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第77話 宴

 何の何の。俺は順調に敵を倒し進めていた。奴らが現れるまでは。

 「我らは、魔王ランバルが副将軍」

 はぁ、定番定番って片付けたい所だが。なぜに4人・・・でなくて4匹?

 副って普通、一人じゃないの?青龍、白虎、玄武に朱雀か。めでたいねぇ。勝手に運気が向いて来そう。置物には出来ないのが残念だ。

 そういや魔王城に出て来てた奴らだった。今度はそれぞれ意志を持っている。

 大方俺が落とした爆風と黒い雨で死んだのか、消えたのか。主に、魂のほうが。

 敵は倒せば倒す程に強さを増して行く。絶対数が減ると、個体性能が上がって行くらしい。単体の硬さや攻撃力が、塵つもで上がっているのを体感した。気付いたのはさっきだけど。

 目前に現れた4匹を倒した暁には、その先に居るんだろうねぇ。あいつも。出来れば再戦はしたくはなかった。相性は良くなかった。あの時すでに俺の上を行っていた。倒せたのはウィートの想いの力が僅かに勝ったからで、俺は力を少し削ぎ落としたに過ぎない。

 上積みされた分がどう響いているのか。盡力を失った今の状態で、果たして届くのか。

 7つ目の魔王の配下に居る以上、聖剣や魔剣でなくとも倒せるとは思う。こちらが万全ならの話だが。

 「あー、さっきから言い訳ばっか並べてるな」敗北した時の言い訳ばかりを。

 「どうした?来ないのか?ならば」

 白い虎が地を駆ける。真っ赤な鳳凰が空を舞う。それを追うように青い竜も飛翔する。ズシリと響く巨大亀の歩行。鈍間な亀がゆっくりと・・・。

 「はえぇぇぇ!?」蠅ではなく、亀の全力疾走は速過ぎた。

 先行したはずの虎は尻から跳ね上げられ、上に居た孔雀の腹に突き当たった。2匹が落下しながらも体勢を整えている。褒めるべきか、哀れむべきか。連携何処いったん?

 呑気な光景に意識を奪われて、亀への対応が遅れた。

 虎と同じ運命を辿った。まるで、トラックに撥ねられるみたいに。小さな茜が・・・。

 「嫌な事を、思い出させやがって」

 悪いのは俺だ。突き飛ばしたのは、この俺だ。言い訳なぞしない。もう逃げない。

 硬い地面に到着前に、翻して四つん這いで着地した。全身が痛む。だがそれだけだ。動けるなら問題はない!

 行き過ぎた亀が停止して反転折り返した。俊敏なこって。体勢を持ち直した3匹も迫り来る。今度は挟撃狙い。

 俺は敢えて足の早い亀に向かって突撃した。意地って奴さね。どでかい亀だろうが、3tトラックだろうが止めてやる。

 衝突寸前で亀の前足の片方を掬い上げてからのカチ上げ。ギリギリで真横を通過させた。間近に迫っていた3匹を巻き込んで地面を抉って滑る。仰向けになって。

 死んでいる訳もなく、前後足や短い尻尾をバタつかせ太い首を懸命に地面に伸ばしていた。

 あいつ、自力で起き上がる気だ。

 通過した地面の傍らで虎が瀕死で藻掻いていた。

 「すまねぇな」言いながら、丸見えの腹を蹴り上げて勢い殺さず上に飛び、前転宙で虎の耳側頭に踵を沈めた。霧散して消える白い虎。

 孔雀と竜は飛んでいる。まずは後でいい。亀を先に封じないと、起きられたら面倒が増える。

 火炎と水泡が同時に降って来た。熱くて寒い。無視だ!

