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第7話 女神の提示

 「それで?」目の前の女は深いソファーに座り、脚を組み替えながら尋ねてきた。

 「あぁ?それで?」俺はタイトなミニから覗く女の黒いパンツを、ガン見しながら聞き返した。見せてくるんだから堪能したって罪にはならない。

 「私のこと。邪神って罵って、ざまぁみろって最後に呟いたでしょ?」そう聞かれて顔を見たが、なぜか認識が出来ない。スタイルは申し分ない。生きていたら一戦交えたいレベルだが、顔が解らないので興醒めだ。

 「へぇ、あんたがお風呂出てってか。顔が出せないってのはブスなのか?」

 「だ、誰がお風呂よ!ブスじゃないわよ!これでも神界ではトップ10には入る」

 「あー、どうせ身内ランクだろ。可哀想に。大多数が親族票とか泣けるよな」

 「あんた地獄に落とすわよ!!!」激オコリンでお風呂が沸騰しています。

 「ああ落とせよ。どうせ元には戻せないなんだろ?無理に生かす必要なんてない。さっき魔王としても死んで来たんだ。なら行き先は地獄決定。人間だった頃は真っ当に生きて来た積もりだ。天国行ける程の善行はしてないから、普通転生が妥当だろ。人間になんて贅沢は言わないが、選りにも選って魔王にいきなり転移はねぇだろが!」相手が神様だろうが知ったこっちゃない。なんたら火山に向かう最中に山積した怒りを吐き出した。

 「あの魔剣を手に、他の魔王を倒しながら力を得て魔神を倒す。そんな道もあったのにあんな反則でリタイアするなんて」女神のお風呂は溜息を垂れ流した。

 「このブタ顔でか!!走っている最中で、水溜りに映した己の顔を見て何て思ったと思う?」絵に描いたモンスター。イノシシ顔のブタ野郎は俺でした。

 「何かしら?」ただただ平然と。顔にぼかしが入っていても解る。

 「絶望だよ!阿然だよ!呆然だよ!愕然失望だよ!!!何の罰ゲーだよ。前世で悪逆非道な殺人鬼とかやらかしたんなら、罰でも受けるだろうさ。だがしかしおれは善良な一般市民で普通に就職して普通に彼女と結婚して・・・まぁいいや。どうせ前世には戻れないなんだろ?」

 「方法はあったのよ。あなたが自分で捨てたけど」

 「苦労を重ねて、勇者と手を取り合い、魔神を倒せば?あんた熱でもあるのか?人選間違えてるぜ。それ以前に何の説明もなく放り出して?直後に勇者と戦わせて?人間の文字すら読めずに?辛うじて話は出来ても、他で気付ける要素が何処にあったんだ?」言葉に出せば出す程腹立たしいこの気持ち。

 「魔王を倒す度に能力は高まり、望む力は自然に手に入ったわ」

 「不自然だ・・・と。なぁ女神さんよ。普通、勇者が魔神を倒したほうが良くないか?寧ろそうすべきなんじゃないか?だから聖剣渡したんだろ」

 「それじゃ定番過ぎて飽きたのよ」な、なんだとこんちくしょー。

 「ならおれは、あんたらのお遊戯に踊るピエロだな」(まるで)の言葉は必要ない。

 「そう捉えてもらって構わないわ」完全に開き直ってやがる。そして胸の谷間から折り畳まれたメモを取り出した。それ、必要なのかね。俺はメモ紙を受け取り、女神の隣に座り直すと、彼女の肩に腕を回して右手で胸の感触をドレスの上から味わった。

 「ちょ、な、何するのよ!」「あー黙れ。どれどれ結構大きいな」抵抗で身を捩るお風呂を制し、空いた方の手でメモを開いた。首筋に時折掛かる彼女の吐息が艶めかしい。

 ・君は1年で倒し切れるかな?ブタ顔の魔王ルート。さっきまでのだな

 ・聖なる剣を持つ女の子を支え続けろ!勇者の下僕ルート。ん?

 ・最強の町人となり人知れず魔神を倒し切れ!ぼっち完遂ルート。え?

 ・何が起きるかは君の運次第?神さえ計れぬ、秘密のエトセトラルート。ふぁい?

 ・全てを越えし者の宴。君は永遠の自由人、ニート極。ダメ人間ルート。な?

 当りが皆無。俺はメモを握り潰して床へ転がして、お風呂の2つの蛇口を両手で強めに回し、捏ねて、全開にした。「だ、ダメ!止めて!」

 「止めて!じゃねぇよ。なんだこれは。人を舐めるのも大概にしろ。こんな腐ったルートしか用意出来ない訳がないだろ?お風呂は神様なんだからさ」お風呂を膝の上に座らせて背後から何かを揉みしだく、俺のお手手は止まらないぜ。彼女の口から第6のルートを聞き出すまでは。今は未だ喘ぎ声だけだが。

 「解った。解りましたから、これ以上は・・・」

 「何が解ったんだ?あれだろ、まだ他のルート隠してましたって奴だろ」彼女の耳元で息を吹き掛けながら囁いた。ぶるぶると震えるお風呂のカラン。

 「で、では最強人間でハーレムルート、というのはぁ」

 「うん。魅力的ではあるが、ネタ的には使い古しだな。神様の想像力ってこんなもんなのかい」優しげに、強く切なく。

 「ひぃ、ヒントを、ください」

 「おれだって18禁を絶賛踏み越え中なんだ。そろそろお風呂も入浴剤が欲しいんだろ」

 「そ、そんな!私はそれの担当では、ありませ・・・ん」

 お風呂の沸点を突破したようだ。力を失い肩で息をするお風呂をソファーに寝かせると俺は対岸に座り直して、彼女の回復を待った。意識を失ったせいか彼女の顔のぼかしが外れていた。

 よし!良くやったぞ俺。これで思い残すことは無し!

 回復し薄目を開ける彼女に向かって、俺はある言葉を一言だけ告げた。途端に見開かれた彼女の瞳は驚きに満ち、潤んでいた。

 「本気、なんですね?」「ああ、間違いない」

 「解りました。・・・承認、します」その言葉を聞くと同時に、俺の意識は白く染まって流された。消え切る意識の端で、彼女は静かに微笑んでいた気がした。

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