに作って貰わないと在庫は無いし。

 「おはようござ・・・、私、あいつに犯されそうに!」

 「おはよう。大丈夫だよ。寸前でちょん切ったから」泣きながら感謝し抱き着いて来るウィートの頭をよしよししながら、他の2人を揺り動かした。

 「おお、なんじゃ。ツヨシが燃えておるぞ」

 「あれって、燃やされてるの?自分で燃えてるの?」

 「自己発火だから大丈夫だと思うよ」

 「なぜ、燃えているのですか?」

 「死にかけた私を見て、怒りが振り切ったのかな」

 「抜け駆けか?4人分のトータルじゃろ」

 「そうしとこう。私は最初から寝てたから知らないけど」

 「私の服が破られた時は、あんなに怒っていなかったのに・・・。顔だっていっぱい撲たれたのに・・・」

 「代わりに私が怒ってあげたから。ツヨシは後でお仕置きね」

 「泣くな泣くなウィートちゃん。やっぱ剛の中の一番は、クレネってことだから」

 「少し妬けるのぉ。まぁ燃えておるのは別に理由がありそうじゃな」

 「そろそろ終わりそうだね」

 「二人でお空に登って行きますね」

 逃げ惑うランバルを突き上げながら、上昇して行く。何処まで行くのだろう。

 「止めろ、止めてくれ」

 この大陸の圏外まで追い出す気だろうか。成る程その手もあったか。魔王の支配の及ばない場所まで持って行けば、与えられた力を失うと。案外冷静なの?

 「・・・」

 ツヨシは終始無言だった。怒鳴るでも叫ぶでもなく。

 「私を崩壊させる気か!だが内包した力も同時に暴走するぞ。良いのか!」

 「黙れ。蠅如きが!!おれの愛しい嫁らを薄汚い手で触った罪。お前は細胞すら残さない」

 「・・・照れるわね」

 「・・・嬉しいです。私は撲たれたのですが」

 「・・・嫁ら、ね。日本じゃ考えられないわ」

 「・・・声まで聞こえたのは内緒じゃな」

 4人で合作してマップを掛け合わせ、上空の様子を手元に映し出していた。音声入りで。

 「エンディットゲノム・スーパーノヴァ(終局の原素・荒ぶる息吹)」

 小さな光がランバルの前に出現し、大陸を覆っていた分厚い雲の全てを暴食のように吸い尽くして輝きを増した。光に反発してランバルの身体が膨らみ続けた。上へと登るに連れて。

 奴が望んでいたかは解らない。望まずとしても、奴は最後まで薄ら笑っていた。

 収束した光の光点が、ランバルの身体に吸い込まれた。

 金切り音が響き、光が弾けて散った。真っ赤な火の粉と共に。

 「あれが、花火ですか?」ウィートが空を見上げて言った。

 「花火?日本のとはちょっと違うけど・・・。花火かなぁ」アカネも同じ空を見上げて言った。

 「爆発しただけにしか見えんがのぉ」ゴライアイスの気の抜けた声。

 私は、私は・・・。オカシイ、何かが変。フラフラと立ち上がり、3人から距離を取った。

 「お姉様?どちらへ?」

 「だ、大丈夫よ。ちょっとだけ、一人に・・・」胸の奥が痛い。貫かれた辺りが。

 傷は完全に塞がっている。多少の痕は残るが、後はゆっくり薬を飲めば・・・。いや、傷口は塞がってなどいない。薄らと血が滲んで。

 喰われた!いいや違う、これは・・・巣くわれた。何かを植え付けられた。

 「クレネーーー!!!」上のほうからツヨシの声が聞こえた。

 「ツヨシ・・・、私は、ここまでかも知れない」

 「認めない。ちょっと痛いが我慢だぞ。キュアレス・イグゼスト!」

 浄化魔術の発展系。駄目だ、それでももう間に合わない。目前に降り立ったツヨシは迷うことなく、その手で私の胸を貫いた。ランバルと同じ場所を。

 「ツヨシ様!」

 「あんた、何して・・・」

 「・・・まさか。虫喰いか!私は咄嗟に自分の腕を焼いたのじゃが・・・」

 「大丈夫だ。捕まえた!プリズマ・クラスターーー」捕らえ潰して破壊する。私の背中が騒がしいが、振り返っても見えない位置だから、諦めて目を閉じた。

 不思議と涙は出ない。勿論胸はとても痛いが、意識が飛ぶ程ではない。一度目で場所を把握して、次いでの魔術で掴み取ったのか。さすが、私の愛する旦那様だ。

 「ありがとう・・・ツヨシ」

 「当然だろ。他の誰にも渡すもんか。言ったろ、別れは諦めろってさ」

 腕を私の胸から引き抜くと同時に、ツヨシはBOXから透明な瓶を煽り、一口含んで私にキスをしてきた。否応無しに受け入れる。口移しで流れ込んできたのは、薄いリンゴの果実水みたいなほんのり甘い液体。

 身体中に染み渡る。数秒後には、胸の傷が跡形も無く消え去った。だけではない気が・・・。

 「お姉様だけ、ズルいです。私だって酷い事されかけたのですよ」

 「当然私にもするんでしょうね。3番目でいいからさっさとしなさいよ」

 「序列は4番じゃがの。今は早めがいいのぉ。早う早う」

 「わ、解ったから。順番な」謝ったり感謝したり宥めたり。忙しく口を運んでいた。

 一通り配り終えた頃から、胸の奥が熱くて堪らなくなってきた。

 「ツ、ツヨシ、今のは、何?」

 「何って、エリクサー。完全な回復薬。一口だけで失った盡力も元通り」

 「む、胸が熱いです」

 「テキーラ、ショットで飲んだみたいな熱さね」

 「燃えるのぉ。もう、服は要らんな」

 その後の展開は誰かの想像に任せるとして。それから数時間に渡り、私たちはその場所から移動出来なくなった。

 「・・・お兄ちゃん、サイテー」

 とても不思議な声が頭を掠めたが、私たちの意識は花火のように弾けて飛んでしまった。

 PHASE.E 誰が為の救済

勇者様のターン行きたかったですが、

雑魚戦で引っ張ってもあんまりなぁーと

キリが良いとこまで。


まだまだ続きます、ご都合ラッシュ。

撒いて撒いて撒きまくってきた豆ならぬ種。

全部拾い切れている自信はありません!

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