 「破ぁぁぁぁ」気合いで乗り切り、亀へと距離を詰めた。助走の力も加えた右拳をでっかい亀の眉間に突き入れた。が、霧散はしない。生命力の塊だったぜ。気絶はさせて放置する。

 「チッ」亀の額も割れたが、右手の中指と薬指の骨が折られた。

 薬は使えない。ランバル戦に必要だから。途中で2本目は使用している。残りは1本。

 応急処置で骨だけ繋ぐ。添え木はしない。石を投げるのには邪魔となる。

 全力投球で当てたかったが、都合良く突然サウスポーには成れないので右手で投げて威力は半減していた。命中精度も。でもよく言うじゃない。数打ちゃ当たるってさ。

 威力は数で積み上げる。まず真っ赤な孔雀から。竜は最後。竜の中では異種だろうが亜種だろうが竜は竜。倒し方を間違えると敵が増えてしまう。

 生み手が強力なら、生まれる虫も厄介な物となる。避けたい所だ。

 青竜の動きを目で追いながら、羽ばたく孔雀に石を投げまくった。投げて投げて避けて移動しまた投げる。単純作業の繰り返し、これは好みが分かれるな。誰の?

 弱くとも数で押し切り炎の衣に傷は付けられた。じわりと高度を下げている。反対側で停滞している青竜が気になるが・・・停止じゃなく、溜めている!直感と共に大きく左へ飛んだ。

 水の刃で抉られた地面の底がよく見えない。自分でも使ったことのある術技だ。うっかり真っ二つは遠慮するぜ。回避の合間に孔雀が回復してしまう。

 「流石と言うべきか否か。戦略や戦術は持たぬのだな」

 「?行き当たりバッタリが大好物でね。戦略ゲーや縛りが強いRPGは好みじゃない」

 「何の話だ、それは」

 「こっちの話だ。借りられる物は借りる。使えそうな物は使う。不利なら逃げる。壁なんてまずぶっ壊す。落ちれば上に登る。失敗したら謝罪する。嫁のお願いなら全面協力。投げられる物なら投げてみる。倒せそうなら、絶対にその場で倒し切る。お持ち帰りはしない派だ。旅の予定は行ってみてから考える。その他色々」

 「意味は解らないが、なぜだか切ないな」

 「戦闘に順番なんてありゃしねぇ。攻撃しないで待っててくれる奴なんて居もしない。何が起きるかも解らない。だったら戦略練るってのは、実に無駄な作業だと思わないか?」

 「道理は通るな」お互いの立ち位置を牽制しながら言葉を交わす。奴らのどっから言葉が出てるの?知りませんね。4匹の時は4方向から。2匹の時は双方から声として聞こえる。

 戦闘中の全カット、全スルーしたのは勘弁してください。どうせ大したこと言ってないって。

 操られているにしては各々動きは不順。摩訶不思議。別に理解したくもないが。

 体感でも随分と時間が経過している気がする。日付が変わるのも間近。それまで逃げるのもありはありだが、態々背中を晒すのもなぁと。

 作業続行!適度な岩場に飛び込んで、掴んでは投げ掴んでは投げ、千切っては投げ、もいでは投げて。再び溜めに入った青竜にも石礫を投げ付けた。

 右手は痛いまま。逆にそれが良かったのか余計な力が入らず、狙いが定まってきた。何事も積み重ねが大事。皮膚よりは柔らかそうな目の辺りを重点投擲。苦しんでる苦しんでる。

 「こ、こんな幼稚な方法で、我らは何の為に」

 試しに亀にも当ててやると、ピクリと動いた。気がする。

 「巡回検診でーす。まだお熱があるようです。寝ていましょう。ずっとでも可!」

 お薬代わりに垂れる頭にシュートキックをお見舞いに差し上げた。霧散はしない。どんでもねぇ生命力だ。4匹中こいつが一番厄介かも。

 スヤスヤと眠りに落ちた亀を放置して、目を潰されて落ちた2匹を手当たり次第に蹴り上げた。蹴りと平手数発で、無事にご逝去されました。残るは一匹。

 クレネの姐さんはどうやって退治してたんだっけなぁ。ホントの所はよくは見ていなかったので解らない。でも、最後のほうは全身血塗れになってたな。亀の血で。よし、来たコレ解体作業。

 生きたまま腑穿り返されるのを想像すると、気は引けるが仕方ない。恨むなら、自分自身の溢れる生命力をば。解体かい・・・、猛烈に背中を襲う悪寒と威圧感!

