第60話
完成していませんでした。
大事な部分、抜け落ち修正。
許されぬ物が在るとして。それらには、彼女が決めた物が多かった。
対面で深いソファーに座る彼女は、何処か落ち着かない様子だった。脚を組むでもなく、姿勢を正す姿は記憶の中に居る誰かに似ていた。
「ねぇ。どうしても駄目なの?7つ目には・・・」
「断る」先程から何度も繰り返している問答。いい加減に諦めて貰えないものか。
彼女の顔は不思議と認識出来ない。座り辛そうにする位なら、普通の座椅子に変えればいいものをと思うのだが。短いスカートから覗きそうな下着を隠そうと、何度も裾を掴んでを繰り返すのは何故だろうか。
「魔神は決まっているの。でも肝心な7つ目が居ないのよ。お願い、私を助けると思って」
「断る。私の返事は変わらない。それよりも、それ程に下が気になるなら、先ずは着替えて来たらどうだろう。そのままでは話をしたいのか、私を誘惑したいのかも解らないぞ」
「ええ、そうね・・・。着替えるから、待ってて」残念そうに聞こえたのは気のせいだろう。
「自分でここへ呼んでおいて、私の行き場も無いだろう。早くしなさい」
「もー、これじゃどっちが神様だか解らないじゃない」文句を言って姿を消した。この私が追えないとは、流石と言うべきか。
暫くすると、青色のロングフレアに着替えた彼女が現れた。
「この私を魔王にした所で結果は変わらない。ならば配役は誰にでも出来そうなものだが。どうして人に拘る?特に私や彼だけ出番が多すぎる気がするな。何故かね?」
「・・・特に理由はないわ。人種に拘るのは、一番面白いからよ」理由は有ると言っている。
「充分に貴女を楽しませたと思うがね。何も無しで魔神ではどうなのだ?それはそれで趣は面白いと思うぞ」
「そうねぇ・・・。いやいやダメダメ。神を誘導するとは何事ですか!」それはこちらの台詞だ。
「関係のない私を巻き込んで。いったい貴女は私に何を言わせたいのだね。もしも私を無理矢理でも魔王にしたいなら、そうすれば良い。だが私は自害しよう。叶わぬと解れば、この胸を勇者か彼に差し出してやろう。無抵抗でな」
「絶対にダメ。絶対面白くない。魂ごと消滅出来る方法を知っている貴方を戻しても、彼らに会う前に消えちゃうじゃない!」乱心している。女性の怒りは例え神様であっても理解が難しい。
「では私の記憶を奪って戻せば良いのではないかね?」
「嫌よ。それだけは出来ない。そうだわ。貴方の大切な彼女の魂を人質にするわ。どう?助けたいでしょ?」
得意気に話す彼女に対し、私は盛大に溜息を吐き出した。
「脅しにもならんな。貴女自身が決めた決め事に反する行為をすると?それこそ面白くない。彼女のカルマは純白だ。貧しい子を救い育て、悪しき行いは一切無い、こんな私を許した慈悲深い心まで有る。その様な者の魂を、自ら貶めると?」
「んもーーー!!」牛の真似だろうか。「私は女神よ!その私を上から目線で偉そうにお説教を垂れるとは!お説教?おせ・・・貴方、傲慢だったわね。忘れてたわ」
落ち着いたようで何よりだ。
「では質問を変えよう。七つの大罪とは何かね?どうやら異文化のようだが」
「知を有する者であれば誰もが持ち、何が誰に発現するかは解らない。抑えるか、暴走するかもその者次第。そう言った物よ」
「彼の強欲。私の傲慢。中央の怠惰と色欲。南の暴食。先程敗れ去った嫉妬。最後は魔神だろう。おめでとう、完成だ。7つ目の必要性を感じないが?」
「色欲と暴食は彼が拾わなかったから、今は放置状態よ。そうだわ!色欲の彼を特例で呼び戻して、魔王にしましょう」実に楽しそうだ。
「女性が4人も居るようだが、大丈夫かね?肉欲に塗れる前に、怒り狂った彼に瞬殺される姿しか浮かんで来ないが」
「面白くないわ。なら暴食ね。暴食・・・暴食・・・、南の大陸・・・」呟くように繰り返し。
「・・・居たわ!一人だけ。貴方のように、小生意気にも私にお説教をくれた子の・・・ね」
退場する私には不要な言葉を聞き流し、席を立った。
「それでは私は失礼する。送ってくれ給え」
「ありがと。助かったわ。貴方に相談して良かった」これは、相談だったのか。
「君の役に立てて良かった」消滅同様に、身体が消えて行く。私は完全に消え去る前に、女神の右手を取って甲に口吻をした。
「・・・どうして?どうして解るの?解るはずはないのに」
「君は私の愛が偽りだった、とでも言うのか?それで、私は何時まで待てば良いのかな?」
「・・・魔神が倒される、その時まで、よ」
「そうか。それは楽しみだ。あちらで気長に待つとしよう」
私と言う存在の意識は、そこで終わり、真っ白な光りの渦の中に飲まれて消えた。
ディープホワイト。深すぎる無垢な白は、地下深き深淵の闇の黒にも似ていた。
また短いですがお許しを。
7つ目、決まりました。
次はあの子の回想を。
暫く時間が掛かります。