 「時が来たようだ。お前は放っておけば回復するのだろう?」

 まだ4匹倒してないのに、奴は涼しい顔で歩きながら現れた。口笛でも吹きそうな勢いで。

 目が合った瞬間に消え、気付けば溝打ちを打ち抜かれていた。全く見えなかった。

 「がはっ」呼吸が遮られて意識が刈り取られる。寸前で堪え、腕を取りに行く。

 こちらの狙いなど見え見えで、腕を退かれて悠々と回避された。代わりに顔面を強打されて弾かれた。強い。本当に強い。と同時に死への恐怖が心を捉えて離さない。殺される。

 死にたくない。元の世界じゃ何度も望んだことなのに。

 「私だけでは物足りないだろう。元々の我が軍の精鋭部隊も連れて来てやったぞ」

 霞む目線の先に、絶望が並び立った。

 統制の取れた配列。その数数千。これまでの規律皆無な魔物の群れとは違い、充分に訓練された動きを見せるこちらの方が、余程に脅威に感じた。

 前衛は巨人族が締めているので後方部隊がここからではよく見えない。強烈な気配を感じてしまう。今までそんな気配は一切・・・。

 「驚いているな。暴食はただ単に喰うだけではない。吸収せず、消化もせずにそのまま溜めて置いておけるのだ。お前のBOXとやらと同じようにな」

 丁寧なご説明痛み入る。この僅かに与えられた時間で、最後のポーションの半分を無理矢理胃に流し込んだ。身体は回復したが、抱いた恐怖は消えはしなかった。

 死にたくない。死んだらどうなる?また女神様が助けてくれるのか?違うな、女神に提示された選択肢は、どれも一方通行。解は、これが最後だと言っている。

 当然で当たり前だ。死んだら終わり。命は一度切り。自分でも偉そうに言ってたじゃないか。

 「ふぅぅぅ。正直驚いた。魔王ランバル。おれは舐めていた。魔王の力を。死にたくない。けどこのままだと確実に死ぬ。逃げたい。盡力が回復するまで逃げ回りたい」

 「元、だがな。お前を回復させてやる気が無いから早く来たのに。逃す道理があるとでも?」

 「在る訳ないわな。・・・さぁ、やろうか」

 気合いを入れ直してみたものの、気概だけで埋まるような差ではなかった。次の瞬間にはボロ雑巾にされていた。辛うじて、片目だけが開く程度に。

 「詰まらぬな。術の無いお前がこれ程弱いとは。もう少し抵抗してくれても良いのだぞ?」

 「どう、して。おれを、殺さない?」

 後方の精鋭部隊に動きはない。殺そうとするなら何時でも出来るのに。

 「以前にも私は言ったな。お前の大切な者たちを、お前の目の前で蹂躙し、犯し、肢体を八つ裂きにする様を見せたいのだと」

 ああ、言ってたな。似たような事を。ゲス野郎が。

 「もう少しで4人とも現れる。こちらに向かって来ているのを感じるな」

 「勇者だって居るんだぞ」

 「大陸各地に散った時点で、力の大半を失っている。聖剣の力も弱まっているだろう。脅威に感じる必要はない」

 数分が経過した。俺はもう動けない。薬の瓶も持てぬ程に。

 「先に2人だけ来たか。さぁ、宴の始まりだ。しかと見届けよ」

 PHASE.3 宴の始まり

切りどころが難しい。


でも中途半端に叩き切りました。


今話で不快感を抱いた方に朗報です。

私は、バッドエンドが大嫌いです!


別案でそっち系書きかけましたが

自分で吐きそうになったので急な路線変更を消しました。


書いてると常々思います。

プロの人ってすげぇわ・・・

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